「大河ドラマ、かくあるべき」鎌倉殿の13人、唸った配役は?
三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時の生涯を中心に描いた大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。12月18日の最終回「報いの時」では、衝撃のラストを見届けた視聴者の感動の声があふれ、そして次回大河ドラマ『どうする家康』への期待を高める仕掛けにも驚きの声が上がった。
■「間違いなく伝説になる」、放送後SNSでは絶賛の声が続出
時代劇のなかでもマイナーな鎌倉時代の、しかも結構な歴史好きしかその名を知らず、知っていたとしても「推し武将」に挙げる人はほぼ皆無。そんな「北条義時」にスポットを当てるということで、どんな物語になるのかまさに「予測不可能」だった本作。しかし最終回を迎えてみれば、あの『M−1グランプリ』と丸かぶりだったにも関わらず、ツイッターのトレンドは『鎌倉殿』関連が多数あがるほど、愛されるドラマとなった。
SNSでも「すっごい大河ドラマ見た、最高すぎる。2回大河を成功させた脚本家にしか描くことを許されないラストシーンじゃない!?」「このドラマを作ってくれて、本当にありがとうございます。ずっと好きです」「『鎌倉殿の13人』をこの先、何十周何百周すると思う」「これは間違いなく伝説になる」など、修羅の道にもめげずについていった「武衛」たちからの、絶賛のコメントが相次いだ。
そして脚本の三谷幸喜に対しても、「三谷幸喜と同じ時代に生きてこれをリアルタイムで視聴できて幸せすぎる」「今回も三谷幸喜先生には私たちが『ちょっと知ったつもり』になっていた歴史上の人物の、切なく愛おしい人間味を教えていただきました」「これを書き上げた三谷幸喜の凄まじい天才っぷりを褒め称えたい」と、絶賛の言葉が寄せられた。
■ 振り幅の広いキャスティング・・・なかでもMVPは?
初めて脚本を手掛けた大河ドラマ『新選組!』、2度目の挑戦となった『真田丸』を経て、三谷幸喜にとってはその経験値のすべてを注ぎ込んだと言ってもいい『鎌倉殿の13人』。
私たちがよく知る史実をくつがえすような最新の歴史研究成果を盛り込みつつも、義時の最初の妻・八重(新垣結衣)を、諸説をミックスしたオリジナルな存在として描き出すなど、8割ぐらいは史実を厳守するけど、残りの2割で大いに遊ぶという塩梅を貫いて、人間ドラマとしても楽しませてくれた。個人的には「大河ドラマはこうあってほしい」と言いたくなる傑作になったと思う。
また、これまでの三谷の実績が可能にした、振り幅の広いキャスティングも見どころだった。とりわけ歌舞伎ファンのみぞ知るという存在だった坂東彌十郎を、北条時政役に抜擢したのは英断だったとしか言いようがない。どんな役を演じても、どこかチャーミングさを感じさせる彌十郎でなければ、義時を暗黒面に引き込む諸悪の根源だとわかっていても、安らかな老後と死に、心から安堵できるような「時政パパ」は生まれなかったかもしれない。
個人的なMVPは、オープニングクレジットで名前が出ただけで、視聴者を震え上がらせた暗殺者・善児を演じた梶原善。これまで悪役を演じるというイメージがなかった俳優だけに「善児と一緒に川遊びをいたしましょう」と千鶴丸に呼びかけたあとに、まさかそんな展開になるとは・・・! とショックを受けたのは私だけではあるまい。
三谷幸喜が率いた伝説の劇団「東京サンシャインボーイズ」時代から、梶原をよく知る三谷だからこそ描けた役柄であり、梶原もそれに期待以上に応えてみせた。作家と俳優の深い信頼関係が生んだ、たぐいまれなるキャラクターだった。
■ 大河ドラマ史に残る哀しきバディ演じた、小栗旬と小池栄子
そしてなにより、義時を演じた小栗旬と、政子を演じた小池栄子の素晴らしさは言うまでもない。父を追放し、源氏嫡流を根絶やしにして権力を手にした悪名高き北条姉弟の真実とは、こんな「自分はどう思われてもいいから、義兄(夫)から受け継いだ鎌倉を息子(甥)に憂いなく渡す」という、命がけの家族愛だったのかもしれない。
それに説得力を持たせるためには、滅私奉公が行き過ぎて非道で孤独な人となる義時像&ただ平穏な暮らしを望んでいた慈愛あふれる政子像が必要だった。ある意味、大河ドラマ史に残る哀しきバディだろう。
小栗は撮了後のインタビューで、「またあまり知られてない人物で、大河の主人公を演じたい」と答えていた。一方の三谷幸喜も、もしまた大河ドラマをやるとしたら、奈良時代の辣腕政治家・藤原仲麻呂を希望しているという。これまた北条義時以上にマイナーな存在で、イジリがいも演じがいもありそうな題材なので、遠くない未来に再びタッグを組んでくれることを願っている。
■ 次作『どうする家康』にエール! 粋なサプライズ演出
そして最終回のアバンは、寝転がって「吾妻鏡」を読んでいる武将のアップから始まったが、本を下ろすとなんとそれは、次回の大河ドラマ『どうする家康』の主人公・徳川家康(松本潤)! 三谷は『真田丸』でも、主人公・真田幸村(堺雅人)が井伊直孝の陣を見て、「向こうにも、ここに至るまでの物語があるんだろうな」と言わせることで、井伊直虎(柴咲コウ)が主人公の次回作『おんな城主直虎』にエールを送ったという過去がある。
しかし今回は台詞だけではなく、主人公本人が登場するというサプライズに、SNSでは「『吾妻鏡』の愛読者である徳川家康が最終回に出てきたら面白いな! っていう視聴者の妄想がまさか実現してる!!」「ここで松潤家康は熱すぎる! 本人呼んできたのすごい!」「来シーズンの主役と交代劇という昔のアニメみたいなやつ!?!?」「どうしたの家康」などの、喜びと当惑が入り混じった声が。
また前作『青天を衝け』、前々作『麒麟がくる』にも徳川家康が登場していたため、「徳川家康、来年もあわせると、4年連続大河ドラマ出演じゃん!」「鎌倉時代から昭和まで行き来して、四年連続出演とか大河レギュラーすぎない????」と盛り上がるとともに、「松潤の大河ドラマ初出演が『鎌倉殿の13人』になっちゃったよ!!!いいの!?www」と気遣う声もあった。
なにはともあれ短い登場ながらも、小心者だけど憎めなさそうな雰囲気をすでにかもし出していた「松潤版家康」。2023年の大河も、引き続きチェックしたくなった人が増えたはずだ。
古沢良太脚本・松本潤主演の、次の大河ドラマ『どうする家康』は、2023年1月8日よりNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。
第1回「桶狭間でどうする」では、今川義元(野村萬斎)の元で人質として平穏に暮らしていた徳川家康(当時松平元康/松本)が、織田信長(岡田准一)との戦に駆り出され、そこでまさかの知らせが届いてしまう・・・という話を、15分拡大バージョンで放映する。
文/吉永美和子
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