原恵一監督「職人的な感覚で、原作の印象を壊さずに映像化」

2022.12.24 13:00

アニメーション映画『かがみの孤城』の原恵一監督

(写真7枚)

◆「『悪』をきちんと描かないといけない」

──『カラフル』も『河童のクゥと夏休み』も本作も、思春期の人間関係の難しさが胸に刺さるように、シビアに、真っ向から描かれています。そこには監督のどんな思いが込められているのでしょうか?

そもそも「映画監督って、それが仕事じゃないの?」と僕は思っています。そういうことが描けないなら監督なんてやるなよって話ですよ。

──人間関係なんて綺麗ごとだけじゃない、と。

残酷なことだって世界には絶対ありますし、僕は誰も傷つかないハッピーな映画なんて毒にも薬にもならないと思っているので。映画には何かしらドラマがあって、ドラマがあるということは、そこに登場人物の関係性が変わっていく描写が必要になってくる。それを描くのが映画だと思っています。

狼のお面を被った謎の少女を演じたのは、女優の芦田愛菜 ©2022「かがみの孤城」製作委員会

──本作の登場人物の関係性が変わっていく描写ではどのようなことを大事にされましたか?

この作品をやると決めて、どこに注意すべきか考えた時に真っ先に浮かんだのが、こころのことを執拗にいじめてくる真田美織という少女をどれだけ「悪」として描けるかでした。

こころをどう描くかということよりも、真田美織をどれだけ悪に見えるように描くか。そこが大切なところだと思いました。主人公の悩みや悲しみを引き立たせるためにも「悪」をきちんと描かないといけないと。

──『はじまりのみち』(2013年)も素晴らしい作品でしたが、今後監督が実写映画を撮られる予定はあるのでしょうか?

映画『かがみの孤城』 ©2022「かがみの孤城」製作委員会

それは僕だけで決められることではありませんが、撮りたいという思いはあります。『はじまりのみち』は初めての実写映画で、いろいろ慣れないことも多くて大変でしたが、アニメを作るときとまったく異なる凝縮感や、スタッフとキャストの一体感はアニメでは得られないものでした。

『はじまりのみち』が終わったときは、朝も早いし寒かったりして大変だったので「もういやだ」と思いましたが、やっぱり機会があればまたやりたいと思うようになりました。

映画『かがみの孤城』
学校での居場所をなくし、自室に閉じこもっていた中学生・こころ。ある日突然、部屋の鏡が光り出し、吸い込まれるようになかに入ったこころは、そこで6人の中学生と出会う。すると、狼のお面をかぶった女の子が現れ、「城に隠された鍵を見つければ、どんな願いでも叶えてやろう」と告げる。期限は約1年間。戸惑いながらも鍵を探すこころたち。ともに過ごすうち、7人にはひとつの共通点があることが分かり・・・。同映画は12月23日公開。

映画『かがみの孤城』

2022年12月23日公開
原作:辻村深月「かがみの孤城」(ポプラ社刊)
監督:原恵一監督
出演(声):當真あみ、北村匠海、芦田愛菜、宮﨑あおい
配給:松竹

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