三谷幸喜の仕事流儀「制約を受けたうえで、面白いものを作る」

2023.1.10 20:15

劇作家の三谷幸喜。代表作『笑の大学』が2023年に再演される

(写真2枚)

脚本を手がけた大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)が、最終回を迎えたばかりの脚本家の三谷幸喜。彼の代表作のひとつで、2004年には役所広司・稲垣吾郎のタッグで映画化もされた2人芝居『笑の大学』が25年ぶりに再演される。その意気込みについて三谷が語った。

■ 自身の経験が生きる「無理難題を出してくるプロデューサーに・・・」

1996年に、西村まさ彦(当時雅彦)と近藤芳正のために書き下ろされた本作。表現の規制が厳しくなった昭和15年の日本を舞台に、喜劇作家・椿が新作の上演許可を得るために、警視庁検閲官・向坂(さきさか)から無茶な修正を次々に命じられるが、そのたびに戯曲はどんどんおもしろくなり、2人の関係も変化していく・・・というストーリーだ。

この内容には、執筆当時TVの仕事をはじめたばかりだった、三谷自身の経験が反映されたという。「次々に無理難題を出してくるプロデューサーに対して、その制約を受けたうえで、さらに面白いものを作るのが、自分のやり方だと思って。それをそのまま、エノケン(榎本健一)の座付作家・菊谷栄をモデルにした、椿にスライドしました」と明かす。

椿と向坂の大真面目ゆえに笑えるやり取りと、誰も予想のしない方向に話が転がっていくスリリングな展開が評判を呼び、初演は『読売演劇大賞』最優秀作品賞を受賞。今も世界各国で翻訳上演されるほど、ワールドワイドで評価されている。

■ 「25年が経った今でも、皆さんの心にフィットするはず」

とはいえ最初は「『2人(西村と近藤)が1番生きる芝居を書こう』という思いしかなかった」と、正直に打ち明ける三谷。それが再演や映画化、そして海外での上演を重ねるうちに「『妥協』とはなんなのか? という、すごく普遍的なテーマがある作品だと、後付けで気がつきました」と語る。

3月23日〜26日に「サンケイホールブリーゼ」にて上演される舞台『笑の大学』

「これは喜劇作家が主人公だけど、どんなジャンルでもクリエイターは、絶対どこかで妥協しなきゃいけない瞬間が来る。そのときにただ妥協すればいいのか? ほかにやり方があるのでは? ということを問う作品」と分析し、「ものを作る人だけではなく、社会で生きていくうえでも、いい妥協の仕方みたいなものはあるんじゃないか? と。実はそんなテーマを持つ作品だったと、台本を読み直して感じています」と、改めて振りかえった。

今回の演出は、初めて三谷自身が担当。「僕はプロの演出家ではないけど、自分が書いたものだから、誰よりもこの作品の本質はわかっているはず。25年が経った今でも、みなさんの心にフィットするはずだと思うので、楽しみに待っていてください」と呼びかけた。

『笑の大学』は、2月の東京公演を経て、大阪では3月23日~26日に「サンケイホールブリーゼ」(大阪市北区)で、兵庫では4月13日〜16日に「兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール」(兵庫県西宮市)にて上演。チケットは1万円で、2月26日に発売開始。

取材・文/吉永美和子

『笑の大学』

大阪公演
会場:サンケイホールブリーゼ(大阪府大阪市北区梅田2-4-9 ブリーゼタワー7F)
期間:2023年3月23日(木) ~ 26日(日)
料金:1万円

兵庫公演
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール(兵庫県西宮市高松町2-22)
期間:2023年4月13日(木) ~ 16日(日)
料金:1万円

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