神戸で似顔絵を描き続ける81歳、「今が幸せ」と500円で営業

2023.1.2 08:45

「北野工房のまち」(神戸市中央区)で、約15年間似顔絵を描き続ける尾蟹志江(おがにしえ)さん

(写真7枚)

廃校になった小学校を活用した観光施設「北野工房のまち」(神戸市中央区)で、約15年間にわたって似顔絵を描き続ける81歳の男性がいる。レトロな階段の踊り場にイーゼルを置き、6Bの鉛筆を走らせる。「今が1番幸せです」と話す尾蟹志江(おがにしえ)さんを訪ねてみた。

■ 「その人の1番いい雰囲気を掴むこと」

──さっそく似顔絵を描いてもらいましたが、特徴がしっかり捉えられていて、手にした時に写真とは違ううれしさがありますね。15分ほどで完成しました。

長い間経験してきたので、輪郭、目や鼻の位置が自然と読めるんですね。読めないと似ませんから。描いている間に、「あ、これでいいな」という瞬間があるんですよ。それがないと絵がかたくなってしまう。

やわらかい表情にするためには、「口元」が肝になってくるという

──たしかに、やわらかい表情に仕上がっています。

1番大切にしていることは、その人の1番いい雰囲気を掴むことです。その人の温かい気持ちが顔に出るように描きます。それができたと思ったときに、「ああ、よかった」と思います。

──いつ頃から絵を描くようになったのですか?

6歳から絵が好きで、終戦直後の混乱期に広告の裏に絵を描いたりしていました。8人兄弟で、姉2人と兄と私とおふくろの4人で暮らしていましたが、生活は苦しかったですね。絵描きになりたいなと思っていましたが、「ごはん」を食べていけないと思って、そちらの道には行きませんでした。

尾蟹志江(おがにしえ)さん(81歳)

それで公務員になりました。仕事をしていたときも、美術クラブに行ったりして油絵を描いていました。定年後5年間別の場所で働いたあとに、似顔絵を描くようになって、やっと自分の好きなことができるようになりました。だから、ここで似顔絵を描いているときが、1番楽しいんですよ。似顔絵を見て喜んでくれると、うれしくなっちゃってやめられない。

──楽しまれているからでしょうか、とてもお元気そうです。

好きなことをやっていますからね。自宅のある神戸市北区からここまで来ないといけませんから、毎日1時間半くらい散歩しています。この先も、健康で、お客さんがそこに座ってくれて、似顔絵が描けたらと思います。通える限り通いたい。

それに、絵を描いていると、疲れがなくなるんです。きっと、描かないと「しんどい」とか「眠れない」とかになりますよね。だから、今は絵を描くことで助かっているようなものですね。

「左手の腕をじっと見ておいてください」と尾蟹さん
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