佐々木蔵之介「逃げたらあかん」、舞台に立ち続ける男の今

2023.1.7 08:00

舞台『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』で主演をつとめる俳優の佐々木蔵之介

(写真7枚)

中井貴一とW主演の映画『嘘八百』シリーズをはじめ、数々の作品で主役をつとめている京都出身の俳優・佐々木蔵之介。関西小劇場出身の彼は、年1~2回のペースで舞台に立ち続けており、現在もフランス喜劇の巨匠・モリエールの代表作に挑んだ主演舞台『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』が、大阪で上演中だ。

その初日の直前に、佐々木のインタビューが実現。一筋縄ではいかない本作の内容と、舞台に対する思い、そして公開されたばかりの『嘘八百』の新作について話を訊いた。

取材・文/吉永美和子 写真/渡邉一生

■ 「関西のお客さんは、笑いに対して度量が広い」

──あけましておめでとうございます。お正月はやっぱり、京都のご実家で過ごされていましたか?

はい。実家(佐々木酒造)で新酒をいただいておりました。本当に寝て食べて呑んで、食べては寝るだけだったんですけど、なんでこんなに体が疲れるんやろう? と(笑)。明日が初日やから(※取材は1月5日)、しっかりせなあかんなあ、台詞を間違えないようにしないとなあと思ってます。

──この作品は、東京でひと足先に拝見させていただいたのですが、美術も音楽も不気味な雰囲気ながらも非常に凝っていて、ほかのコメディ作品にはあまりないムードだったのが、かえって面白かったです。

まずみなさん、チラシを見てから行くと「ええ? 全然違うやん」ってなりますよね(笑)。

舞台『『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』の公演ビジュアル

──チラシの佐々木さんはパンキッシュな出で立ちでしたが、実際の舞台はハゲ頭の老人ですからね。

舞台はすりガラスみたいな部屋だし、変な笛の音がずーっと鳴っているし、たまに犬の遠吠えとか、耳をつんざくようなベルの音が入るし・・・「なんなのこれ? ちょっと怖いなあ」というところから入っていくんですよ。喜劇のなかにも陰影があり、奥行きがあるのが、演出の(シルヴィウ・)プルカレーテさんの真骨頂だと思っています。

──佐々木さんが演じるアルパゴンは、金に汚いうえに、息子の恋人と結婚しようとする、とんでもなく非道な親父ですが、どんな風にキャラを作っていきましたか?

プルカレーテさんに「昔のイタリアの喜劇には、こういう若い娘と結婚したがるケチなジジイという、典型的な役があるから、そんな感じで」と言われたんです。とはいえやっぱり主人公だし、笑ってもらえた方がいいので、迷惑でイヤな感じが、1周回ってチャーミングという風に作れたらいいなあ、と思っていました。

同作では、テレビではなかなか見られないパンチの効いた佐々木を目撃することができる

──それってかなり、微妙な案配ですよね。

だからそこは、お客さまと一緒に作った感じです。初日が開いてから、お客さまの反応を「あ、ここは楽しんでもらえてるな」「思ったほど(笑いが)来ないから、前振りをもっとこうしよう」と感じながら、本番中も作っていきました。でもやっぱりプルカレーテさんの、ちょっとノッキングするようなテイストは、絶対残しておきたいと思ってましたね。

──確かに観客が気持ちよく笑うというよりも「あれ、これって笑うところ?・・・だったね」みたいに、少し足踏みしてから笑う空気になっていたのが、逆に愉快でした。

そうそう。「わ・・・らって・・・いいのか?」「笑っちゃったけど、う~ん」みたいな、いろんな笑いがあって。ずっとなめらかにテンポよくというのではなく、わざとテンポを悪くしたりするんですよ。プルカレーテさんから授けていただいたものは、ちゃんと育てたつもりです。(東京公演の劇場の)芸術監督の野田秀樹さんは、ゲネプロを観てめちゃくちゃ笑ったあとに、楽屋に来て「おもしれえよ、これ! ただお客さん、最初笑わないかもしれないな」と言ってました(笑)。

──この反応を予言していたと。さすがですね。

でも関西のお客さんは、そういう笑いに対して度量が広いというか、絶対引き受けてくれると思うんです。(大阪公演の前に)東京や宮城でだいぶ練り上げて来たから、楽しんでくれるし、笑ってくれるんじゃないかなと思っています。

『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』

大阪公演
会場:森ノ宮ピロティホール(大阪府大阪市中央区森ノ宮中央1-17-5)
期間:1/6(金)~/1/9(月・祝)
料金:1万500円

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