超高速だが不慣れな人にやさしい、斬新な第1話【どうする家康】

2023.1.9 21:15

桶狭間にて、今川義元(野村萬斎)から兵糧入れの任務を命じられる元康(松本潤)(C)NHK

(写真3枚)

古沢良太脚本・松本潤主演で、江戸幕府初代将軍・徳川家康の、厳しい選択だらけの人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。1月8日の第1回「どうする桶狭間」では、松平元康(のちの徳川家康)が平穏な人質暮らしから、急転直下で過酷な争いのなかに放り込まれるさまが描かれた(以下、ネタバレあり)。

■ タイトル通り、怒涛の「どうする?」が家康に降り注ぐ

のちの世で「神の君」と呼ばれることになる松平元康(松本潤)は、若い頃は今川義元(野村萬斎)が統べる駿河国で、今川家の人質として暮らしていた。ひそかに人形で遊ぶことが大好きな元康だが、あるときその趣味を今川家家臣・関口氏純(渡部篤郎)の娘・瀬名(有村架純)に見られてしまい、ともに遊びながら心を通わせるようになる。

そこに義元の息子・氏真(溝端淳平)が、瀬名を側室にしたいと義元に願い出る。しかし義元は、元康と氏真の手合わせの場を設け、勝った方に瀬名を与えると宣言。それまで氏真に遠慮して、ことごとく負け続けてきた元康は一発奮起し、氏真に勝利。義元は、元康がそれまでわざと負けていたことをとがめつつ、瀬名との結婚を許可するのだった。

初陣も飾り、瀬名との子どもも生まれ幸せに暮らしていた元康だが、織田信長(岡田准一)の軍に包囲された今川家の城・大高城を助けるために、義元みずからが総大将となって出陣することに。元康と三河の兵たちには、城に兵糧を運び入れる役割を与えられ、織田軍の包囲網をかいくぐって、兵糧を届けることに成功した。

進軍してくる義元を城で待っていた元康たちの元に、義元が桶狭間で織田軍に討ち取られたうえに、信長の軍勢がこちらに向かっているとの情報が入る。ほかの今川家の兵士同様、この城を捨てて逃げ出すのか? それとも籠城して、信長を迎え撃つのか? この大きな「どうする」に対して、元康はどのような決断をくだすのか──。

■「可愛すぎやろ!」見たことのない家康像に早くも期待

織田信長や豊臣秀吉の後釜に抜け目なく収まり、おいしいところを持っていったタヌキ親父・・・というイメージが強いためか、日本史の花である「三英傑」の1人でありながら、徳川家康が大河ドラマの単独主演として描かれるのは、なんと1983年の『徳川家康』以来のこと。

40年前に「おだやかで清廉潔白」という新たな家康像を作り上げるのに成功したこの作品に対し、今回は「頼りなくてナイーブ」という、これまた従来の家康像を上書きするようなキャラクターを、早くも印象付ける第1回となった。

まずお人形遊びが大好きで、女の子とキャッキャウフフと遊び回るという10代の描写に、SNSではさっそく「ちょっと待てちょっと待て冒頭から可愛すぎやろぉぉぉぉ!!」「思ってた家康と違う(笑)」「おままごとをする家康だと・・・許せるっっ!」「この時代に人形を自作してアクトまでやるのか・・・気合の入ったオタクだな家康」と、萌えや共感をものすごく感じたという声が上がった。

次郎三郎(松本潤)と話をしていた瀬名(有村架純)を、引き離そうとする巴(真矢ミキ)(C)NHK

また家康の正室「築山殿」こと瀬名も、家康の弱さを全肯定したうえで、彼を愛情深く支えるという、従来の「悪女」イメージを微塵も感じさせないキャラクターに。

これにも「瀬名ちゃん、くっそ可愛い」「弱さを肯定してくれるやさしいギャルタイプ瀬名ちゃんもええのう」という声に混じって、「瀬名さまが可愛すぎてここからどう築山殿のアレにつながるか分からず混乱」「『私は歴史詳しくないんだけど』『イエセナ幸せになって欲しい』という書き込みがたくさんあって心が痛む(黒い笑み)」と、のちの展開に早くも心を痛める人も。

■「どうしようってなるの、わかる」家康に同情の声も

そして第1回目の半分もいかないうちに、主人公が結婚して子どもも生まれるという超高速展開にも「第1回で主人公がスピード婚する大河って初では?」「大河ドラママスターの方、主人公の結婚の早さグランプリだとこれ何位くらいにランクインするやつ?」「1話は主人公の子ども時代で終わる大河も少なくないのに、主人公が結婚して子供産む大河が爆誕するとは」「爆速で結婚して子ども産まれて桶狭間になった」と騒然となっていた。

だがしかし、コミカルかつハートウォーミングな展開は、やっぱり戦国大河だから長くは続かない。ただ単に城にお米を届けるだけかと思ったら、武力行使不可避という展開にワタワタしたり、負けるはずがないと思っていた今川軍が桶狭間で総崩れ&大将死亡と、怒涛のようにタイトル通りの選択の試練が。しかもそれにヒーローらしく果敢に立ち向かうのではなく「もう嫌じゃあ~!」と泣き叫ぶとは、ちょっとほかでは見られない展開だ。

織田信長(岡田准一)との戦に臨む今川義元(野村萬斎)だったが・・・(C)NHK

これにはツイッターでも「急展開すぎるけど、たしかにこんなに急展開で『どうします? どうします?』になったらどうする家康だよな」「ここ、松平家を残せるかどうかの瀬戸際でもあるんよ。そんな重大な決断を、16かそこらの元康がしなければいけない」「戦い怖いねえ嫌だねえ。おうち帰って瀬名とお人形遊びしたいねえって気持ちで見てしまう」と、見事に「殿なんだからどうにかしろ!」ではなく、「どうしようってなるの、わかる」という、同情の声が集まっていた。

放映終了後には、全体を通した感想として「コミカル&サクサク展開なドタバタ劇感はライトに見れて面白かった! なんか身構えずに見られそう」「テンポ良くまた愛らしいシーンもありとても観やすく家族で楽しめました」「大河不慣れな人にやさしい大河」と、特に松本潤目当てで初めて大河を観たと思われる人たちからは、好意的な声が。

■ 細かな伏線からの驚きを得意とする古沢脚本だけに・・・

とはいえ、今後の家康の人生は幸せなことばかりではない。「ポップでかわいいな、みんな仲良しでほのぼのしてるな・・・からの地獄というのはなかなか厳しいんじゃないかしらね」「石川数正と三方ヶ原組の自己紹介およびキャラ付け・インパクト、そして築山殿とのラブラブからの信康誕生の幸せっぷりがたいへん手厚かったので、地獄への道はいとも明るく鮮やかに舗装されている感」と、今後の天国と地獄に期待するコメントも目立った。

個人的には、物語に細かな伏線を貼りまくって、最後に「ああ、そういうことか!」とビックリさせるのが得意な古沢の脚本だけに、第1回で家康の幼少期をあえて「匂わせ」にとどめたことや、ナレーション(寺島しのぶ)の語りと実際の家康の行動に食い違いがあることなどが、物語に驚きや深みを与える効果になるのではないかと期待している。何はともあれ一年間、この頼りないけど憎めない家康と並走したいと、心から思えるスタートだった。

『どうする家康』は、NHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第2回「兎と狼」では、結局織田軍の追撃から逃れることに決めた元康たちの、決死の逃避行が描かれる。

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本