朝ドラ制作統括が絶賛、辛口お兄ちゃん役・横山裕の表現力

2023.1.14 08:16

めぐみ(永作博美)にあることを言う悠人(横山裕)(C)NHK

(写真4枚)

母・めぐみ(永作博美)が社長業を引き継ぎ、ヒロイン・舞(福原遥)も一緒に会社を立て直すことを決意するなど、第15週「決断の時」で急展開を迎えた連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)。2人の今後が気になるけれど、「辛口お兄ちゃん」こと悠人(横山裕)からも目が離せない。

■「朝ドラの『困ったお兄ちゃん』」とは一線を画す、悠人という人物

人情には厚いけれど、それゆえたびたび経営難に陥ってしまった父・浩太(高橋克典)に、子どもの頃から反感を抱いていた悠人。学生時代から投資で財を成し、ファンドマネージャーに。リーマンショック後の「IWAKURA」倒産危機の際は一貫して「工場の売却が最善策」と主張し、「工場も従業員も絶対に守りたい」と願う浩太と衝突。そして悠人は、喧嘩別れのまま父を亡くしてしまった。

父亡きあと、会社存続のために舞は悠人に投資を願い出るが、悠人はきっぱりと断る。これまでによく見た「朝ドラの『困ったお兄ちゃん』」とは一線を画す、「超リアリスト」の悠人を、絶妙に「憎みきれない」ラインをキープしながら表現する横山裕の演技力が白眉だ。そんな彼について、同ドラマ制作統括の熊野律時氏はこう語る。

「悠人は岩倉家のなかで唯一、少し離れたところから俯瞰している人物。舞や岩倉家、IWAKURAが置かれている立場や状況というものを、常に客観的に冷徹に見ています。悠人が違う角度から光を当ててくれるから、今のこの状況がくっきりと照らされて、いろんなことが見えてくる。物語にとってすごく大事な存在です。そんな悠人という人間を、横山さんがとにかく魅力的に演じてくださって、素晴らしいなと思いながら見ています」。

■ 悠人は「IWAKURA再建」のキーパーソンとなるか

物語の序盤、家業の経営難で自らの中学受験が危ぶまれた頃からずっと、父・浩太に対して屈折した感情を抱いている悠人。結局思いを分かち合えないまま、2人は二度と会えなくなってしまった。悠人の胸中にある「思い」は、この後どう描かれていくのだろうか。

熊野氏は「喧嘩別れのまま浩太さんが亡くなってしまったことに対する悠人の後悔は、当然ありますし、残った家族がこれからどうしたらいいのか、という悠人なりの考えもある。それが今後どう活かされていくのか、楽しみにしていてください」と呼びかける。

舞(福原遥)と話をする悠人(横山裕)(C)NHK

■ 演じる横山自身も苦笑「ほんまに言い方がよくない」

ところで、横山の佇まいが醸しだす、「辛口お兄ちゃんなのに、ギリギリのところで憎めない」キャラクターは、どのように出来上がっていったのだろうか。
 
「横山さんご自身も『(悠人の)言ってることは筋が通ってるし、わかるんですけど、ほんまに言い方がよくないですよね』なんて、苦笑まじりにおっしゃっていますけれど、脚本家の桑原亮子さんが台本のなかに書かれた『悠人像』を完璧に表現していらっしゃいます」と熊野氏。

そして「最初の段階で、悠人は屈折しているけれど、家族に対しての彼なりの思いや愛情が根底にあるんだということを横山さんとお話しして、そのラインを非常に魅力的に演じてくださっています」と絶賛した。

カフェ『ノーサイド』にて、会社の状況を兄の悠人(横山裕)に話す舞(福原遥)(C)NHK

■ 悠人が送りつけた「宇宙人みたいなビリケンさん」は・・・?

憎まれ役かと思いきや、「口は悪いんだけど言ってることは間違ってないんだよな」「甘々の舞と対照的に、悠人が言ってることはド正論」など、SNSでの評判も上々だ。

熊野氏は、「視聴者のみなさんも『ここで悠人はどうするんだ?』と気にしてくださっているようで、そういうふうに見ていただけてよかったなと思っています」とコメント。

最後に、悠人がいつか気まぐれに岩倉家に送りつけてきた「宇宙人みたいなビリケンさん」が、今後何かの役に立つのかどうか聞いてみると・・・。

「あれ、どうなるんでしょうね(笑)。これは言ったらおもしろくないので、言わないでおきます。これからも『舞いあがれ!』の物語を見守ってください!」

『舞いあがれ!』放送は、NHK総合で朝8時から、またBSプレミアム・BS4Kでは朝7時半から。「母と私の挑戦」と題する第16週(1月16日〜20日放送)では、舞が母のめぐみとともに「IWAKURA」の再生に向けて奮闘していく。

取材・文/佐野華英

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