40~60代に響く「男性用ルーズソックス」、靴下屋の新たな切り口

2023.1.28 08:00

「大人男子が履けるルーズソックス」(1100円)、2022年秋よりWEB限定で販売

(写真8枚)

2000年代のファッションを表す「Y2K」の再ブームとともに、Z世代に改めて注目されている「ルーズソックス」。1m超えの靴下をたるませて履くなど足元のボリューム感をアップさせ、女子高校生らを中心に大ブームとなったアイテムだが・・・先日SNSで「大人男子が履けるルーズソックス」なる商品を発見。よく見てみると、入荷待ちのカラーもあるではないか。

女子高生ではなく、さらに若者でもなく、「大人男子」と「ルーズソックス」という、一見結びつかないワードの商品を生み出したのは、「靴下屋」ブランドでおなじみのメーカー「タビオ」(本社:大阪市浪速区)。40~60代男性から「履きやすく丈夫」「色合わせしやすい」と好評を博す同商品を発案した「WEB営業部」課長・藤ノ井智彦さんに話を訊いた。

■ファッション、環境面のトレンドは「楽(ルーズ)」!?

「リーフグリーン」「サンセットレッド」など11色展開で、親近感がわくよう日常にある色を名付けたそう

──そもそも、どのような経緯で今回の商品が誕生したのでしょうか?

店舗ではレディスや若年層向きが大多数を占めるのですが、コロナ禍以降はWEB限定品にも力を入れ、「メンズの大人が履ける楽な靴下があれば」という案が出たんです。僕がものぐさなので(笑)、夏場はハーフパンツ、冬場は八分丈のコーデュロイパンツばかり履いていて、こういうカジュアルでオーセンティックな格好でもオールシーズン履ける靴下が欲しいなと。

──ご自身の日常スタイルも反映されたのですね。

ハーフパンツはここ10年ぐらいで高齢男性にも普通になったかと思うのですが、以前は小学生の短パン白ハイソックスや『名探偵コナン』みたいなイメージで(笑)。靴下丈のバランスが難しくて、結局スニーカーソックスを履いちゃうんです。でも50手前の僕にとって、この歳でくるぶしが見えている状態に抵抗を感じていたので、もっと楽に丈感を調整できれるものがあればと・・・。

──実際に販売されて、反響はいかがですか。

初速でオンラインの売り上げランキングに入ることは珍しいのですが、2位になったこともあり、かなり手応えはあります。2022年の10月頃から販売して、ウール商品が主軸となって売れるなか、綿製品でこの数字なので。生地厚感もあるので、春〜夏にかけてはサンダルと合わせるなど、コーディネートの幅も広がりますしね。

──「ルーズソックス」と「大人男子」という組み合わせは意外性を感じましたが、Y2Kファッションやジェンダーレスなど時代のトレンドも意識したのでしょうか?

僕のなかではファッションだけでなく、環境面のトレンドとして「楽(ルーズ)」が今のキーワードかなと。ITバブルの頃は肩がこりそうな細いスーツが流行っていましたが、リモートが増えたご時世で「あまり考えずに肩の力を抜きたいな」という逆の流れを感じています。

そして、「ルーズソックス」の概念として、90年代の女子高校生のようなボリュームのあるものにくらべたら「どうなの?」と思われるかもしれませんが、男性でもギリ履ける「ルーズ」という言葉を自分なりに咀嚼させたスタイルの提案でもありますね。今回のものは長さが約27センチで、「楽(ルーズ)に履いてもそんなにめちゃくちゃだらしなく見えないようにしたかった」というのが答えかもしれません。

■実は「フィット感がなさそうで、ある」も意識

「タビオ」で10年以上商品企画に携わり、同商品を発案した藤ノ井智彦さん

──そもそも、デザイン面などでメンズとレディースの違いはあるのでしょうか?

男性の深層心理である程度の年齢になったとき、子どもっぽく見られたくない感覚があると思っていて。これまでのメンズアイテムは「品格」「風格」を持たせたキチッとした系統が多かったですね。デザインもレディスの柔らかさや丸みを帯びたものに対して、男性の骨格に合わせてエッジを効かせています。靴下には体重がかかるので、機能面でもメンズは双糸で強度を上げるなどの工夫もしています。

──そんななかでの「ルーズ」への挑戦、製作面でこだわった点は?

実は靴下は「楽に」を意識するほど、靴の中でズレてしまうんです。そこでフット部分にゴムサポートを入れて、そのズレを防いだり、リブ目の凸凹感を何度も調節して自然に伸び縮みするような編地にしたり、「フィット感がなさそうで、ある」を意識しました。

──「ルーズ」を実現させるために、実は精密さが必要なのですね。見た目はメンズ定番ものよりボリューミーな質感の印象です。

アクリルが40%のバルキー綿混の糸と、きっちりした印象のビジネス用や定番の太リブ靴下よりもざっくりと編むことのできる機械を使って、見た目の粗野さを出しました。国内の生産工場に何度も足を運んでサンプルをやり直してもらいながら、日本製だからこそできる柔らかな質感や、程よいルーズ感も表現できたのではないかと思います。頭の中のイメージでは、すぐ靴下にできる自信があったのですが・・・実際に商品にするのは難しかったですね。

──多彩なカラーがそろい、欠品になる反響も出ていますね。

年間定番ものとして11色を展開しています。5~6年前からトレンドの白色がまず売り切れ、追加発注をかけているうちに予想に反して別の色も欠品になりました。靴下は肌着・下着の分類になるので黒・白・グレーあたりが売れ筋ですが、WEB限定なので自由に遊び心を表現したいなと思い、日常にある色を名付けたました。その点でも、気を張らずに親近感を持ってもらえたのかなぁと勝手に思っております(笑)。

ちなみに、これまでルーム使いとしてのメンズ「ウールバルキーパイル ルーズソックス」や、若年層のストリートファッションのトレンドを意識した靴下は販売していたものの、日常遣いを意識した大人男子でも履ける「ルーズ」商品は初とのこと。店舗側からは早くも同素材での短い丈の商品要望も出ているそうで、今後も新たな視点から生まれるメンズ靴下に期待できそうだ。

取材・文/塩屋薫

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