ポエムに謎のおじさん…大阪メトロ、改札機POPの謎に迫る
オフィスが大阪・肥後橋にあるため、通勤で地下鉄のOsaka Metroを利用している。毎日「眠い」「仕事やる気起きん」「ランチ何食べよ」など思いつつ、足早に改札を通過しているのだが、ICカードをピッとするとき、気になるものが。今通った改札機に、「生きてるって感じてますか?」って書いてたような?
格言のようなポエムのような言葉が綴られたPOP(プレート)が掲出されていたのは、四つ橋線の「西梅田駅」。ほかにも、「あなたにはあなただけの良さがある」「自分だけの夢があってもいい 夢は人それぞれ」「1日をあきらめないで」「水分飲んでますか!」など、改札機を通過したあともふと考えてしまうような言葉が並んでいる。
そういえば、「西梅田駅」の次に通る「肥後橋駅」も改札機POPが工夫されていた。コロナ禍はアマビエがいたし、ハロウィンやクリスマスなど季節ごとにイラストが変化。そして「謎のおじさん」が頻繁にPOP出演している・・・。あれは一体誰なんだ、そして誰がどういう思いで作っているのか。気になりすぎたので「Osaka Metro」(大阪市西区)の担当者を直撃した。
■ 最初は「いってらっしゃいませ」だけだったが…
──今回、「肥後橋駅」の駅務助役・森 猛さん、副管区駅長・中林宏司さん、同社広報・角野功さんに集まっていただきました。毎日改札を通る度に気になっていまして・・・。こういったPOPはいつから制作されているのでしょうか。
中林さん「西梅田駅のPOPは2019年7月頃、肥後橋駅は同年12月頃から設置しはじめました。CS会議として、各駅の代表者が不定期で集まるのですが、お客さまとのコミュニケーションになれば、とPOPを制作することになりました」
──CS活動の一環なのですね。「生きてるって感じますか?」は思わず二度見しました・・・。これらは誰の言葉なんですか?
森さん「現在、西梅田駅に設置しているPOPは20種ありまして、メッセージはすべて駅員たちが独自に考えたものです。私は当初西梅田駅に所属していてPOPを担当したんですが、最初の頃は普通に『いってらっしゃいませ』『おかえりなさい』という言葉を掲出していました。でもだんだんクスッとしていただきたいなと思い、笑いの要素を少し入れたらSNSで話題になりまして、そこから増やしていきました」
──いつも私たちの様子を見守っている、駅員さんからのメッセージだったんですね。笑いどころか、考えさせられるような、ズッシリ深いメッセージのほうが多い気がしますけど・・・。「肥後橋駅」のイラストPOPはどなたが?
森さん「私です。イラストや工作が得意なので、POPのほか、ポスターのデザインや、桜など季節や大きな行事に合わせて工作しています。コロナ禍は何かできないかと『アマビエ』を描いたり・・・新作はうさぎ年のPOPですね。基本的に『インクスケープ』(ベクター画像編集ソフト)で、マウスを使って1つ1つ描いています」
──マウスで手描き! 結構時間がかかりそうですね。
森さん「2週間に1回くらいの頻度で新作が誕生しているんですが、熱中しすぎて家に帰って描くこともあります。でも自分の得意なことが活かせるというのはうれしいですね」
■ 度々登場する「謎のおじさん」の正体が判明!
──ちなみに度々登場するこの、謎のおじさんは一体誰なんですか? 湯呑みに入ってお茶に浸かっていたり、顔がビールの泡になっていたり・・・。
森さん「それは肥後橋駅の駅員です。POP制作にも協力的で、写真も快く撮らせてくれます」
──駅員さんだったのか! もはやフリー素材ですね。西梅田駅では1日約9万4000人、肥後橋駅では約5万6000人の人が乗降しているそうですが、ポエムやイラストなど、乗客の方からの反応はどうですか?
中林さん「公式サイトに『お客さまの声』という意見フォームがあり、そこに『楽しみにしてる』『元気が出ます』などコメントをいただくこともあり、うれしく思っております」
森さん「スマートフォンで撮影する人や、ツイッターで反応してくださる人もいらっしゃいます。たまに『ふざけすぎや!』ってお叱りを受けることもありますけど・・・(苦笑)」
──今掲出されている「大トロ 中トロ メトロで行こう」とかですかね(笑)。今回の2駅以外の駅でも、七夕やクリスマスなど季節に合わせた飾り付けにほっこりすることが多いです。
角野さん「ありがとうございます。Osaka Metroでは全線、駅に親しみを感じていただくため、各駅がさまざまな取り組みをおこなっています。『利用していて気持ちが良いな』『あの駅、なんだか楽しいな』、そして今回のように『あの言葉は何だろう?』など、少しでも思い出してもらえることからいろいろ広がっていくのではないかと思うんです」
──そうですね。
角野さん「コンクリートの殺風景な地下を電車が走っている、というだけじゃなく、どうやったらお客さまに親しみを持ってもらえるか。駅員は日々考えて工夫しておりますので、少しでも気にしていただけるとうれしいです」
◇
御堂筋線・四つ橋線の「大国町駅」ではダンボールアート(力作揃い!)が有名だが、制作者・小幡正人駅務助役は「2020年の秋頃、『コロナ禍で増えたおうち時間の過ごし方の提案をお客さまにしたい』という思いから『ダンボール工作』を始めた」そうで、「改札を通り抜けるお客さまに『おや?』と何か引っかかってもらえるような展示を目指しており、コロナ対策に疲れたお客さまの気分転換になればと思っています」と話す。
Osaka Metro各駅の駅員が制作している掲示物。これから通学・通勤途中など地下鉄に乗る機会があれば、ふと注目してみてほしい。
取材・文・写真/Lmaga.jp編集部
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