増えるギャラリーストーカー、大阪の画廊が「距離感」に警告

2023.2.1 06:45

「ギャラリーストーカー」に注意喚起した「芝田町画廊」(大阪市北区)

(写真2枚)

大阪・梅田にある「芝田町画廊」(大阪市北区)がツイッターで注意喚起した「ギャラリーストーカー」に注目が集まっている。年々、アート業界で問題視される実態について、同画廊の吉田隆博さんに話を訊いた。

2010年に開業し、若手作家の作品を中心に展示する同画廊。今回の投稿では、「ストーカーによる嫌な事件が続きます。ギャラリーストーカーについても以前から言われておりますが、なかなか無くならないのが現状です」と問題を提起。これを受け、「きっぱりとした表明は作家さんたちの安心になります」と感謝の声が寄せられている。

以前から公式サイトでは「お客様や出展者を守り、気持ちよくご覧いただくために、『暴言、暴力、セクハラ、ストーカー行為とみなされる言動』などの迷惑行為があった場合、強制退去命令や警察への通報などをおこなうことがあります」と明示していたが、今回は具体的な例を追加したという。

https://twitter.com/shibatacho/status/1616339513600798722

■「ちゃん付け」など、距離感が近い人も

──「ギャラリーストーカー」という言葉、ドキッとする響きです。画廊ならではの特徴があるのでしょうか?

つきまといなど警察沙汰になるような「ストーカー」以外に、法律には触れない行為でも作家の負担になることが多いと感じています。今回の投稿にも明示したように、「家族や友人でもないのに、作家を呼び捨て、ちゃん付けで呼ぶ」「長時間作家を独占して話し込む」「作家の個人情報を聞く」「作家とギャラリー以外で会うことを要求する」などですね。

──今回、改めて投稿した意図は?

実際に当画廊で警察沙汰などの被害があった訳ではないのですが、最近は福岡のストーカー事件などもあり、抑止のためにより具体的な基準を決めた方が注意しやすいという思いからです。

──多数の「いいね」がつきましたが、反響はいかがですか?

「ギャラリーストーカー」という言葉は、数年ほど前からSNSなどで使われるようになったと思うのですが、アート業界では昔からあった問題で。今回この言葉のインパクトもあったのか、演劇や音楽など他業界から「うちも同じです」というような賛同の声を多くいただいた印象があります。

──これまで見聞きした具体的なエピソードはありますか?

コロナ禍前は2~3時間ほど居続けて、一方的に自分の価値観を語る人はいましたね。いわゆる「説教おじさん」のような。ここは若手の女性作家の展示会も多いので、聞き流すことに慣れておらず、作品や価値観を全否定されて心が傷つき、在廊できなくなった方もいます。

若手作家の作品を中心に展示する「芝田町画廊」(大阪市北区)。2/2~6は『宮崎萠子個展』を開催

──作家の在廊情報など、昔よりSNSなどで近づきやすい影響も?

そうですね。まずSNSのフォローでつながり、初対面でもいきなり距離感が近い状態で話しかけられる。画廊側から「友だちなのかな?」と見えても、実は知らない人という場合も・・・。そして、ある作家がほかのお客さんに挨拶するために席を外したことで逆恨みされ、SNSで誹謗中傷されてしまう被害なども聞いたことがあります。

──作家はファンや作品を購入してくれる方を拒否しにくい立場でもあるかと。これまで何か対策はされてきましたか?

今回はお客さん側への注意喚起ですが、今までは特に若手の作家への「お客対応マニュアル」を作っていました。許可なく撮影されそうになったり、説教をされた場合の受け答えを書いた紙を用意したり、言いにくい場合は「画廊」の私を通すように伝えています。また、要注意人物は他の画廊と情報共有するように努めています。

──改めて、今後の画廊での交流についてメッセージをお願いします。

一般的なお店の買い物ではいきなり店員と友だちにはならないと思います。画廊でもあくまでも「お客」「作家」としての立場を守っていただければ。一方的に迷惑行為をする人ほどそれに気がつかないので、これを機に「周りから自分はどう見られているのか」今一度、振りかえってみる機会になりましたら幸いです。

作家の在廊は「ファンを増やす場」と吉田さんが語るように、作品に対する思いを語ったり、お客と直に触れ合える貴重な時間。誰にでも開かれた場だからこそ、純粋にアートに浸れる空間であってほしい。

取材・文・写真/塩屋薫

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