イッセー尾形、妄想が生んだ新作「普通とはなんだろう?」

2023.2.25 08:00

舞台『イッセー尾形の妄ソー劇場 日替わりプラス1』を4月に控える、俳優のイッセー尾形(22日・大阪市内)

(写真2枚)

数多くのドラマや映画で名演伝説を残し、現在は大河ドラマ『どうする家康』(NHK)に出演中のベテラン俳優・イッセー尾形。ライフワークとなっている一人芝居の舞台『イッセー尾形の妄ソー劇場 日替わりプラス1』の大阪公演の会見が、2月22日におこなわれた。

■ 「去年の舞台はお客さんの反応が薄くて」

一時期は文豪の名作にインスピレーションを受けた作品を上演していたが、コロナ禍を機に、ごく普通の人々の生活を題材にした作品に、再び取り組み始めたイッセー。毎回「近鉄アート館」(大阪市阿倍野区)でおこなわれる大阪公演は、7~8本の新作短編を発表するのが恒例となっているが、今回は2022年に上演した作品が半分以上を占めるという、異例の構成だ。

その理由について「去年の舞台はお客さんの反応が薄くて、これはきっと『経験を積んでこい』ということなんだと思いました」と、苦笑いしたイッセー。「『その(演じている)人物が、ここにいることを説得してくれ』というお客さんの思いを、おろそかにしていたなあと気づきました。1年間かけて各地で上演して『可能性のある』ものを『可能』にしました(笑)」と、リベンジを誓った。

■ 「今年は、驚くようなネタが並んでいます」

タイトル通り、新作も日替わりで1本ずつ、合計5本発表する予定。ネタを考えるときには「目の届く範囲の人たちに、架空のアンケートを取る」という、ユニークな答えが。

舞台『イッセー尾形の妄ソー劇場 日替わりプラス1』についての構想を語るイッセー尾形(22日・大阪市内)

「普通とはなんだろう? みんなこの時代どうしているんだ? という気持ちが、作品の根本にある。でもそれを誰かに聞いても『いや、普通だよ』って言われちゃうから、架空のアンケートを取るんです」とその理由を語り、さらに「老若男女がいろいろ返してくれたと、一生懸命想像・・・妄想して、それを形にする。今年は『え? みんなそんなことしてるんだ』と、驚くようなネタが並んでいます」と、新作のヒントを明かした。

そうやって妄想した「現代に生きる普通の人々」の言動の数々に、思わずニヤッとさせられるイッセーの作品群。そうして現実を模写していくうちに「実は人間は、もっと時代の先に行ってるんじゃないか」との気分になってきたという、ちょっと深い話も。

「今は戦争とか物価高とか、いろんな問題の情報を浴びせられますが、それに反応するだけで人生が終わるわけがない。人間のもっともっと深い所には、まだ気付いてないいろんな意識があるはず。その得体の知れないものを探して、具体化して舞台に乗せるのが僕の仕事の一つでもあると思うし、それは明るい、希望のようなものにしたいんです」と信念を語る。

さらに「僕の芝居を笑うことで、その意識を認識してもらいたいです。笑いは認識であるというのが、ここ最近の僕の哲学(笑)。ほかの人なら隠したくなるようなことも、舞台の上でいっぱいしていますから、ぜひ見届けてほしいです」と呼びかけた。

『イッセー尾形の妄ソー劇場 日替わりプラス1』は、4月12日~16日に上演。チケットは5500円で、2月23日から発売開始。

取材・文・写真/吉永美和子

『イッセー尾形の妄ソー劇場 日替わりプラス1』

会場:近鉄アート館(大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス近鉄本店 ウイング館 8F)
期間:4月12日(水)〜16日(日)
料金:5500円

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