踏めない…美しすぎるマンホール、堺はなぜ「ミュシャ」推し?

2023.3.29 09:15

ミュシャの代表作『黄道十二宮』がデザインされたマンホール(提供=堺 アルフォンス・ミュシャ館)

(写真4枚)

南海高野線の堺東駅前にあり、「堺市の玄関口」と称される「堺東商店街」。居酒屋やレストランが点在し、グルメスポットとしても人気な堺東商店街だが、最近なぜか「マンホール」が注目を浴びている。

2020年より突如商店街に出現したのは、チェコ出身で、フランスの舞台女優・サラ・ベルナールのポスターなどで知られる画家・アルフォンス・ミュシャの作品があしらわれたマンホールだ。美麗なミュシャのマンホールに、ネット上でも「羨ましい・・・!」「これは踏めない」など羨望の声が相次いでいる。

約500点のコレクションを所蔵する「堺 アルフォンス・ミュシャ館(堺市立文化館)」(堺区田出井町)があるなど、実はミュシャとの結び付きが強い堺。マンホールができたきっかけや、堺とミュシャの関係について、同館の高原さんに聞いてみた。

■ カメラ会社の社長が繋げた、堺とミュシャ

──堺市では、千利休や与謝野晶子など、堺とゆかりがある人物や文化のデザインマンホールを設置しているとか。ミュシャのマンホールは、どのようにデザインが決まったのでしょうか。

堺市では堺とゆかりがある人物や文化のデザインマンホールを設置しており、ミュシャのマンホールもそのひとつ。ミュシャのデザインマンホールは、マンホールを所管している「堺市上下水道局」とミュシャ作品を所管する文化観光局が協議し、ミュシャのポスター作品のなかから『黄道十二宮』や『椿姫』などの12種類を選びました。

堺東商店街に常設されているミュシャマンホール

──なるほど。そもそも、堺とミュシャにはどのような関わりがあるのでしょうか?

弊館で展示しているミュシャ作品は、カメラ用品を扱っていた「ドイ」の創業者・土居君雄氏によるコレクションが基盤となっています。

土居氏は新婚時代、堺市の浜寺町に住んでおり、良き思い出が残る土地だったそうです。その縁で遺族からミュシャのコレクションを寄贈いただき、2000年に開館しました。

──土居氏が堺とミュシャをつなげたんですね。それにしても500点もの作品を個人で収集していたということに驚きです。
 
仕事柄、海外出張が多かった土居氏は、妻の満里恵氏に気に入ったリトグラフのポスターや絵画などを贈っていました。そのなかにミュシャのポスターがあり、満里恵氏が「この絵は知っている」と言ったことで、土居氏がミュシャに興味を持ったとのことです。

作品そのものの美しさはもちろんですが、作品のひとつに女性がカメラを抱えた写真館の広告があったこと、ミュシャがモデルにポーズを取らせ、撮影したうえでデッサンをしていたことなど、写真とのかかわりの深さもコレクションする理由になったそうです。

年3回おこなわれる展覧会は、コンセプトにも注目(提供=堺 アルフォンス・ミュシャ館)

■ 堺でしか見られない作品も…約500点を展示

──ミュシャの故郷・チェコにも「ミュシャ美術館」があるそうですが、堺のミュシャ館ならではの特徴などはありますか?

やはりミュシャ作品を扱う施設として、約500点は世界トップレベルのコレクション規模といえるでしょう。また、デザイナーとして活躍したパリ時代から、晩年のチェコ時代の油彩画まで幅広く網羅しています。

ポスターだけでなく、素描作品や大型油彩画、世界でも5体しかない彫刻や世界にひとつしかない宝飾品など・・・。堺でしか見られない作品も多数所蔵しています。

──世界的に見ても希少なコレクションなんですね! 年に3回、テーマを決めた展覧会もおこなっているそうですが、ミュシャと深い結び付きがある施設だからこそのこだわりなどはありますか。

弊館は「ミュシャ作品を常設展示している施設」ではありますが、実は常に展示している作品は大型油彩画の『ウミロフ・ミラー』だけ。ポスターなどのリトグラフ作品は繊細な管理が必要なため、一度展示したらしばらく収蔵庫で休ませるというルーティンのもと展示活動をおこなっています。

1度の展示で出品できる作品が限られてしまうため、企画展を組むのは難しいですが、次世代に向けた作品保存を意識しながら、ミュシャの新たな魅力を紹介し続けています。

4月8日から「堺 アルフォンス・ミュシャ館(堺市立文化館)」で開催される『おいしいミュシャ』

──貴重な作品を守るため、保管にも注意を払っているんですね。4月8日には『おいしいミュシャ』というテーマで展覧会が開催されますが、こちらはどういったコンセプトなんでしょう?

「食」と「五感」をテーマとした展覧会で、ミュシャ作品のうち、お酒、ビスケット、タバコなどさまざまな嗜好品に関する作品を一挙公開します。

さらに、作品をイメージしたスペシャルフレグランスの香りを試したり、視覚障がい者の方が手指で鑑賞するための「触図」でミュシャの絵に触ったり、ミュシャが手がけた演劇ポスターの劇中曲を聴いたり、ミュシャの世界を五感で味わい尽くせる展覧会となっています。

ミュシャマンホールは堺東商店街に常設。ほかにも、ミュシャ作品のレプリカが展示されている「堺市保健所」やタペストリーが展示されている「大浜体育館」など、堺には「ミュシャスポット」がたくさん。展覧会に行きがてら、めぐってみるのも楽しいかもしれない。

取材・文/つちだ四郎

「堺 アルフォンス・ミュシャ館(堺市立文化館)」

住所:堺市堺区田出井町1-2-200 ベルマージュ堺弐番館2~4F
時間:堺 アルフォンス・ミュシャ館 9:30~17:15(入場は16:30まで)、ギャラリー 9:30~19:00
※月曜(休日の場合は開館)、休日の翌日(翌日が土・日曜日、休日の場合は開館)、年末年始
電話: 072-222-5533

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