豊川悦司が今、時代劇に挑むワケ「僕は危機感を抱いています」

2023.3.2 20:30

映画『仕掛人・藤枝梅安』2部作で主人公を演じる俳優・豊川悦司

(写真6枚)

現在公開中の第1作に続いて、第2作が4月7日から公開される映画『仕掛人・藤枝梅安』。これまで多くの名優たちが演じてきた、鍼医者でありながらも生かしておくと人のためにならない悪を密かに葬る時代劇のダークヒーロー・藤枝梅安だが、豊川は新たな梅安像をどう作り上げたのか? また、時代劇を今の時代に作る意味とはなにか? 来阪した豊川に話を訊いた。

取材・文/春岡勇二

◆「挑戦する意味があるなと」(豊川)

──まずは、梅安役のオファーが来たときのお気持ちから伺わせてください。

最初は正直、受けていいのか悩みました。なにしろ、これまで緒形拳さん、萬屋錦之介さん、小林桂樹さん、渡辺謙さんら錚々たる顔ぶれの先輩方が演じてこられたタイトルロールですからね。

ご覧になった方には、それぞれの俳優さんの梅安像が残っているでしょうし。また池波先生の原作のファンもそれこそ大勢いらっしゃって、読者ひとりひとりがつくりあげた梅安像もあり、自分には自分が演じる梅安のイメージがなかったですから。

──それでも演じることを決められた理由はなんですか?

まずは、いま時代劇を撮ろうとする製作陣の熱意です。その点はずいぶん話をさせていただきました。そのとき出てきたのが、『ジョーカー』(2019年)のようなダークヒーローを時代劇で作れないか、ということでした。

作品自体もこれまでの時代劇の概念にとらわれない、世界に打って出るコンテンツとなるものを、というお話をいただいて、それは挑戦する意味があるなと思いました。あとは、監督が以前ご一緒して大好きだった河毛監督でしたので飛び込んでみようと思いました。

「まさか自分に梅安役がくるなんて・・・」と語った豊川悦司

──オファーが来る直前に、緒形拳さんの展示会に行かれていたそうですね。

「横浜市歴史博物館」で開かれていた企画展『俳優緒形拳とその時代-戦後大衆文化史の軌跡-』にトークゲストとして呼んでいただき、そこで「初めて緒形さんを観たのは、テレビ『必殺仕掛人』の藤枝梅安でした」という話もしました。すると、それから1〜2週間後にこのオファーをいただいて。

まさか自分に梅安役がくるなんてと驚きましたが、ご縁のようなものも感じて、緒形さんの元マネージャーさんに連絡したら「豊川さんが演じてくれたら緒形もきっと喜びます」と背中を押していただきました。

──演じることを決めて、役作りとしてはどのようなアプローチをされたのですか?

河毛監督から言われていたのは、「ともかく原作に一番近い梅安を作りたい」ということだったので、まず原作を全部読みかえして、それから先輩方の梅安もすべて観直すところから始めました。先輩方の梅安は、テレビでの仕事が多かったこともあって、陰はあるのだけれど、どこか快活なんです。

僕はそういうところのまったくない人物でもいいんじゃないかと思いました。相棒の彦次郎と話しているとき以外は、誰に対しても、いつでもどこでもまったく本心をみせない。四六時中「梅安」という人物を演じているような人間でいいのではないかと。それぐらいこの人は他人に怯えていて、それが梅安を作りあげているのではないかと考えました。さらに言うと、僕は梅安には「鯨」のイメージが重なります。

豊川悦司が演じるダークヒーロー・藤枝梅安 (C)「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

──鯨、ですか。

ええ。今のように科学が発達していないころは、鯨は全体像の見えない、海にいる巨大な生物だったわけで、だから人々は畏怖の念を持って接していた。僕は周りの人たちが梅安に抱くイメージはそういった感じだったのではと思いました。得体の知れない部分があって、それでいて人間的な大きな柔らかさを感じさせる。一方、梅安の方も人々を怖れている。

──怖さと大きな柔らかさを持った人物で、さらに自分も他人を怖れていると・・・。

あと、梅安に狙われたら絶対に助からないという、そんな絶対性も必要だと思いました。日常では怖い部分を微塵も見せない穏やかな物腰だけれど、人を殺めるときには非情に徹して絶対にしくじらない。

メイキング・オブ・映画「仕掛人・藤枝梅安」

映画『仕掛人・藤枝梅安2』

4月7日公開
監督:河毛俊作
脚本:大森寿美男
音楽:川井憲次
出演:豊川悦司 片岡愛之助 菅野美穂 小野了 高畑淳子 小林薫
第二作ゲスト:一ノ瀬颯 椎名桔平 佐藤浩市
配給:イオンエンターテイメント

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