東野幸治が輝く「マルコポロリ」、お約束を拒否した番組作り

2023.3.19 07:15

毎週日曜の昼1時59分から放送されているバラエティ番組『マルコポロリ!』(カンテレ)

(写真4枚)

いま、関西ローカルのとある番組が全国の「お笑い通」や業界内でジワジワと話題になっている。「白い悪魔」の異名をとるMC・東野幸治の話芸によってゲストが1人残らず「丸裸」にされてしまう関西ローカルの番組『お笑いワイドショー マルコポロリ!』(カンテレ/毎週日曜昼1時59分〜)は、現時点で最も尖ったお笑い番組と言っても過言ではないだろう。

『M−1グランプリ』王者になるはるか以前からウエストランド井口をイジり続けたり、ぼる塾をゲストに招きながら田辺さんの鉄板ギャグ「まぁね〜」に一切振らなかったり・・・「お約束通りにならない」のが「お約束」であり、東京のバラエティでは間違いなくカットされる箇所こそが、この番組の真髄なのだ。

そんなクレイジーなTVショーはいかにして作られるのか。担当ディレクターの芳仲真雪子さんに訊いた。

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『お笑いワイドショー マルコポロリ!』
2006年4月から放送を開始。もともとはロケ企画や芸能ニュースなど、複数のコーナーによる番組構成だったが、3年ほど前より「ゲストとレギュラーがワンテーマで語るトークバラエティ」にシフト。最新回がTVerで視聴できるようになってからは全国のお笑いファンからも支持されはじめ、業界内からの注目度も高い。現在のレギュラー出演者は東野幸治、ほんこん、月亭方正、あいはら雅一(メッセンジャー)、シャンプーハット、月亭八光、ニッポンの社長。
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■ 笑いという基本に立ちかえったら、東野さんの「毒」が増した

──2006年放送開始で、もともとはロケ企画や芸能ニュースなど数々のコーナーを擁する総合バラエティから、「ゲストを招いてワンテーマで語ってもらう」というトーク・バラエティに変わっていったのは、どのような経緯だったのでしょうか。

私は3年前に別番組から異動してきたんですが、ちょうど同じ時期に、会社から「コアターゲットを意識した番組作りを」という命が下りまして。当時のチーフ演出・横田幸介(現在は4月スタートの新番組『アンタッチャブるTV』チーフ演出)の強い希望で、よりお笑いに特化しようという流れに変わっていったように思います。

──「お笑い」と「スタジオトーク」に特化したとたん、東野幸治さんの「狂人オーガナイザー」としての才気が炸裂したと。

各コーナーやVTRをやっていた時期も、いい意味で東野さんの「毒」みたいなものは、もちろん既にあったと思うんですが、スタジオでのトークが長くなることによって、さらにその部分が強く出るようになってきたのかなと。現在のスタイルになってからは、ほんこんさんをはじめとするレギュラーのみなさんの存在も大きいと感じます。

『マルコポロリ』(カンテレ)について話す担当ディレクターの芳仲真雪子さん

──ほんこんさんとあいはらさんが、東野さんが投げる球の名捕手であり名打者であるというわけですね。

毎回6名座っていただいているレギュラー陣が盛り上がった回のほうが、番組全体として爆発するんです。だから、レギュラー陣とゲストの方々をどう絡めたら「見たことのない化学反応」が起こるかを、まず第一に考えます。

■ 「突かれたら嫌なところ」をむき出しに、東京の芸人が嫌がる番組

──「東京の若手は『宇宙で一番難しい番組』と言う」(見取り図リリー談)、「芸人みんな踏んづけられて帰る」(とにかく明るい安村談)などと言われ、東京の芸人さんにとって積極的に出たくはない番組と思われているようですが。

ゲストの芸人さんとの打合せのときに「いや、怖いですよ」とよく言われます(笑)。どこまで本気かはわからないですけど。たぶん「想定外のイジられ方をされる」ということなのかもしれないですね。

──自分の考えていたプランとは違う方向にいってしまうと。

東野さんを中心に、レギュラー陣のみなさんは、「突かれたら嫌なところ」を見つける天才なんだと思います。「そこ気づくんやな」って。普通の人はスルーするであろうポイントを見逃すことなく拾い上げて、どんどん広げていく。

そうすると、東京から来られたゲストの芸人さんを収録後にエレベーターまでお見送りするとき、大半の方がぐったりされていて(笑)。やはり、大阪という「アウェイ」での収録に臨むのは、一段階緊張感が違うのかもしれませんね。で、行ってみたらこういう人たちがいて。

──丸裸にされて。

むき出しにされて疲れ果てて帰っていくという(笑)。でも、出てくださる方みなさん、結果的にはすごくおもしろくやっていただいてると思うんですよ。必ず損はしないようにと、私たちも心がけています。決して丸投げするわけではないのですが、誰が来ても東野さんがおもしろくしてくれるという絶対的な信頼がありますし。

──視聴者としても、ゲストの芸人さんの「むき出し」の部分を1番期待しています。

「作られたキャラクター」を剥いだ「裏」を引き出すのがお得意な方々が集まっているので、番組としてもそこに力を入れたいんですよね。打合せでゲストの方々に「何か準備していくことはありますか?」と聞かれるんですが、「そのまま何も考えずに来てください」とお伝えします。

「台本は覚えなくていいですし、東野さんに聞かれたことに答えるぐらいの、トークを楽しむぐらいの気持ちでいていただければ」と。「これをしゃべらなきゃ」みたいな感じで考えながら来ちゃうと、人間味が出ないと思うので。

──「人間ドキュメンタリー」の側面もあるというか、それまでよく知らなかったけれど『マルコポロリ!』を見て「この人おもしろいな」と、ゲストの魅力に気づくケースも多そうです。

そういう役割を担えたらうれしいですね。今までとは違う部分が見えて、ゲストの方を好きな方が増えてくれたなら、とても光栄なことです。

カンテレ『マルコポロリ!』

放送:毎週日曜13:59〜

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