【罠の戦争】「やっぱりお坊ちゃまだね」鷹野に込められた皮肉

2023.3.7 19:30

鶴巻憲一幹事長(岸部一徳)との対決姿勢をあらわにした、衆議院議員の鷲津亨(草彅剛)と鷹野聡史(小澤征悦)

(写真3枚)

権力に踏みつけられた男・鷲津亨の壮絶な復讐劇が政界を舞台に描かれる、草彅剛主演のドラマ『罠の戦争』(月曜夜10時~/カンテレ)。その第8話が3月6日に放送された。

前話までに、衆議院議員・鷲津(草彅)の息子・泰生(白鳥晴都)を歩道橋から突き落とした犯人が、厚生労働大臣・鴨井ゆう子(片平なぎさ)の息子・文哉(味方良介)であることが判明。その事件の隠蔽を指示したのが、民政党幹事長の鶴巻憲一(岸部一徳)だったことを突き止めた鷲津は、この機会に幹事長を潰そうと秘書の蛍原梨恵(小野花梨)や蛯沢眞人(杉野遥亮)とともに動き始める。

今回、注目したい人物が鷲津の古くから友人で衆議院議員の鷹野聡史(小澤征悦)だ。以前から、鷲津を励ます一方で、鶴巻幹事長から鷲津を見張るよう指示を受けていた鷹野は、SNSでも「絶対に怪しい!」「味方のフリをしたスパイでは?」と騒がれていたが、ついに秘書の蛍原と蛯沢も彼に対して疑惑を抱くようになる。

鶴巻憲一幹事長(岸部一徳)の不正の証拠をつかみ、ガッツポーズを見せた鷹野聡史(小澤征悦)だったが・・・。

そんな2人に鷲津は、鷹野は鶴巻幹事長の不正を暴くための時間を稼いでくれていると説明。鷹野自身もこれは鷲津のためだけではなく、派閥政治をなくして、世代交代を進めるためだと明かす。「ボンボンはボンボンなりにいろいろ考えてんだよ」と二世議員である自身を自虐しつつも、「このまま幹事長にくっついてたって、俺は幹事長を超えられない。知ってるだろ、二世政治家のコンプレックス」と男気をみせる様に、ずっと疑っててゴメン!と謝りたくなったのは、筆者だけではないだろう。

だからこそ、鶴巻幹事長との対決シーン。自信満々で不正の証拠の帳簿を突き付けた鷹野が「やっぱりお坊ちゃまだね。こんなにきれいに引っかかってくれるとは。この帳簿、全部ウソだよ。これだから苦労知らずのボンボンは・・・」と、あっさり幹事長に反撃されるシーンは切なすぎる! 結局、この勝負は鷲津がさらなる反撃材料を用意していたこと、そして、鴨井厚生労働大臣が事件の真相を説明する記者会見を開いたことで鷲津たちが優勢となるのだが・・・。

政治家にとっては致命傷の「健康不安」を鶴巻憲一幹事長(岸部一徳)に突きつける衆議院議員の鷲津亨(草彅剛)

本ドラマの鷹野という人物には、故・安倍総理や元・環境大臣の小泉進次郎、そして現・総理の岸田文雄と長男・岸田翔太郎首相秘書官など、日本の世襲政治家に対する痛烈なアイロニーが込められていることは明白であり、さらに鷹野を演じる小澤征悦自身が、世界的な指揮者・小澤征爾を父親に持つ『二世俳優』である現実を知れば(ちなみに母親は元モデルで女優の入江美樹、姉はエッセイストの小澤征良、従兄弟はミュージシャンのオザケンこと小沢健二!)、よりいっそう感慨深いものがある。

来週以降、いよいよ政界を揺るがす戦いが描かれていきそうだが、そんななかで二世議員の鷹野がどうたち振る舞っていくのか、そっと見守っていきたい。

文/井口啓子

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本