【罠の戦争】鷲津亨(草彅剛)、復讐される側に「闇落ち」

2023.3.14 14:30

民政党幹事長・鶴巻憲一を演じる岸部一徳(ドラマ『罠の戦争』より)

(写真4枚)

政界を舞台に権力に踏みつけられた議員秘書・鷲津亨の壮絶な復讐劇が描かれる、草彅剛主演のドラマ『罠の戦争』(月曜夜10時~/カンテレ)。その第9話が3月13日に放送された。

息子・泰生(白鳥晴都)を歩道橋から突き落とした犯人が、厚生労働大臣・鴨井ゆう子(片平なぎさ)の息子・文哉(味方良介)で、事件の隠蔽を指示したのが民政党幹事長の鶴巻憲一(岸部一徳)だったことを突き止めた鷲津は、この機会に幹事長を潰すことを決意。秘書の蛍原梨恵(小野花梨)や蛯沢眞人(杉野遥亮)、古くから友人で衆議院議員の鷹野聡史(小澤征悦)の助けを借りて鶴巻幹事長を追い詰めていく。

この鶴巻幹事長の「食えない男」っぷりがすごい。彼を演じている岸部一徳は、60年代のGSブームの全盛期にジュリー(沢田研二)やショーケン(萩原健一)らとのバンドのベーシストとして一世を風靡(愛称はサリー、当時は岸部修三という名前だった)。俳優に転身後は、多くの映画やドラマで名脇役として存在感を発揮。なかでも京男らしい底意地の悪さを生かした(!?)慇懃無礼で冷徹な人物を演じさせたらピカイチの人物である。

今回の鶴巻幹事長役は、そんな彼の持ち味が最大限に発揮された当たり役で、隠蔽の決定的な証拠を週刊誌にスプークされても謝罪会見ではすべて秘書のせいにして、しれっと逃げ切ろうとする姿にシビレまくり。そんな鶴巻幹事長と竜崎総理大臣(高橋克典)の密談シーンは、まさに狐と狸の化かし合い。実際こんな感じで自分の利益を最優先に政治が取り引きされてるんだろうな~と暗澹たる気持ちになってくる。

鶴巻幹事長(岸部一徳)が倒れたニュースに、見たことない表情を浮かべる鷲津亨(草彅剛)(ドラマ『罠の戦争』より)

また、今回もっともショッキングだったのが、「弱者の味方」だった鷲津の「闇落ち」だ。鶴巻幹事長がマスコミの前で倒れたシーンをテレビで眺めながら冷酷な笑みを浮かべ、内閣総理大臣補佐官としていじめや児童虐待撲滅を推進するため、重要ポストについた人物のセクハラ疑惑を隠蔽しようとする鷲津の姿は、草彅剛の淡々とした演技もあいまって底知れない恐怖を感じさせる。

息子も順調に回復へと向かい、復讐も終了しようかという矢先、今度は自身が復讐される側となった自鷲。次回、いよいよ物語は最終章へ。「正義の怪物」と化した男の行く末をしかと見届けよう。

文/井口啓子

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