中村勘九郎&七之助、歌舞伎の「アンタッチャブルな演目」に挑む

2023.3.18 19:15

『平成中村座 姫路城公演』をおこなう、(左から)中村七之助と中村勘九郎(右)(16日・大阪市内)

(写真4枚)

5月3日~27日に姫路城・三の丸広場で開催される、江戸時代の芝居小屋を模した、仮設劇場での歌舞伎公演「平成中村座」。仕掛け人の中村勘九郎&七之助の兄弟が大阪市内で会見を開き、今回上演する『天守物語』の裏話や、大阪への想いを語る場面があった。

■ 「今は盆と正月がいっぺんに来たみたいな気分(笑)」(七之助)

『天守物語』は、幻想文学の巨匠・泉鏡花の代表作。白鷺城(姫路城)天守に住まう美しき魔性・富姫と、純粋な若者・図書之助の種族を超えた愛を描いた物語だ。歌舞伎では、坂東玉三郎が演じた富姫があまりにも完ぺきと言われ、彼以外の役者が上演する機会はほぼほぼないという状況だった。

『平成中村座 姫路城公演』をおこなう、(左から)中村七之助と中村勘九郎(右)(16日・大阪市内)

姫路城での公演が決まってすぐ、同じく姫路城が舞台の『播州皿屋敷』(第一部/12時開演)と『天守物語』の上演を即決したという勘九郎。一方、玉三郎と同じく女形として活躍する七之助は「富姫役は玉三郎のおじ様以外いないと、僕たちのなかではアンタッチャブルな演目」と躊躇したそう。

しかし勘九郎が「ここでやらなかったら一生できないし、玉三郎さんが教えなかったら後世に残らないから」と熱心に口説いたことで、富姫役を決意。しかも玉三郎に相談したところ、演出を申し出ただけでなく、自前で製作した衣裳まで提供するほど、全面的な協力を得ることができたそう。

七之助は「最初は(上演は)ダメと言われるかと思ったら、やると決まったら僕たちよりも動いてくださって。2月から稽古がはじまってるんですが、歌舞伎でこんなに早くから稽古をすることはない」と、その献身的なサポートぶりを明かし「今は盆と正月がいっぺんに来たみたいな気分(笑)。熱い想いを受け取っているので、気を引き締めてやりたいと思います」と決意を語った。

『平成中村座 姫路城公演』に向けての会見に出席した中村七之助(16日・大阪市内)

■ 「父は『大阪に育ててもらった』と言っていた」(勘九郎)

また会見中には、平成中村座を立ち上げた亡父・18世中村勘三郎と、平成中村座の成長に、大阪が大きく関わったという話も。

勘九郎は「父は(かつて大阪にあった芝居小屋)『中座』でいい役をいっぱい務めて、いつも『俺は大阪に育ててもらった』と言ってました。曽祖父の(中村)歌六は大阪の俳優ですから、私たちも関西の血が入っていますし、東京だけではなく、どんどん(各地に)歌舞伎を広めていきたいです」と真摯に語る。

『平成中村座 姫路城公演』に向けての会見に出席した中村勘九郎(16日・大阪市内)

それを受けて七之助も、「劇場の後ろを開けることが、演出法としてすごく有効に使われたのは、(2002年の)大阪・扇町公園の『夏祭(浪花鑑)』が初めてだったんじゃないかな。なにか新しいことをするのは、大阪の地がすごく発信源になっていて、めぐり合わせのある土地なんだと思います」と強い縁を語った。

中村兄弟のほかには、中村橋之助、中村虎之介、中村鶴松、片岡亀蔵、中村扇雀などが出演。前売は全席完売したが、当日立見券が発売される。また公演に先駆けて、役者たちが姫路の町をパレードする「お練り」も開催予定なので、公式サイトでチェックを。

取材・文・写真/吉永美和子

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