朝ドラで反響大の金網アイテム、東大阪の実際のものづくりは?
現在放送中の連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK朝ドラ)の舞台である東大阪市は昔から、ネジから宇宙ロケットまで「ものづくり」の町として知られている。
ドラマの第22週「冒険のはじまり」(2月27日〜3月3日放送)では、ヒロイン・舞(福原遥)が廃業寸前の工場「コサカイ鋼業」の小堺(三谷昌登)と組み、ひし形金網でできたハンモックを作る様子が描かれた。工業のイメージが強い金網だけに、視聴者に大きなインパクトを与えた「金網ハンモック」だが、実はモデルとなった会社があるという。
東大阪に工場を持つ「共和鋼業」は、コサカイ鋼業と同じく「ひし形金網」を製造・加工するメーカーだ。2022年には金網をインテリアに昇華した『amiMono(アミモノ)ラック』が「大阪製ブランド」に認定されている。同社の代表取締役・森永耕治さんに、実際の「ものづくり」について訊いた。
■「金網」の魅力を伝えるべく、試作に挑戦する日々
──『舞いあがれ!』には「金網考証」としても参加されてますが、共和鋼業さんがモデルとなっている部分はありましたか?
そうですね。作中で舞ちゃんがアイデアスケッチを出していましたが、そこに載っていた製品案も実際にうちで考えていたものばかりです。また大学に金網ハンモックを売り込もうと、舞ちゃんが「金網っておもしろいんです」とアピールするシーンがありましたが、僕が普段から口にしていることなので、社員が「社長が出てるみたい!」と驚いてました(笑)。
金網ハンモックも元々うちで作っていて、今も社内に設置されています。金網を使った製品を作ることになり、椅子だと普通すぎるしもっと大きなものを・・・ということでハンモックになりました。
──ドラマでかなり斬新な製品というイメージがあったので、実在していると知って驚きました。
金属製だから「硬そう」と言われるんですが、実は硬くないんですよ。金網1本1本に遊び(ゆとり)があるので、たわんで身体を受け止めてくれます。見た目より安定しているので、ずっと寝ていられる作りになっています。ラックもですが、金網って透けてるから写真うつりが悪いんです(笑)。写真や映像で見るより、現物を見てもらったほうが分かりやすいと思います。
──現在販売している『amiMono(アミモノ)ラック』は、ほかの工場と共同で生み出されたんですよね。
東大阪の町工場「松下工作所」と、もともと文具メーカーに勤めていたデザイナーとの共同プロジェクトです。作中の金網ハンモック作りのように、デザイナーが全体のコーディネートをし、金網部分はうちが、フレーム部分を松下工作所が作る形で協力しています。
──どういったコンセプトで生まれたのでしょうか。
「金網の特徴をいかして何ができるか」を考えました。金網は、本来なら土木で使うことが多く、とても強い素材です。でも1本1本が独立していてしなやか、硬いけど柔らかいという不思議な特徴を持つため、鉄素材としては珍しい動きをするんです。
フレームと金網の留め具部分もボルトを使わずに繋げているところが特徴的で、長年働いている職人さんが持つ技術が集約されています。価格は少し高いかもしれませんが、安く売るつもりはありません。そのかわり長く使えますし、品質には自信があります。
──なるほど。作中では販売するまでの難しさも描かれていましたが、やはり製品化は難易度が高いのでしょうか?
試作品はたくさん作っていますが、やっぱり製品化の段階になるとグッとハードルが高くなりますね。うちに来るお客さんに使っている「金網コースター」は「売ってほしい」という声もいただきますが、製品のクオリティには達していないと感じているので、販売はしていません。
でも、自分たちで考え出したものを訴求する「きっかけ」作りは大切です。金網には大きな強みがあり、アイデア次第でなんでもできます。その特徴が伝わるようなものを形にし発信することで「使ってみたい」という人が現れ、製品化にも繋がります。そんな活動を2年くらい続けていたら、徐々に取材などされるようになりました。
──そういえば森永さんが持っているアイテムにも金網が編み込まれているようですが・・・。
オープンファクトリーのワークショップで作った金網のアクセサリーや、金網製ペンケースです。社長みずから製品を身に着けることで、顔を覚えられなくても「金網の人だ」と覚えてもらえますし、持ち歩いている金網グッズを使ってわかりやすく金網の説明もできますしね。
──作中で「IWAKURA」をはじめとする町工場がオープンファクトリーを開いていましたが、共和鋼業さんでもおこなっていたんですね。
オープンファクトリーは騒音問題の解決策として2018年にはじまりましたが、現在では「こーばへ行こう!」として、ものづくりを伝えるイベントに発展しています。年々参加企業や参加者が増えています。
やはり工場は人手不足のところが多いので、子どもたちに「ものづくり」への興味を持ってもらったり、なかには工場やデザイナーが知り合う場所となったり、新しい仕事に繋がるケースもあり、今後も続けていきたいと思っています。
◇
町工場の技術が詰まった『amiMono(アミモノ)ラック』(9900円)は、ネットショップ「kanaami lab THE SHOP」で購入可能。また「クロスホテル大阪」(3月23日から)など、大阪製ブランドが集まるイベントにも登場しており、実際に手に取って体感できる。『舞いあがれ!』をきっかけにものづくりに興味を持った方は、一度のぞいてみては。
取材・文・写真/つちだ四郎
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