湯道の家元・小山薫堂、「気付き」における人生の楽しみ方

2023.3.20 06:00

映画『湯道』の企画・脚本を担当した放送作家・小山薫堂さん

(写真6枚)

生田斗真、濱田岳、橋本環奈をキャストに迎えた、ハートウォーミングなお風呂ムービー『湯道』。企画したのは、『料理の鉄人』など伝説的テレビ番組を手がけたほか、くまモンを生んだ『くまもとサプライズ』運動、映画『おくりびと』の脚本などで知られる放送作家・小山薫堂さん。

古びた銭湯「まるきん温泉」を舞台に繰り広げられるこの映画は、日本独自の文化である入浴に光を当て、その様式を高める「湯道」がベースとなっているが、そもそも「湯道」とはいったいなんなのか。そこには、「気付き」における小山さんの人生の楽しみ方が詰まっていた。

「もう体質みたいなものですかね」(小山)

──2015年に小山さんが提唱された「湯道」ですが、そのきっかけはなんでしたか?

いちばん根底にあるのは、お風呂というものを違った目線で見たとき、清潔にする、気持ちがいい、だけではない場所になりうるなと。お風呂の世界にもし「道」というものができれば、自分自身のことをもっと考える場になるかもしれないし、精神的にも他者を慮る鍛錬ができるかもしれないなと思って。

あとは、インバウンドに対する日本の魅力の発見ですね。温泉は今も人気ですが、入浴という行為を日本人はこんなに大切にしているんだと発信することによって、「日本に行ったら、食べることと風呂だよね」となれば、日本のひとつの強みになる、わかりやすいキーワードになるかなと思いました。

──温泉はおでかけスポットとして訪日観光客からも人気ですが、入浴とはもっと日常的なものです。誰もが知る当たり前の行為のなかにも、新たな価値観があると。

そうですね。茶道もそうだと思うんですけど、みなさん普通にお茶を飲むじゃないですか。でも、茶道としてお茶と向き合うことで、まったく違った価値がそこに生まれたわけで。そういったものはほかにないかと考えたときに、風呂だと直感的に思いついた感じですね。

角野卓造演じる、「湯道」の家元・二之湯薫明 (C)2023 映画「湯道」製作委員会

──小山さんがこれまで手がけられた数々のプロジェクトからは、新しいモノを作り上げるというより、すでにあるものに違った角度から着目し、そこから新たな魅力を浮かび上がらせることを大切にされているように思えます。今回のこの「湯道」に関しては、どんな想いを込められたんですか?

まさに「気付き」なんですけど、ひとつは感謝ですね。他者を慮るという、心配りみたいなことの大切さ。それを風呂を通じて、自分のなかで反芻し、そして発見することで、それが幸せの創造につながるんじゃないかと思っています。

──そういった「気付き」って、インスピレーションで思い浮かぶんですか? それとも、長年積み重ねていって見えてくるものなのですか?

どうでしょう。やっぱり「気付き」ってホントに大切だと思ってますので、まさにくまモンのキャンペーンなんかも、観光を通して、日常にある大切なものに気づくというものでした。灯台下暗しで、近すぎて見えなくなっているものが、実はこんなに良かったんだと思えるようなキャンペーンをやりたいというのが発端だったので、もう体質みたいなものですかね。

映画『湯道』予告編

映画『湯道』

2023年2月23日公開
企画・脚本:小山薫堂
監督:鈴木雅之
出演:生田斗真、濱田岳、橋本環奈、ほか
配給:東宝

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本