大阪老舗ホテルが男性トイレにサニタリーボックス導入、なぜ?

2023.3.27 07:15

「リーガロイヤルホテル(大阪)」の男性用個室トイレに設置されたサニタリーボックス

(写真2枚)

大阪の老舗ホテル「リーガロイヤルホテル(大阪)」(大阪市北区)が3月1日、男性用トイレの個室に「サニタリーボックス」を導入すると発表。なぜ男性用トイレにサニタリーボックス? その経緯や必要性など、同ホテルの総支配人・中川智子さんと、経営企画部・久保彩子さんに訊いた。

サニタリーボックスとは、トイレの個室に設置されている小さなゴミ箱。「汚物入れ」とも呼ばれ、これまでは生理用ナプキンやタンポンなどを捨てるためのものとして、女性用トイレのみに置かれることが多かった。

■ 見えづらいトイレ問題、お客さまアンケートで浮き彫りに

そんなサニタリーボックスを男性用トイレに設置するという試みは、2022年の秋頃から地方自治体を中心に活発化。民間で取り組む企業はまだまだ少ないなか、同ホテルが本格的な導入に踏み切った理由のひとつがお客さまアンケートだったという。

その内容は、「客室に男性用のサニタリーバッグがないために処理の仕方に困っている」というもの。同ホテルの客室には、女性用のサニタリーバッグが用意されているが、コンパクトかつ目立たないように作られているため、尿漏れパッドやおむつを入れるには小さすぎるのだ。

デリケートなトピックだけに、これまで話題に上がることすら少なかったこの問題。その結果、尿漏れパッドやおむつを利用する人が、出先でそれらのゴミを袋に入れて自宅まで持って帰らなければいけないという負担を強いられていた。

(左から)同ホテル総支配人の中川智子さん、経営企画部の久保彩子さん

そんななか、中川さんは「そういったお声が客室であがったということは、もちろんパブリックでも存在するはずです。レストランや宴会でお越しになった方がトイレを利用する際に、同じような負担を抱えている可能性を考慮し、地方自治体が始めていることを、今こそ私たちもホテルとして取り組むべきだと思いました」と、ボックス導入への経緯を説明。

こういった試みを図るホテルはまだ少ないが、なかには手洗いスペースのそばに尿漏れパッドやおむつを捨てることができるゴミ箱を設置した施設もあるという。

「しかし、個室でビニール袋に入れるといった処理をされても、手洗いスペースにあるゴミ箱に入れるまでに、例えば宴会でご一緒になったお客さまとばったり会い、それを捨てているところを見られることへのネガティブ感というのもあるかと思います」。こういった配慮から、同ホテルでは全個室にサニタリーボックスを導入した。

さらに、この取り組みを進めるうちに利用客だけでなく、従業員のなかにも同じ問題に直面している仲間がいたことが判明。そこで、従業員の男性トイレの個室のなかにも設置することに。「高齢化社会が進み、60歳を超えても継続して働いてくれる人が増えるなかで、スタッフのストレスを軽減する方法も、企業として考えていくべき課題だと思います」と、その意義について言及する。

今年で創業88年を迎えた老舗の同ホテル。創業当時からの常連でシニア層の顧客も多いことから、今回こういった問題が浮き彫りになったのかもしれない。

また、男性用トイレにサニタリーボックスを導入することで、心は男性で男性用トイレを使用しているが、身体の構造が女性であるトランスジェンダーの方が、トイレの個室内で生理用品を廃棄することも可能に。中川さんは、「今後、当ホテルだけではなくツーリズム業界全体にこういったムーブメントが起こることで、お年を召した方や性的マイノリティの方、誰もが旅行を前向きに楽しめるようになってほしい」と、期待を寄せた。

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