女漫才師・爛々、昭和も令和もハマる…「カリスマ性」醸す出囃子
お笑い芸人が舞台へ上がる際に流れる音楽「出囃子」。芸人にとっては自分たちの登場を知らしめる重要なテーマ曲、また舞台に立つエンジンであり、それぞれに思い入れがあるはず・・・。
そこで「よしもと漫才劇場」(大阪市中央区:以下、マンゲキ)所属芸人から、曲に込められた想いや経緯などを深掘り。マンゲキメンバーの兄貴的存在で、お笑いコンビ・スマイルの瀬戸をインタビュアーに迎え、11回目は関西の若手女流しゃべくり漫才師代表・爛々(らんらん)に迫ります。
■ 幅広い世代にハマるような漫才、という思いで(大国)
瀬戸:さぁ、もう11回目か! 爛々です! よろしくお願いします。
大国&萌々:よろしくどうぞ!(ジェスチャー)ハァッ! 瀬戸さ〜ん!
瀬戸:そんなしっかりやらんで大丈夫! 文字で伝わるかわからんけど、効果音までたっぷりと舞台尺でやってくれたことは伝えるわ!(笑) 今までとタイプが違うのよ。こんな前のめりで、10のギアでくるコンビおらんで! みんな何で瀬戸さんなん・・・?って恐る恐る始まるパターンが多かったから。
萌々:いやいや、もう(この企画)知ってもうてるんで。そんな小芝居できませんので。
大国:これ出られるのいっちょ前ですよ!
瀬戸:そら良かったわ。僕のなかで最若手のイメージが爛々世代やねんけど・・・結構早い段階から知ってたからね。そこから考えるとお姉さんになったし、リアルに勢いはついてきてるんじゃないの?
大国:まぁ確かに? メディアの方ではちょっと・・・引っ張りだこかなって。
瀬戸:あんまり自分から言わへんって。ほんで「引っ張りだこ」ほどは見てへんで!(笑)
大国:ちょっ、チョメ!
瀬戸:でも、確実に階段はのぼっていってるよね。
萌々:やっぱり『女芸人No.1決定戦 THE W』に出たことがデカかったと思います。それと、この「しゃべくり漫才」のスタイルは変えずに続けて、小づえ・みどり師匠とかすごい女流漫才師さんを思い出させる「関西にどえらい奴らがおる」っていう感じで評価していただけることがあって・・・めちゃくちゃありがたいです。
瀬戸:結成当時から、もう今のしゃべくりスタイルなん?
萌々:コント漫才とかもやってたりしてたんですけど、キャラクターに入っても人間が変わらないというか・・・変われないので。それやったらもう変わらずのしゃべくりのままやろうっていう。
瀬戸:コント漫才が簡単っていうわけではないけど、しゃべくり漫才ってほんまに難しいジャンルやんね。本能をむき出しにした感じやしね。男女でしゃべくりの目線ってまた違うし、若手の劇場やったら女性のお客さんが多いやろうし・・・そこでやっていく難しさというか葛藤はなかったの?
萌々:めっちゃありました。最初はほんっまに大変でした! マンゲキの翔メンバー(所属する10年目以下の若手芸人)のバトルライブで、客票が2票とかでしたから。それもチケット5枚売ったのに・・・。そこからじっくり、今は単独ライブも満席になって、お客さんの8割が女性。同性の方の心をつかめたのはめちゃくちゃ良かったですね。
瀬戸:そこを引き込んだってすごいよね。そんな同性から支持される2人の出囃子が・・・中森明菜の『北ウイング』(1984年)っていうね。これはなんでこの曲に? ほんとお父さん、お母さん世代の曲やし、20代の女の子が出てくるときにかける曲じゃないやんか。
萌々:そうなんですよ! この曲は・・・多分私が持ってきたんかな?
大国:いや、私が決めましたね。
瀬戸:ここめっちゃ大事よ!? どちらが持ってきて、決めたかっていう。
大国:いや、私が持ってきたのに! 萌々ちゃん、違う曲持ってきてたやん!
萌々:そうなんです。リリーっていう方の『ベッドでタバコを吸わないで』(1997年)って曲を持ってきて、1回これに決まってたんですよ。でもマイナーで渋すぎて、笑かす気がないんかってなって。めちゃくちゃかっこいいんですよ。
大国:私のなかで、爛々は当時から黒衣装で渋みをもったしゃべくりやっていうのがあったんですけど、もう少しポップさが欲しかったんですよ。
萌々:でもこれは2人でビタッとハマったんです。
瀬戸:じゃあお互い何個か出し合ったなかで、大国さんの見つけた『北ウイング』が・・・。
萌々:いや、これは私が見つけました! これだけは譲れない!・・・でもこうやって揉めてたら不安になってきた。
大国:最後まで萌々ちゃん文句言うてたもん。「これ、すぐ変えるわ!」って言うてたもん。
萌々:・・・なんかそんな気もしてきた。
瀬戸:ハハハ!(笑)じゃあ、これを選んだ決め手は何やったん?
大国:イントロにもちょっとポップさがあって、「Love Is The Mystery〜♪」っていう歌い出しの曲調とかテンポ感もすごく良い。なんか明菜さんって80年代のナウい尖った女性で、それで今も「私は明菜派や聖子派や」みたいな話が出るくらい、時を作った人じゃないですか。その世代の人にも今の世代にもハマるような漫才をしたいなって思ったときに、この人しかおらんのかなと思って決めましたね。
瀬戸:絶対曲持ってきたの、大国さんやん。こんなしっかりと芯もった理由あるって・・・萌々ちゃん、ここはもう負けやわ。
萌々:確かに。でも異議あります。古いのにしようって言ったのは私です! それだけ絶対書いておいてください。
大国:どうしても負けたないんや・・・。
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