ほのぼの家康の上京物語、一方でラスボスとの初対面に悲鳴も【どうする家康】

2023.4.3 17:30

『どうする家康』第13回より、活気ある市中で笑みを浮かべる徳川家康(松本潤)(C)NHK

(写真2枚)

古沢良太脚本・松本潤主演で、江戸幕府初代将軍・徳川家康の、厳しい選択だらけの人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。第13回『家康、都へゆく』では、完全にお上りさん状態の家康御一行の姿になごみつつも、数日先から数十年先までの、さまざまなフラグを立てまくる「隠れ不穏回」ともなった(以下、ネタバレあり)。

■どうする家康、フラグ立てまくり

織田信長(岡田准一)に擁立された、足利幕府の15代将軍・義昭(古田新太)から上洛の命がくだり、家康は家臣たちを引き連れて京に入る。しかし本多忠勝(山田裕貴)と榊原康政(杉野遥亮)が、浅井長政(大貫勇輔)の家臣たちとケンカして大怪我を負わせてしまい、家康は信長の前で、木下藤吉郎(ムロツヨシ)と明智光秀(酒向芳)に責められる。

そこに長政が現れ「戦場での戦い方をご指南いただいた」と主張したため、この件は手打ちとなった。長政は、信長の妹である妻・お市(北川景子)から、この件を穏便に済ませるよう頼まれたことを明かし、家康に「一度でいいから、腹を割って心ゆくまで語り合ってみとうござった」と告げて立ち去った。

将軍との謁見を目前にした家康のもとに、突然お市が娘・茶々を連れて来訪。やさしい長政のもとで幸せに暮らしているということを聞き、信長に付いてきたことで、このまま戦のない安寧の世が来るという気分になる家康。しかし領地の近江に戻ったお市は、長政から「義兄上を裏切る」という決意を聞くことになる・・・。

■前回から一転、和み回で訪れた癒やし

今川家滅亡というヘヴィな展開を癒やすように、初めての上京にいろいろ浮足立ってしまう家康&家臣団の姿についつい和んでしまった第13回。なかでも視聴者が喝采したのは、京の都で迷子になったり、家康の悪口を言われて反射的にキレ散らかすなどの活躍(?)を見せた、平八郎(忠勝)&小平太(康政)の「平平コンビ」だ。

以前から仲良くケンカしてる状態がSNSでは人気だったが、今回も「都会が苦手で初めて泣き言言う平八郎かわいいし、迷子になってるのに涼しい顔してる小平太もかわいい」「血の気の多い平八郎と冷静で客観的な小平太だけど、主君を馬鹿にされると2人して大暴れするのほんと好き」などの、好意的なコメントが相次いだ。

そして酒井忠次(大森南朋)に乞われて対面した、京都の豪商・茶屋四郎次郎にも注目。演じる中村勘九郎は、2019年の大河ドラマ『いだてん』で、日本マラソンの父・金栗四三を好演したのが記憶に新しいところ。そして信長役の岡田准一、於大役の松嶋菜々子、本多正信役の松山ケンイチに次ぐ、4人目の大河ドラマ主演経験者の登場となる。

SNSでも「4年ぶり大河ドラマおかえりなさいましーーー」「茶屋四郎次郎が全く四三に見えなくて、やっぱり勘九郎さんはすごい」などの声に加えて、こののち四郎次郎が「伊賀越」に関わることを知る人たちからは「ヤッスを助ける神君伊賀マラソン、楽しみにしてます!」「『スッスッハッハッ』の呼吸法を家康に教えながら走ってほしい」という「混ぜるな危険」コメントが相次いだ。

■とんでもなく因縁深い、悲鳴の上がる構図

そしてもうひとり、本作初お目見えを果たしたのが、大貫勇輔が演じる信長の義弟・浅野長政だ。しなやかなダンスのスキルを活かして、ミュージカルの舞台を中心に活躍している大貫だが、近年はストレートプレイはもちろん、特撮などのドラマでも存在感を発揮。大河ドラマ自体が初登場となる今回も、やさしき知将という本作の長政像を存分に体現してみせた。

「浅井長政は良いに決まっているのだが、大貫さんの長政、とりわけ良い。良いぞ」「めちゃくちゃ紳士で格好良くて好き」などの絶賛コメントが相次ぐ一方、こののちすぐ信長や家康と袂を分かつ展開となるので「出来た人物に描かれれば描かれるほど、このあとのことが辛い」「長政さま、初登場で一級フラグ建築士」などの嘆きの声があふれた。

信長の妹・お市(北川景子)と桜を見上げる徳川家康(松本潤)(C)NHK
信長の妹・お市(北川景子)と桜を見上げる徳川家康(松本潤)(C)NHK

また、家康がまだ幼いお市の娘を抱っこするシーン。一見ほのぼのとしているが、「茶々」と呼ばれたこの姫が、のちに木下藤吉郎(豊臣秀吉)に嫁いで「淀殿」となり、40数年後の家康最後の大戦『大坂の陣』の実質的なリーダーになる・・・ということを考えると、とんでもなく因縁深い構図なのだ。

SNSでも「将来のラスボスと初対面キターーーッ!」「こんなんアカンやろ、泣くーーーあんたこの子をのちのち自害に追い込むんやでーーー」「『茶々を抱っこする家康』という悪意の塊のような場面を出してくれたことで、このドラマに最後まで付いていくことにしました」という、悲鳴と感嘆が混じったような感想が並んだ。

前回の『鎌倉殿の13人』でも、一見ふざけたコント回ほど、脚本家は将来に向けた数々のフラグを立てるものだ、ということを学んだ我ら視聴者。しかし次の回ではもう裏切るはずの浅井長政のフラグはともかく、半年以上先の放送で確実に訪れる悲劇の布石が、こんなかわいらしい形で打たれるとは。この大河は「地獄への道は善意で舗装されている」ならぬ「地獄への道は和みで舗装されている」なのかもしれないし、もしそうなら最後まで気が休まることはないだろう・・・、いい意味で。

『どうする家康』は、NHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第14回『金ヶ崎でどうする!』では、信長にしたがって越前に向けて進軍した家康たちが、長政の裏切りを知り、命がけで撤退を行う「金ヶ崎の退き口」が描かれる。なお来週9日は放送休止で、16日から再開される。

文/吉永美和子

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