怪演で「麒麟がくる」を完全上書き、クセ強・光秀と義昭に震撼【どうする家康】

2023.4.15 07:30

酒向芳が演じる、足利義昭の家臣・明智光秀 (C)NHK

(写真3枚)

松本潤が徳川家康を演じ、その厳しい選択だらけの人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。第13回『家康、都へゆく』では、数多くの歴史的人物が初登場。なかでも酒向芳が演じた明智光秀と、古田新太が演じた足利義昭のクセの強さに、SNSが大いに湧いた(以下、ネタバレあり)。

■どうする家康、都に着いた

新しい将軍・足利義昭(古田新太)から上洛の命が下った家康。息子・信康(寺嶋眞秀)の妻となった信長の娘・五徳(松岡夏輝)から「コンフェイト(金平糖)」を買ってくるようせがまれ、妻・瀬名(有村架純)もコンフェイトに興味を持つ。

桜の木の下で、嫡男の信康とその妻・五徳姫の話に耳を傾ける瀬名(有村架純)(C)NHK
桜の木の下で、嫡男の信康とその妻・五徳姫の話に耳を傾ける瀬名(有村架純)(C)NHK

上洛早々、家康は京都奉行となった木下藤吉郎(ムロツヨシ)や、義昭の家臣・明智光秀(酒向芳)などと面会。疲労困憊となった家康が最後に会ったのは、元は三河の侍で、今は京で豪商となった茶屋四郎次郎(中村勘九郎)だった。家康は彼に「コンフェイト」を所望し、四郎次郎はその期待に応えて、数粒のコンフェイトを家康に献上する。

そしてついに、将軍にお目通りがかなった家康。しかし義昭は呆けたような態度で対応したうえ、決して徳川と呼ばずに旧姓の「松平」呼ばわりし、さらには「官位を金で買った田舎者」と言い放つ。さらに、お目通りの直前に家康がコンフェイトを手に入れていたことを聞きつけたのか、それを差し出すように命じ、全部平らげてしまうのだった・・・。

■長年刷り込まれた、光秀像そのもの

2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』では、主役の長谷川博己が正義感の強い明智光秀像を作り上げ、従来の「陰気で狡猾」というイメージの払拭に成功した。しかしこの第13回で登場した光秀は、なんとも慇懃無礼で陰湿そうなオーラが漂い、さらに「金柑頭」と呼ばれるのも納得なヘアスタイルが、長年刷り込まれた光秀像そのものだった。

SNSでも「これは岡田信長に虐げられそうな光秀ww」「蹴られたら吹っ飛んでいきそうな髷、金柑頭って呼ばれそうな毛量、仕事はできるけど陰険。懐かしいな~こういう明智光秀」「今作の明智、この世のつまらなさを煮詰めたようなカリカリ感があって、これはこれで好み」などのコメントが。

演じる酒向芳は、小劇場系の舞台から朝ドラまで、数多くの作品に出演するバイプレイヤー。特に映像では、いずれもさほど多い出番ではないながらも、「え? あれって以前この役をやってた人なの!?」と毎回驚かせてくれる、隠れカメレオン俳優でもあるのだ。今回の明智光秀は、まさに長年の苦労が報われた大役と言ってもいいだろう。

SNSでも、「今回の光秀さんはこういう人。そりゃ酒向さんやるからには、クセありそうな人になるよね」「なかなかに背筋に氷入れられた感で、すっごく楽しくなってきた」「今までの僕史上一番好きな明智光秀になりました!」「酒向芳さんのこういう役が好きなので、これから特に秀吉との絡みが楽しみ」などの応援の声が上がっていた。

■「バカ殿」キャラ、古田新太が演じる義昭

古田新太が演じる、新しい将軍・足利義昭 (C)NHK
古田新太が演じる、新しい将軍・足利義昭 (C)NHK

そしてなによりも、今回の超ド級のインパクトだったのが、関西小劇場界が生んだ怪優・古田新太が演じた足利義昭だ。こちらも『麒麟がくる』では滝藤賢一が、温厚で誠実という斬新な義昭像を見せたが(ちなみに2014年の大河『功名が辻』で演じたのは、『鎌倉殿の13人』の脚本家・三谷幸喜!)、それを笑顔で破壊するような「バカ殿」キャラを作り上げてきた。

なんか呂律が回らないし、話してる途中で居眠りしちゃうという、家康とのどうしようもない対面に、SNSでは「三谷幸喜よりやべー征夷大将軍」「絶対に笑ってはいけない幕府24時」「滝藤さんの義昭のイメージを返せ」「古沢さんは足利義昭じゃなくて、泥酔してるときの古田新太さんを書いただけじゃないんか(笑)」などのツッコミがあふれかえった。

さらに家康が、家族のためにようやく手に入れたコンフェイトをむさぼり食ってしまうに至っては「義昭さんがガリガリ食べてる音が辛くて泣きそうになっちゃった」「もう滅んでよし」「この義昭は追放されても仕方ない。ていうか、追放して」「ボリボリ食ったコンフェイト全部フリスクになってしまえ」など、呪詛のような言葉が思わず漏れ出した人も。

演じるのが古田新太なので多少どぎつくはあるけど、こちらも酒向版光秀と並んで、割と従来の義昭像に近い造形ではある。ただ近年は、単なる信長のお飾りではなく、彼なりに政治的な根回しはきちんとおこなっていたという説も出てきた。実際、暴言に思える「官位を金で買った」発言もまったくその通りなので、家康も反論できないのだ。

さらに、パッと見は阿呆だとか変人だとしか思えないけど、実は善であれ悪であれ一本筋の通った何かをはらんでいるという役が得意な古田が演じるだけに、もしかすると「バカ殿のフリをして、とんでもないことをやらかしてくる」という可能性もかなり高い。次回以降の、最後の将軍の暗躍に注目だ(バカ殿のままで終わる可能性もあるけど・・・)。

『どうする家康』は、NHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夕方6時からスタート。第14回『金ヶ崎でどうする!』では、北陸に進軍した信長軍が、長政の裏切りを知り、命がけで撤退をおこなう「金ヶ崎の退き口」が描かれる。なお4月9日は放送休止で、次回は16日となる。

文/吉永美和子

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