憧れを形に…「グリコのおもちゃ」がデジタル化、変化し続ける今

2023.5.5 08:30

1922年に登場した「グリコのおもちゃ」

(写真6枚)

「ビスコ」や「ポッキー」といった大ヒット商品を生み出してきた食品メーカー「江崎グリコ」(本社:大阪市西淀川区)。同社は1922年、キャラメルと合わせて「豆玩具(おもちゃ)」が入った「グリコ」を発売し、その斬新なアイディアで一躍その名を世に知らしめた。

発売から100年、現在の「おもちゃ」はどうなっているのか? 調べると、アプリで撮影・・・といったデジタルな「おもちゃ」に進化を遂げていた。

■ 激動の戦前から平成へ…時代を映す「グリコのおもちゃ」

創業者・江崎利一氏による「子どもの天職は遊ぶことと食べること」という考えから、「子どもたちの心身の健康」を第一に考え販売をスタートした「グリコ」。「同じものが出て、子どもをがっかりさせないように」という思いもあり、これまでに作ったおもちゃは約3万種類、約55億個というから驚きだ。

創業期は、タバコの箱に入っていた美人画からヒントを得た「絵カード」や、英雄をモチーフにした「メダル」が人気を博したという。創業以来のおもちゃを所蔵する「江崎記念館」の館長・石橋達二さんは、「おもちゃのモチーフとなった家具や車のなかには、デザインが変わっていたり、現代では姿を消したものも。歴代のおもちゃを見ていると、当時の人々の文化や暮らしぶりも読み取れます」と語る。

戦争で「グリコ」の生産自体を停止していた時代を経て、物資が復活すると紙やブリキ、陶器など、さまざまな素材を使ったおもちゃが次々と生まれた。日本が高度成長期を迎えると、テレビや洗濯機や冷蔵庫など、人々の憧れだった家電を再現したものも出現する。

さらに、プラスチック製が登場すると、おもちゃのクオリティは飛躍的にアップ。成形しやすい素材のため、乗り物や家電の形状をより細かく再現でき、色合いも鮮やかに。SFブームやメルヘンブームが巻き起こった80年代からは、明確な「テーマ性」が打ち出され、オリジナルのロボットやキャラクターに細かな設定や世界観を盛り込み、子どもたちが「ごっこ遊び」で楽しめるような仕様を追求した。

1988年からは、おもちゃデザイナー・加藤裕三氏による「親子で遊べるおもちゃシリーズ」が誕生。木を使ったおもちゃを得意とする加藤が手掛けたシリーズは、木の丸みを活かした独特なデザインが評判となり、親世代からの人気も高かったという。

■ デジタルに進化も…昭和の要素も取り入れブラッシュアップ

アプリで読み込み…「グリコのおもちゃ」がデジタル化

そして、2010年から現在まで続くのが「アソビグリコ」シリーズだ。なかでも、動物型のおもちゃを撮影すると、仮想空間にその動物が出現するアプリと連動するシリーズは、今までの「グリコのおもちゃ」の概念を覆すと話題を呼んだ。

今後はデジタルツールを活かしたおもちゃが主流となっていくのか・・・と思いきや、最新シリーズではアプリを使わず、ペットボトルの蓋など自宅にあるアイテムを組み合わせて遊ぶおもちゃとなっている。デザインも、初期のおもちゃから着想を得た民芸品風のビジュアルに「だるま落とし」や「コマ」など昭和のおもちゃ要素を組み合わせた、かつてのおもちゃを現代風にブラッシュアップしたスタイルに。

「おもちゃに限らず、今後はなにをするにもデジタルを避けては通れません。今はデジタルとアナログ、両方のメリット・デメリットを考えて試行錯誤をする過渡期ですね」と石橋さん。最新技術を取り入れつつ、時には過去のデザインやコンセプトに立ちかえる「グリコのおもちゃ」シリーズ。形を変えても、「子どもたちの心身の健康」を軸にしたおもちゃ作りは、これからも続いていく。

取材・文/つちだ四郎

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