GWにチェック! 2022年の「ベスト洋画」を評論家が選出

2023.5.6 21:30

映画評論家の春岡勇二氏、ミルクマン斉藤氏、華崎陽子氏(左より)

(写真4枚)

「カーニバルってのは恐怖なんだよ」(春岡)

華崎:だったら、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『リコリス・ピザ』はどうですか?

斉藤:あれは僕の1位。PTAは、ああいう映画を撮るとすごく肩の力が抜けるっていうか。

華崎:肩肘張ってない感じがしましたね。70年代のトリビアたっぷりの青春ムービー。

斉藤:『ブギーナイツ』(1998年)もそうだったけど、『リコリス・ピザ』のサンフェルナンド・バレーも然り、自分が育った場所を舞台に作った映画は芸術に昇華させない、彼の場合。それが良いのよね。

春岡:ポール・トーマス・アンダーソンにとっての自伝的映画?

華崎:そうそう、そうです。

春岡:だけど俺は、あの主人公の女子と男子が好きになれないんだよ(笑)。

華崎:まあ、正統派の美男子ではないですよね。

斉藤:彼、PTAの盟友フィリップ・シーモア・ホフマンの息子なのよ。

華崎:フィリップ・シーモア・ホフマンは、ずっと出てましたからね。

春岡:なんかダメだったなぁ。まあ、俺が選ばなくても絶対トップ3には入るから。

華崎:あれはどうでした、ジョーダン・ピール監督が最悪の奇跡を描いたスリラー映画『NOPE/ノープ』

斉藤:『NOPE/ノープ』はタイトルデザインからして、映画についての映画であることを言おうとしてる。

春岡:俺、これ見逃しちゃったんだよ。

斉藤:いやあ、狂った映画ですよ。でも、ジョーダン・ピールのなかでも抜群面白かった。まぁ、エイリアンとの戦いなんだけど、結局、エイリアンも映画の権化なのよ(笑)。

華崎:最後のシーンのカメラって・・・。

斉藤:IMAXのカメラを改造して撮ってた。機材にもいちいち凝っててさ。

華崎:劇中のエイリアンを撮る機材もメッチャこだわってるんです。それに、さっき出た『フリークス』じゃないですけど、遊園地みたいなの出てきましたよね。

映画『NOPE/ノープ』 (C)2022 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

斉藤:向こうで言うところの「移動カーニバル」。いわゆる非日常の象徴というか。今でもある。さすがに見世物小屋はもう無いと思うんやけど。

春岡:日本にも見世物小屋があったけど、寺山修司とかの世界観なんだよ。アニメーション監督の今敏もやってたけど、カーニバルとかパレードってのは恐怖なんだよね。あと、丸尾末広の『少女椿』もそうだな。

斉藤:丸尾末広の世界観は、寺山修司そのものやしな。

春岡:まあ、水木しげるとか引っ張り出してきたら収拾つかなくなるけど、妖怪ってよりも、見世物への愛憎みたいなものかな。

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本