GWにチェック! 2022年の「ベスト洋画」を評論家が選出

2023.5.6 21:30

映画評論家の春岡勇二氏、ミルクマン斉藤氏、華崎陽子氏(左より)

(写真4枚)

「表現媒体として揺らいじゃってる、映画が」(春岡)

華崎:『NOPE/ノープ』ではそれがエイリアン、宇宙人でしたね。

春岡:下手物(ゲテモノ)への好奇心と興味と愛情と。怖いもの見たさ、というか。簡単に言うと。あの世界観って万国共通なんだよな。

華崎:デヴィッド・リンチ監督の『エレファント・マン』(1981年)もそうですよね。

斉藤:そうそう、まさに。あれは実話だけど。

華崎:最近、リバイバルでやってた『エレファント・マン』を観たんです。やっぱりスクリーンだと迫力が違った。昔観たVHSとは比較にならない。

映画『エレファント・マン 4K修復版』予告編

春岡:『エレファント・マン』のあの奥行きはテレビじゃ無理だよ。『カモン カモン』とかもテレビで観たら薄っぺらくなりそうだけど。

華崎:確かに。『NOPE/ノープ』も色少なかったですよね。『ナイトメア・アリー』もそう。

春岡:良い映画って言うのは質感だから。

斉藤:特に『NOPE/ノープ』は映画についての映画だから。1秒間24コマで動きが作られるフィルムについての映画だから、

春岡:ある種の危機感もあるんじゃないかな? スマホで観るのが主流になってるけれども、やっぱり映画は24コマ。30コマじゃねぇってことへの最後の抵抗みたいな。

斉藤:でも、それをIMAXで撮るっていう(笑)。

華崎:ここ最近、1秒間に24フレームっていうワードが結構映画に出てますもんね。

斉藤:『フェイブルマンズ』でもいきなり子どもに言うし。

華崎:映画館で映画を観ない時代になってきましたもんね。そういえば、アカデミー賞前の昼食会でスピルバーグがトム・クルーズを抱きしてめ、「君が映画産業を救った」って言ったんですよ。

斉藤:そうなの?

華崎:そう。『トップガン マーヴェリック』がお客さんを映画館に戻したって。映画業界を救ったのは君だって賛辞に、トム・クルーズが感極まるという。

春岡:今、映画の定義があやふやになって、スクリーンで観るのが映画だと言えなくなってきてる。映画人も今はデジタル1秒30コマが普通で、24コマでないのは分かってるんだけど、でもやっぱり映画は24コマが良いってちゃんと言っとこうぜ、というかさ。そりゃ俺も内向きになるわ(苦笑)。

華崎:もはや映画=スクリーンじゃなくなってきてますからね。

春岡:表現媒体として揺らいじゃってるからさ、映画という存在が。スマホやタブレット、モニターとしてのテレビで観る人も多いわけで。もはや「それは映画じゃねえ」と言ってもしょうがないじゃん。

斉藤:マーティン・スコセッシ監督は、「俺の映画はスマホで観るな!」って言ってるし(笑)。そういや、韓国映画はみんな観てる?

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