成島出監督&役所広司「日本映画の王道で家族を描いた作品」

2023.5.8 19:00

映画『銀河鉄道の父』の成島出監督(右)と主演の役所広司

(写真6枚)

「おもしろうてやがてかなしき、という王道」(成島監督)

──共演してみて、菅田さんについて改めて思われたこととかありましたか?

役所:菅田くんは、みなさんご存知のように素晴らしい俳優ですから、現場では台本なんて見ることもなく、すっと佇んでる感じの人かなって思っていたんですけど、実際には、待ち時間には台本を手にぶつぶつ言いながら方言を練習してるんですよ。「あぁ、菅田将暉も練習するんだ」って思いましたね。

映画『銀河鉄道の父』  ©2022「銀河鉄道の父」製作委員会

──菅田さんに限らず、若い世代の俳優さんたちについてはどう思われてますか?

役所:今の若い俳優さんたちはみんな巧いですよ。自由自在というか。だから、こっちも負けないようについていかなきゃなって思います。共演したときに刺激やエネルギーをもらって、こちらもレベルアップしていかないと。これからは彼らの時代になっていくわけですから。

──今回は、賢治の母親・イチを演じられた坂井真紀さんも、妹・トシを演じられた森七菜さんもすごく印象的でよかったです。

成島:実はこの物語のポイントは女性陣なんです。坂井さんも森さんも役柄をすごく理解して演じてくださって、物語の主軸は賢治と父親の関係なんだけれど、母親からの視点も、妹からの視点もうまく絡んで、賢治の人と作品の背景を重層的に描くことができたと思っています。おふたりには感謝しかないですね。

役所:政次郎は自分が一家の大黒柱なんだと思っているけど、実はイチやトシの方が大黒柱なんですよ(笑)。

──映画を撮られて、監督のなかで宮沢賢治のイメージは変わりましたか?

成島:全然変わりましたね。それまでほとんど意識していなかった政次郎という父親と、さらにこんな家族がいて、彼らが賢治の総てを受け止めたからこそ、宮沢賢治という才能が花開いたんだなというのがはっきりわかりました。

映画『銀河鉄道の父』の成島出監督(右)と主演の役所広司

──本作は改めて家族のことを見つめ直すきっかけにもなりそうですね。

成島:世界を襲ったパンデミック、さらにはウクライナ侵攻も起こり、家族が一緒にいられることは決してあたりまえじゃない時代のなか、「おもしろうてやがてかなしき」という日本映画の王道で家族を描いた作品です。劇中の人たちと一緒に「おもしろうて・・・」というレールにお客さんにも乗ってもらって、最後まで楽しんでもらえたらな、思います。

役所:親と子って、思い合っていても、なかなか口に出してそれを伝えたりできないじゃないですか。それが、この映画を観て、「そういえば、『ありがとがんした』って言ってないな」って思ってもらって、子が親に、あるいは親が子に思いを伝える、そのきっかけになったらいいなって思います。

映画『銀河鉄道の父』・・・今もなお唯一無二の詩や作品で世界中から愛されている宮沢賢治。生前は無名のまま、37歳という若さでこの世を去ったが、彼の死後もその才能を信じ続けた家族が、賢治の作品を世に送り続けたため、高い評価を得るようになった。賢治への無償の愛を貫いた父にスポットを当てた家族の物語。

映画『銀河鉄道の父』

2023年5月5日(祝・金)公開
監督:成島出
出演:役所広司、菅田将暉、森七菜、豊田裕大、坂井真紀、田中泯
配給:キノフィルムズ

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