映画で「観たことない岡田准一と綾野剛を見せたい」と藤井監督

2023.5.24 18:30

映画『最後まで行く』の脚本・監督を務めた藤井道人監督

(写真5枚)

2014年に韓国で大ヒットを記録した映画『最後まで行く』。ひとつの事故を発端に極限状態まで追い詰められていく刑事の姿を描いたクライムサスペンス映画で、公開されるやいなや世界中の映画ファンを熱狂させた。陰謀に巻き込まれていく刑事・工藤を岡田准一、あとを追う謎の監察官・矢崎を綾野剛が演じた日本リメイク版が5月19日についに公開を迎えた。

同作品の監督・脚本を手がけたのが、新進気鋭の藤井道人監督だ。日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した映画『新聞記者』、興行収入30億円を突破した『余命10年』を世に送り出した彼。主演の岡田に「日本映画界の希望」とまで賞される藤井監督に話を聞いた。

取材・文・写真/Lmaga.jp編集部

■「キュートな岡田准一」と「狂った綾野剛」

──同作品は2014年に韓国でヒットした作品のリメイク版ということですが、改めて日本独自のアレンジ部分などについておうかがいできますか。

企画をいただいたときから韓国映画のリメイクということもあって、それぞれの国の文化の違いが壁になると分かっていました。ただ、本質がそこにあるわけではないので、原作の面白い部分をリスペクトしつつ、どこを変えようかとなると機械的になるので、あまり気負わずに。

岡田さん演じる工藤と綾野さん演じる矢崎という人間がある種「オリジナル」として追い込まれていく姿を撮影し、「俺が観たい映画を作る」くらいの気持ちでやりました。

──綾野さんに追い込まれる岡田さん、観ていてハラハラしましたし、素晴らしかったです。見事なキャスティングに感動したんですが、この経緯は?

僕はもともと、「役者の観たことない演技を撮る」という部分を監督業のなかで大事にしています。僕は10代の頃から岡田さんに憧れていたんですが、近年は「かっちりしたかっこいい男」を演じられていることが増えているなと思ったので、「キュートな岡田さんが観たい」と、主人公である工藤は岡田さんに演じていただきたいと。

──ほんと、キュートで憎めない役柄ですね。

一方、岡田さんを追い詰めるある種「対」になるような人を考えたときに、映画『ヤクザと家族 The Family』(2021年公開、主演:綾野剛)からずっと一緒に僕の映画を支えてくれている剛さんにこの役をお願いしたいと思ってオファーしました。「狂った綾野剛が観たいです」と(笑)。

──確かに、綾野剛さんの新境地を観た気がしました。

剛さんは本当に芝居がうまく、映画人なので。そういう部分をもっと多くの人に知って欲しいという思いで、矢崎をプレゼントしました。

──そうだったんですね。岡田さんや綾野さんに演技指導などはされたんでしょうか。

僕は演技を指導する立場ではないので。ただ、「こういう矢崎が観たいです」などはお伝えさせてもらいました。矢崎が着ているコートのディティールや眼鏡など、全部ハンドメイドなんですが、髪型なども作り上げていって。あとは、「岡田さん気」を消したいという要望にも順応してくださいました。

──映画を観られた方なら分かると思うんですが、綾野さん演じる矢崎が妻・由紀子(山田真歩)と食事をするシーン、それからラストの車中シーン。矢崎の狂った部分が出ていて最高でした。

すごい顔してましたよね(笑)。僕は剛さんのその顔を見ながら笑ってました。あと、食事シーンのあの台詞、台本にはないんですよ。

──えっ、そうなんですか?

テイク1のときはもっと面白くて。剛さんが泣き出したんですよ。涙が出てきちゃったんです、むかつきすぎちゃって。すごい面白かったんですが、ちょっとやりすぎだなって思って。泣いてないバージョンも観たいですって別カットも撮影させていただきました。剛さんも岡田さんも引き出しが何十万個もあるので、撮影中は楽しかったです。

最後まで行く

2023年5月19日(金)
全国東宝系にて公開中

監督: 藤井道人
出演:岡田准一、綾野剛 ほか

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