家臣団も激おこ!戦国時代の複雑な一夫多妻事情とは?【どうする家康】

2023.5.26 16:00

侍女たちに自分を木に縛り付けさせ瀬名の折檻を受けると申し出たお万(松井玲奈) (C)NHK

(写真4枚)

古沢良太脚本・松本潤主演で、江戸幕府初代将軍・徳川家康の、厳しい選択だらけの人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。5月21日の第19回『お手付きしてどうする!』では、家康が正室の許可なく侍女を妊娠させてしまったことで、ひと騒動持ち上がるさまが描かれた(以下、ネタバレあり)。

■ どうする家康、瀬名知らずに侍女が懐妊

三方ヶ原の合戦で疲弊した浜松を立て直そうとするが、戦で負った心の傷のため知らぬ間に気力が弱っていた家康。そこでいつもやさしい言葉をかけてくれる美しい侍女・お万(松井玲奈)に慰めを求め、ついには懐妊させてしまう。それを聞いた家臣たちは烈火のごとく怒ったりあざけったりしたあげく、岡崎にいる正室・瀬名(有村架純)に報告する。

入浴する徳川家康(松本潤)と、介抱する侍女・お万(松井玲奈)(C)NHK
入浴する徳川家康(松本潤)と、介抱する侍女・お万(松井玲奈)(C)NHK

そして瀬名の浜松来訪を聞くと、侍女たちに自分を木に縛り付けさせ瀬名の折檻を受けると申し出たお万。瀬名はその行動に感心し、殿から金子をふんだくって、子どもを城の外で育てるよう、お万に命じた。

お万は瀬名に「恥じてはおりませぬ」と告げ、男は戦で欲しい物を手に入れるが、女は癒やしと安らぎで手に入れるのだと主張。さらに、「政もおなごがやればよいのです。男どもにはできぬことが、きっとできるはず。お方さまのようなお方なら、きっと・・・」と言い残して去った。

家康は瀬名に、岡崎から浜松に移って一緒に住むように乞うが、息子・信康(細田佳央太)やその妻・五徳(久保史緒里)のために、移るのはもう少し先にしたいと瀬名は告げるのだった・・・。

■ 第10回はOKで、第19回ではNGな理由

働き者で気の利くお葉(右、北香那)(C)NHK
第10回より、働き者で気の利くお葉(右、北香那)と侍女・美代(中村守里)(C)NHK

三方ヶ原という大きな山を超え、タイトルからして「ちょっと一息」な回かな? と思われた第19回。しかし第10回に引き続いて、この時代の一夫多妻事情に深く切り込んだり、これから待ち受ける悲劇「築山事件」の伏線も盛り込まれ、大久保忠世役の小手伸也がツイッターで、「箸休め回などと思ったら大間違い」と予告した通りになった。

まず家康の「できちゃった」問題だけど、なぜ第10回のお葉(北香那)は歓迎され、お万はアウトなの? という視聴者の当然の疑問に応えるように、ドラマのなかで瀬名がすっかり説明。

会社でたとえると、自分がよく知る部下ではなく、得体のしれない部外者に、社長が無断で大事な仕事を任せてしまったようなものだ。これは瀬名だけでなく、酒井忠次(大森南朋)や石川数正(松重豊)も、ドラマ最大の激おこ状態になったのもわかるだろう。

とはいえお万の方も、ドジっ子キャラをアピールしたり、(仕事とはいえ)ボディタッチをしたり甘い言葉をささやいたりと、いかにも誘う気満々で、SNSでも「距離の詰め方があざとすぎる」「殿方の家にピアス置いてくるタイプ」の声があふれ、さらにみずから折檻を求めにいくに至っては「とんでもないしたたか者じゃねぇか」「反省してるポーズで同情させるとか恐ろしい子」などの声が上がっていた。

■ 悪女どころか聡明で慈悲深い女性と印象づけた

実は「瀬名がお万を折檻」の話は、築山殿の悪女ぶりを示すエピソードとして有名なもの。今回、三方ヶ原合戦の有名な逸話「団子代踏み倒し」&「脱糞」話を、1週遅れで「庶民発信のデマ」と処理したように、一般的な伝承を「実はね・・・」という形でひっくり返すのは『どう家』の定番。折檻が「実は狂言だ」としたことで、お万のしたたかさと同時に、瀬名が悪女どころか、聡明で慈悲深い女性であることを、改めて視聴者に印象づけた。

第19回より、お万(左・松井玲奈)のしたたかさと同時に、瀬名(有村架純)が聡明で慈悲深い女性であることを印象づけたワンシーン (C)NHK
第19回より、お万(左・松井玲奈)のしたたかさと同時に、瀬名(有村架純)が聡明で慈悲深い女性であることを印象づけたワンシーン (C)NHK

SNSでも「お万の策略も余裕で看破するとは流石今川の姫」「子どもを育て、神社を再興できるだけの金子も用立てる道筋を作る、できた正室!」と瀬名を推す声と同時に、お万に対しても「生きるために色々と演じていたんだなー」「男たちが始めた戦で家も金も失った。だから失った分を男から『おなごの戦い方』で手に取った。お手付き問題でここまで描くのか」と同情と感心の声が寄せられた。

ちなみにお万が産んだ子どもは、のちに豊臣秀吉の養子を経て、家康の「配下」として活躍する結城秀康になるので、このあとに登場するかもしれない。そしてお万が瀬名に告げた「政もおなごがやればいい」という演説も、現代的な価値観を突然ぶっ込んだように思えるが、瀬名の今後の運命を決める重要な言葉となりそうなので、頭の片隅にとどめておきたい。

『どうする家康』は、NHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート(BS4Kは昼0時15分から先行放送あり)。5月28日の第20回『岡崎クーデター』では、信康が武田と激しい攻防を繰り広げるなかで、彼が守る岡崎を内部から崩壊させかねない、ある企てが進められていくさまが描かれる。

文/吉永美和子

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