全部一緒かと思ってた…京都の若鮎食べ比べセットが「価値ある」

2023.5.30 07:30

ずらりと並ぶ姿が愛らしい「京の若あゆ 食べくらべ」(3600円)

(写真8枚)

鮎漁が解禁される少し前になると姿を見せ、夏の風物詩として日本全国で親しまれている和菓子「若鮎」。地域によって「のぼり鮎」や「鮎もち」などとも呼ばれるが、いずれも清流を泳ぐ鮎を模している。

京都の逸品を取り揃える通販サイト「特選京都」では、そんな「若鮎」の作り手による個性を楽しんでほしいとの想いから、10尾をセットにした「京の若あゆ 食べくらべ」を発売。焼き色や顔の表情など、異なる和菓子店が作る十匹十色の若鮎たちが並ぶ姿はなんともいえない愛らしさを感じる。いかにしてこのような商品ができたのか、運営に携わる小林剛さんに話を訊いた。

■ 「また出して」と反響大、作り手の思いも詰まった食べ比べセット

──「若鮎」がぎゅっと詰まった姿は、なかなか圧巻です。このような詰め合わせを私自身はじめて見たのですが、どんなきっかけで商品化されたのでしょうか。

2022年末に、お正月の伝統菓子「花びら餅」の食べくらべセットを発売したところ、インスタに上げただけで早々に売り切れたんです。お客さまから「すごく良かった」「またこんなのを出してほしい」と大きな反響をいただいたので、馴染みのある味でお好きな方も多い若鮎で夏バージョンをやったらおもしろいんじゃないかと。

──第2弾だったんですね。このセットはどのように用意されているのですか?

うちのサイトでは、商品の集荷を自分たちでやってるんです。「京の若あゆ 食べくらべ」の場合は、毎週火曜と金曜を製造日と決めて、それまでにご注文いただいた分を各店舗さんへ車で取りに回っています。

できるだけ作りたての若鮎を使うため、注文が入ると1店舗ずつ集荷して詰め合わせるという

──ご自身で巡回されてるんですか!それはなかなか大変そうです。
                                        
通販サイトを始めてから10数年ずっと、作り手のみなさんと顔を合わせてやってきています。「こんなん始めるで」とか「こういうのはでけへん?」とか話をしながら、季節の和菓子を扱うことはすごくおもしろいなと思いますね。

──生産者さんとの繋がりを大事にされているのですね。第2弾となる「若鮎」セットの反響はいかがでしょうか?

5月6日にスタートしてすぐに、予想以上のご注文をいただきました。「いま届いたで。これは価値あるわぁ」と電話をくださる常連さんもいるし、お店の方からも「食べくらべセット置いてますか?てウチにも電話きたで」とか「うちの鮎がいちばん男前ちゃいます?」とか、いろんな声をいただいています。

──お客さまやお店の方との距離感がすごくいいですね。実直に関係を築かれてるんだなと感じます。そんな小林さんには答えにくいかもしれませんが、お気に入りの「若鮎」はありますか?

それぞれに特徴がありますので・・・。こんがり分厚い生地のも食べたくなるし、ちょっと落ち着いてお茶をする時には、しっとりした薄い皮のを合わせたり。

──いろいろ個性があるんですね!

あります、あります。想像以上、十種十様です。並べて写真を撮ったりしながら、顔もいろいろあるなと。その時々でちょっとズレたり、目が離れたりなんていう手作りならではの風合いもあるし、格好いいのもあったりかわいらしいのもあったり。京菓子っていうのは、「これは何なんやろう」とイメージをふくらませるところから始まる。色味も形もはんなり表現されたものを五感で楽しむ文化なので、ぜひ目でも楽しんで食べ比べてもらえたらうれしいです。

■ 食べ比べると・・・シンプルだからこそ分かる、作り手の「個性」

皮や求肥の色合い、質感はさまざま!

百聞は一見にしかず。小林さんの言葉どおり、10尾を楽しく食べ比べてみよう。まず、ビニールや和紙の袋、デザインなどパッケージから店ごとの個性が見える。竹かごや清流を描いたものもあるが、青紅葉を添えたものが多いようだ。

若鮎たちには袋から出てきてもらい、一堂に並べてみる。ひとくちに若鮎といっても、大きさや重さ、焼き具合、尻尾の表現など多様な個性があるのがよく分かる。カットして断面を見比べると、求肥にも透明感や質感がさまざまあるのが一目瞭然。手で持った感じや生地、求肥の個性が味にどう表れるのか。作り手さんに材料やこだわりを訊いたうえで、実際に食べて確かめてみた。

写真左から、(1/甘春堂)焼くときにヘラで返せないほどの柔らかい生地と、抹茶風味のとろける求肥(2/京阿月)皮も求肥もしっかりしていて、後にふわりと甘味がほどける(3/かぎ甚)餅粉やわらび粉を混ぜた独自の白い皮には、上品な甘味を感じる白小豆のこし餡と粒餡(4/京橘総本店)わりと焼き目がしっかりしているが、甘さ控えめで全体的にあっさり(5/船屋秋月)ふっくらした形が特徴の生地はしっかりした程よい弾力を感じる(6/平安殿)手焼きでしかできない極限の薄焼生地と、もっちりと粘りのある求肥(7/亀屋光洋)跳ねるような力強い容姿で、香ばしい香りが鼻に抜ける独特の風味(8/祇園鳴海屋)白味噌入りの餡を混ぜ込んだ生地は薄めだが、しっかりした食感(9/くりや)夏のお菓子と意識しているだけあり、求肥の透明度が高くとても柔らかい(10/鍵長)生地にも求肥にも柔らかさと厚みをもたせているそうで、食べ応えあり

と、実にさまざま。卵、小麦、砂糖のカステラ生地で求肥や餡を包み、鮎を模した姿形をしている以上の明確な定義がない若鮎。シンプルなだけに、作り手の個性がはっきりと出るお菓子なのだと、食べくらべてみて初めて知ることができた。10もの店舗を自力で買い回るのは骨が折れるだろうなと考えると、こうしてセットにして送ってもらえるのも、なるほど価値があるなと感じるところ。

「京の若あゆ 食べくらべ」の価格は1セット3600円(送料別)。常温保存が可能で、到着から6日ほど日持ちする。作り手と顔を合わせ信頼関係を築いている「特選京都」だから実現できたプレミアムセットということもあり、手土産や贈り物にも喜ばれそうだ。販売は7月末ごろまで。

取材・文・写真/脈 脈子

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本