関西人は細胞で反応、「アドベンチャーワールド」の神曲たち
■ こだわりは「ネガティブな言葉を入れない」
──これほどまでにオリジナルソングにこだわるようになったのはいつ頃からなのでしょうか。
私が入社したのは80年代なんですが、その頃あったのはライブに登場するイルカの名前を連呼する、言ってしまえばありがちなオリジナルソングやCMソングでした。そこからフォークソング界の大御所・西岡たかしさんが歌う『ゆるやかに愛を』をパークのテーマソングとして流し始めたことをきっかけに、今の切り口になったように記憶しています。
──今は、逆に園や和歌山県ならではのカラーを一切出さないところが印象的です。
あえて「アドベンチャーワールドに行こう!」みたいな呼びかけをするより、パークやライブで流れていた曲を家族や友だちと振りかえる方が思い出として心に残るんじゃないかと思います。その方がパークに対するイマジネーションが広がり、音楽の使われ方としても幸せじゃないでしょうか。
──そんなこだわりがあったとは。そうなると、曲作りもなかなか大変では?
そうですね。アーティストや作詞・作曲の方とかなりディスカッションを重ね、歌詞は何度もリライトしています。
当パークはお子さんからお年寄りまで、幅広い方々が来られます。だから、あまりにも突き出た歌詞だと刺さらないし、でも易しすぎると子どもっぽいし・・・。一部の層に特化した曲よりも、誰もが馴染みやすい曲の方が思い出に残りやすいかなと思います。でも、今のご時世に合った音楽にしないと時代において行かれそうですし、バランスを取るのが難しいですね。
──子どもからお年寄りまで訪れるアドベンチャーワールドならではの難しさですね。歌詞に込めるメッセージも気になります。
来園した方々が、未来に向かってポジティブな生き方ができることを1番に考えています。だから歌詞にはなるべくネガティブな言葉は入れないようにしています。楽しいはずの場所で、嫌なことは思い出したくないじゃないですか。歌詞で「絶望」とか「生まれ変わりたい」といったフレーズが必要となることは何回かあったんですが、言い回しをなんとか変えてもらっています。
■ 「いつ来ても同じ曲」と思われたくない
──今年4月末には新曲『Melody of Love』が発表されました。BTSやNiziUをはじめ通算500曲以上の制作に参加している音楽プロデューサーの岡嶋かな多さん、そして最近ではSixTONESの『こっから』を手がけた作詞作曲家の佐伯youthKさんを迎えたかなり豪華な曲ですが、こちらはどういったコンセプトなんでしょうか?
パークでは、夏休みやゴールデンウィークに期間限定で夜間におこなわれるイルカのライブ、ナイトマリンライブ『LOVES(ラブズ)』を公演しております。
『LOVES』は、光に彩られた水のステージ「ビッグオーシャン」でイルカ・クジラとトレーナーが繰り広げるライブパフォーマンスのことで、パークが45周年を迎えるタイミングで、ナイトマリンライブ『LOVES』の新テーマソングを作ろうということになりまして。ライブが「愛」をテーマにしているので、曲も「愛」が世界に広がっていくイメージになっています。
──すでに知名度の高い曲があるにも関わらず、新曲を作り続ける情熱がすごいです!
ずっと同じ曲を使っていても、来ていただいた方に「いつもこの曲や」と思われるかもしれません。それは「飽き」に繋がる可能性もありますし、パークが進化するためにも音楽も新しいものにしていくのは必要なことだと思いますね。
──新曲を定期的に作り続けることも、お客さんを楽しませることの一環なんですね。
やっぱり既存の曲やフリー音源でテーマソングを作るのは違うなと感じていて。フリー素材を使った曲をCMで流しても、きっと「別のCMでも同じ曲を使っていたな」と気づかれてしまうかも。オリジナルで作った曲じゃないとメッセージは伝わらないというのは、当初からの思いなんです。
◇
関西人にとって共通の思い出ともいえる「アドベンチャーワールド」のオリジナルソング。コンスタントに曲を作り続ける理由は、根底に「ゲストをいつまでも楽しませたい」という思いがあった。
『Always Together』『Shine on you』『Your Smile』『5つの魔法』『ラブ・ラプソディー』『Thank you all』のCDは同パークのギフトショップやオンラインショップでも購入可能。楽曲は同パークで聴くことができる。
取材・文/つちだ四郎
「アドベンチャーワールド」
住所:和歌山県西牟婁郡白浜町堅田2399
営業:10:00〜17:00 ※不定休
料金:大人(18歳以上)5300円、中学生・高校生4300円、幼児・小学生3300円、シニア(65歳以上)4800円
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