故・蜷川幸雄のもと10年…演出家・藤田俊太郎の「ルーツ」とは

2023.7.5 07:00

舞台『ヴィクトリア』で演出を務める藤田俊太郎

(写真8枚)

■ 「やり続けていたから、奇跡にめぐり会えた」

──『ヴィクトリア』は、20世紀を代表する映画監督の1人である、イングマール・ベルイマンの作品です。精神を病んだ女性の人生を、ひとり語りだけで表現しなければならないうえに、時代も舞台もあちこちに飛んでいくし、かなりハードルが高かったのでは。

これほどお客さまの想像力に、ゆだねなければならない作品は稀ですね。だから逆に、音楽もシーンチェンジもほとんどなくして、演劇の非常にプリミティブな魅力と向き合うことを課しました。

舞台『ヴィクトリア』は大竹しのぶの一人芝居で繰り広げられ、彼女にとっても約21年ぶりの挑戦となる

──東京公演がはじまっていますが(6月30日で終了)、お客さまの反応はいかがですか?

集中力が必要な舞台ですけど、終演後観客の皆さんが、興奮した状態でお帰りになっているので、非常に喜んでくださってるのではないかと思います。大竹さんによって息を吹きかえしたり、新たな魅力を発見した役柄って、非常にたくさんあると思うんですけど、ヴィクトリアもその1人に・・・大竹さんにしか演じられない魅力に溢れていると感じます。

──このあともいろんな舞台の予定が詰まっていますが、まだ挑戦していないジャンルや作品で、ぜひやってみたいというものはありますか?

それはもちろん、たくさんあります。チェーホフもシェイクスピアもきちんと演出したいと思っています。「まだ始まっちゃいねぇよ」って、とある名画の台詞にありましたけど、まだまだこれからだと思います。やっぱり大事なのは、やり続けるってことなんです。今回もやり続けていたからこそ、僕にとっては特別な存在のベルイマンの戯曲を、大竹さんと日本初演作品を創作する、奇跡にめぐり会えたわけですから。

舞台『ヴィクトリア』の劇中シーン(撮影/宮川舞子)

──蜷川さんの現場でしばしばご一緒していた大竹さんと、ついに! という感じですよね。

とある海外の作品をやったときに、上演時間をコンパクトにするため、あらかじめ台詞をカットした台本で稽古をしていたんですけど、大竹さんがとあるシーンの稽古をしていて「台詞がつながらない気がするけど、(カットした部分は)どうなってるのかな?」って、翻訳家さんに聞いたんです。1ページぐらいある台詞を、その場ではじめて見せたら、数分で覚えて、その直後の稽古で一言も間違えずに言ったんですよ。その場にいたみんな感動して泣いてましたね。

伝説的女優・大竹しのぶとの出会い、そしてともに創作できたことを「奇跡」と表現する藤田俊太郎

──大竹さんの伝説はいろいろ聞いていますが、やっぱり尋常じゃないです。

現場では誰にでもフラットに接するけど、蜷川さんに負けないぐらい自分に厳しい方でもある。2人が見ていた景色に、僕も行きたいと思っています。これからも努力を続けるだけだと思っています。

──最後に、これから3都市ツアーがひかえている『ヴィクトリア』の見どころを。

劇場で観客の皆さまに本当に特別な体験を与えてくれる大竹さんと、ものすごく雄弁で研ぎ澄ました、珠玉の作品を作ることができました。美しくて狂おしい物語ですが、女性賛歌のメッセージ、ユーモアや希望もあって、すごく前向きになれる舞台だと思います。「損はさせません!」どころか、得るものしかないので(笑)、ぜひ劇場でお会いしましょう。

兵庫公演は7月5・6日に「兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール」(兵庫県西宮市)、京都公演は7月8・9日に「京都芸術劇場 春秋座」(京都市左京区)にて。チケットはS席8000円ほか(現在発売中)。

舞台『ヴィクトリア』

【兵庫公演】
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール(兵庫県西宮市高松町2-22)
期間:2023年7月5日(水)・6日(木)
料金:S席8000円、A席6000円、B席4000円

【京都公演】
会場:京都芸術劇場 春秋座(京都府京都市左京区北白川瓜生山町2-116)
期間:2023年7月8日(土)・9日(日)
料金:S席8000円、A席6000円、学生&ユース2000円(座席範囲指定あり)

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