【どうする家康】信長が作った家康の道「本能寺の恋なの?」

2023.7.22 13:45

『どうする家康』第27回より、家康(左・松本潤)と対峙する信長(岡田准一) (C)NHK

(写真3枚)

松本潤主演で、徳川家康の人生を描く大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。7月16日の第27回『安土城の決闘』では、信長と家康が2人きりで、お互いの腹のうちを激しくぶつけ合うという緊迫した展開に。特に、限界が見えはじめた孤独な覇王・信長の姿には、視聴者からは同情の声が集まった(以下、ネタバレあり)。

■ どうする家康、弱き兎が狼を食らう

正妻・瀬名と長男・信康を死に追いやった怒りから、3年をかけて織田信長(岡田准一)の暗殺計画を立てていた家康。それを実行するつもりで、安土城の接待に招かれるが、信長と2人きりになった際に「俺を討つつもりか?」と尋ねられる。さらに、瀬名と信康の件を持ち出され、家康はつい昔のように、隠していた感情をむき出しにしてしまう。

織田信長(左・岡田准一)に招かれて安土城を訪れた徳川家康(松本潤) (C)NHK
織田信長(左・岡田准一)に招かれて安土城を訪れた徳川家康(松本潤) (C)NHK

信長は家康に対して、人を殺め続けた報いは必ず受けるという覚悟と、戦なき世を作ったあとの困難さを語り、その上で「憎んでもいいから俺を支えろ」と乞う。しかし家康は、「わしはわしのやり方で世を治める。弱き兎が、狼を食らうんじゃ」と返答。それを聞いた信長は、「お前が俺の代わりをやる覚悟があるなら、俺を討て」と告げるのだった・・・。

■ 「ノッブ&ヤッス」コンビの終焉

信長の愛が一方通行だとか、信長の気持ちに鈍チンすぎる家康とか、これまでにない関係性の描かれ方が、たびたびSNSを沸かせてきた『どう家』の「ノッブ&ヤッス」コンビ。その終わりが目前に近づいた27回は、安土城で本音をすっかりさらけ出しあうとともに、立場が逆転する様まで描かれるという、このドラマのなかでも屈指の名シーンが生まれた。

まずは信長が、家康が自分を討って天下を奪おうとしているのを察しながらも、天下は取る以上に継続することが難しいと打ち明け、そして「憎んでもいいから俺を支えろ」と懇願するというシーン。たびたび「愛が重い」と言われてしまっていた信長だけど、この「こんなんどう考えてもプロポーズやん」な発言には、SNSが大いに沸き返った。

「要約すると『一番辛い役目は全部俺が引き受けるから、付いてきてくれ』なので、本当に家康強火ファンすぎる」「家康に唯一無二の味方でいて欲しいんだと思うけど、いかんせんやり方が下手くそ過ぎるんよ」「今日のサブタイトル『安土城の決闘』って、信長に至っては『決闘』と書いて『プロポーズ』と読む状態」などのコメントが並んだ。

■ 信長が作った家康下克上の道、本能寺

しかしその手を取ることはなく「自分は自分の道を行く」と宣言した家康。それに対して信長は、自分を倒して下剋上をさせることで、家康の道を開こうとする。その場所こそが「本能寺」・・・そう考えると、信長ほどの人間がわずか100人程度の供を連れただけという、油断しまくりにもほどがある状況の理由に、ちゃんとつじつまが合うのだ。

『どうする家康』第27回より、安土城をバックに会話を交わす家康(左・松本潤)と信長(岡田准一) (C)NHK
『どうする家康』第27回より、安土城をバックに会話を交わす家康(左・松本潤)と信長(岡田准一) (C)NHK

SNSでもこの解釈に「信長さま、あえて白兎に自分を討ち取らせる気なの?」「『待っててやるさ』とかいう、本人公認型本能寺とか初めて過ぎない?」「まさか、愛ゆえに本能寺で討たれそうになる信長になるとは思わなかったな」「来週本能寺の恋なの?」などの熱い感想が。

また信長が、父・信秀(藤岡弘、)の影響で身内も家臣も誰も信じられず、孤高の存在にならずにいられなかった背景が明かされる場面では、「『お主の周りは全て敵ぞ』と教える信秀。全てはここから始まった感が凄いな(手始めに跡継ぎ争いで弟を殺すし)」「信長があんな性格になってしまったのは、このマッチョ親父信秀のせいだった」「まさかの、ここにきて。戦国の怪物・織田信秀公が物語最大の黒幕説」などのコメントがあふれた。

松本潤と岡田准一の、互いを認めあった俳優同士の魂の掛け合い(即興的な動きも多かったとか)もあって、何度でも見返したくなる緊迫感と悲しみにあふれた「決闘(またはプロポーズ)」。おそらくは家康と信長にとって、これが今生の別れになってしまうのだろうが、最後にここまで腹を割って話せたのは、信長にとっては幸せだったし、逆に家康にとっては大きな重しになることだろう。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。7月23日の第28回『本能寺の変』では、家康が堺で信長暗殺の手はずを整えている間に、光秀が本能寺に滞在する信長に奇襲をかける様が描かれる。

文/吉永美和子

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