【どうする家康】本能寺の定番ネタ全排除、信長に同調する展開に
古沢良太脚本・松本潤主演で、徳川家康の人生を描く大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。7月23日の第28回『本能寺の変』では、信長が明智光秀の奇襲を受けるなか、家康を「ただひとりの友」とした理由が明かされると同時に、異例づくしの『本能寺の変』の描写に衝撃が走った(以下、ネタバレあり)。
■ どうする信長、ひとり寂しく炎のなかへ
家康に討たれる覚悟を決めて、本能寺に滞在する織田信長(岡田准一)。そこで、父・信秀(藤岡弘、)にかつて「心を許すのはひとりだけにしておけ。こいつになら殺されても悔いはないと思う友を」と言われ、白兎のようにひ弱なのに自分に歯向かい「竹千代(家康)がそなたを食らってやる」と言い返した少年を、友に決めた過去を思い出す。
その晩、夜襲にあって重症を負った信長だが、相手は期待した家康ではなく明智光秀(酒向芳)だった。「貴公は乱世を鎮めるまでのお方。平穏なる世には無用の長物」と言われた信長は、「やれんのか、キンカン頭!」と言い放ち、激しく抵抗する。しかし森乱(大西利空)ら供の者も次々に討たれ、信長はひとり寂しく炎のなかに消えていった・・・。
■ 掟破りの『本能寺の変』、信長の心中
明智光秀が「敵は本能寺にあり」と宣言し、織田信長が「是非もなし(しょうがねえな)」とつぶやき、最後に炎のなかで『敦盛』を舞って切腹・・・。これらは歴代大河の『本能寺の変』で、まるでお約束のように使われてきた描写だ。しかしこの28回では、これらの定番が何ひとつ出てこないという、文字通り掟破りの『本能寺の変』となった。
まず異例だったのは、信長が「孤独な覇王」でありながら「家康への愛が重い」理由が、父・信秀の教えにあったという過去をこんなところで示してきたこと。これにはSNSも、「ひとりだけって呪いがあったから、あんな激重感情ぶつけてたんだな」「(武田)信玄といい、(今川)義元といい、父の言葉は呪いでもあるのか」などの納得感が。
そうして家康を「ただひとり」と認めたのが、「家康のトラウマ」の描写と思われた第2回の「相撲を取って遊んでいた」(お市談)ときだったという、まさかの事実にも「これか、このときに惚れたんか、信長は!」「『竹千代がそなたを喰らってやる』言われた信長のうれしそうなこと」「そりゃ金ヶ崎で『お前の心の内などわかるものか!』って言われたら思わず泣いちゃうよ」「それを知ってから、あのシーンを回想で見ると涙が・・・」という衝撃の言葉があふれた。
■ 信長にシンクロ、悲しい2人の本能寺
そうして迎えた「2人の本能寺」だが、来ちゃったのは望んでいた家康ではなく、史実通りの明智光秀! 前回の放送で大方の視聴者が予想していた通りの、信長の「なんだ、お前か」の反応に、SNSも「ここまで視聴者とシンクロする『なんだお前か』が、かつてあっただろうか」「なにこのお邪魔虫感&およびじゃない感w」「明智光秀も本能寺ガチャでハズレ扱いは初めてのことだと思う」と、信長の気持ちに一斉に同調。
そのことに絶望しながら、燃え盛る炎のなかに消えていくというラストには、「家康以外に殺されるとこなんて見たくないもん。信長も家康も視聴者も」「ありがとう、そしてさようなら。兎のことが大好きだった不器用な狼」「これまで沢山『本能寺の変』を見てきたが、こういう悲しさは始めて」「クソデカ感情の応酬! 最高の本能寺だった」などの追悼と賛辞の言葉が並んだ。
冒頭で述べたとおり、定番ネタがまったくないうえに、時間軸が幾度も前後するという構成の複雑さから、SNSでは否定的な意見も少なくなかった今回の本能寺。しかし家康と信長が、実はお互いの存在がなければ生き延びられなかったという『どう家』の特殊な関係性においては、「待ってました!」的な見せ場をガンガン出すよりも、この2人の時空を超えた感情のぶつかりあいで終わるというのが、やはりふさわしかったと思える。
これで信長は退場となるが、20回ぐらい前の伏線を突然「実はここにあったんですよ~」という感じで提示してくる古沢良太のミラクルな作術を考えると、家康が今後本格的に天下取りに参入する過程で、信長の言動が何かの大きなきっかけになることも考えられる。回想での再登場はかなり期待できるだろうが、まずは岡田信長には「毎回重めの愛をありがとうございました! 楽しませていただきました!!」と伝えておきたい。
『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。7月30日の第29回『伊賀を越えろ!』では、明智光秀の命令で多くの人々から命を狙われることになった家康が、家臣団とともに伊賀を命がけで越えていく様が描かれる。
文/吉永美和子
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