椎名桔平「最後のセリフまでをどう生きるか、がこの役の根幹」

2023.8.12 20:00

WOWOW『連続ドラマW 事件』で主人公・菊地大三郎を演じる椎名桔平

(写真6枚)

◆どう自分に落とし込めるか、が勝負どころ。

20代のスナック経営者・葉津子(北香那)の殺人容疑で逮捕された19歳の青年・宏(望月歩)の弁護を引き受けることになった元裁判官の弁護士・菊地。かつて、自らが下した判決から二度と法廷には立たないと決めていたが、葉津子や宏の孤独や苦悩を浮き彫りにし、自身の過去に向き合うようになる。

当初、宏の自白からすぐに結審すると思われていたが、葉津子の妹で宏の恋人・佳江(秋田汐梨)、葉津子につきまうヒモ男・宮内(高橋侃)、女手ひとつで姉妹を育てた母・すみ江(いしのようこ)、遺体の第一発見者である大村(中村シユン)らの証言から、それぞれが抱える孤独と人間の業が思いも寄らない真実を浮かび上がらせる。

裁判長・谷本一夫を演じる永島敏行(奥)は、1978年公開の映画『事件』にて被疑者・宏を演じた

──今回、被疑者の宏をはじめ、登場する若者たちからは孤独や絶望、世間への諦めとも言える「誰も僕の言うことなんて信じない」というセリフがよく聞かれます。それに主人公・菊地は次第に動かされていくわけですが。

そうですね。そういう展開ですね。

──そして、物語が進んでいくなかで、最終的に菊地の心情、信条は「間違わない人間なんていない。間違えれば、やり直せばいい」というところに着地してきます。どういう想いでそのセリフにたどり着きましたか。

物語のいちばん最後・・・そこに至るまでをどう生きるかですよね。それがこの役の根幹ですから。そのセリフをちゃんと自分の言葉として吐けるのか。最初はね、そこまでたどり着くことができるのかって思いながら演じてましたから。単純な言葉ではあるんだけど、どう自分のなかに落とし込めるか、そこがひとつの役の勝負どころだと思いました。

主人公の弁護士・菊地大三郎役の根幹について語った椎名桔平

──菊地がどうそこにたどり着いたのか、その道程は全4話のドラマでぜひ注目してもらいたいポイントですね。最初に「人間賛歌」という言葉もありましたが、そのあたりはどうですか。

ちょっと辛いシーンなんかもありますが、なんていうか、人間というものを感じさせてくれる作品だと思うんですね。自分の過ちを見つめ直して、現実を乗り越えていく素晴らしさというか。加害者、被害者、それを証言する人、そこにも人間ドラマがあるんです。

どのキャラクターにも感情移入できる物語になってますし、最後に勇気を与えてくれるような作品に仕上がったと思ってます。もちろん事件の解明や人間模様の謎解きなんかもあって、本当に見どころがたくさんある。いいエンタテインメント裁判ドラマに仕上がったと思います。

──裁判員制度はまさに令和版『事件』ならではのシーンですが、驚きながら、怖がりながら一般の方が参加している。そういうシーンを丁寧に描いているのは、まさにこのドラマならではですね。

ある意味、人を裁くわけですからね。弁当を食べながら話してるんだけど、その一方で人を裁く重さは誰もが感じていて。普段、視聴者のみなさんが体験できないことを疑似体験できるというか、そういったシーンも結構ありますから、そこも楽しみにしていただきたいですね。

WOWOW『連続ドラマW 事件』

同ドラマは、8月13日・夜10時からWOWOWにて放送・配信スタート(全4話/第1話無料放送)。出演者は椎名桔平のほか、北香那、望月歩、秋田汐梨、高橋侃(なお)、ふせえり、貴島明日香、中村シユン、仁村紗和、入山法子、堀部圭亮、いしのようこ、永島敏行、髙嶋政宏ら。

WOWOW『連続ドラマW 事件』

原作:大岡昇平『事件』(創元推理文庫刊)
監督:水田成英
出演:椎名桔平、北香那、望月歩、秋田汐梨、高橋侃、永島敏行、髙嶋政宏、ほか

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