藤竜也とコンビ最終章、三原光尋監督の映画「高野豆腐店の春」

2023.8.13 06:30

1964年京都生まれ、現在は大阪芸術大学映像学科の特任教授も務める三原光尋監督

(写真6枚)

◆「歳を重ねて、どんどん研ぎ澄まされている」(三原監督)

──主人公の仕事をお豆腐屋さんにしたのは、どこからの発想だったのですか?

僕が今住んでいるところは、駅に向かう途中に商店街があって、朝の4時半とか5時ぐらいに僕が眠い目をこすりながら歩いていくと、商店街で1軒だけ開いている店があって、それがお豆腐屋さんなんです。年配のご夫婦が2人でされていて、前を通ると豆乳のいい匂いがする。

2人ともきびきびと働いておられて、たまに買ったりすると気持ちよく「ありがとうございます」と言ってくれる。なにか、生き方としてきれいだなと思ったんです。それで、これを藤さんにやってもらえたら素敵だなと。

頑固な父と出戻りの娘で営む「高野豆腐店」 (C)2023「高野豆腐店の春」製作委員会

──劇中でも、お豆腐を作るシーンはとても丁寧に撮られていますね。

お豆腐って、水と大豆とにがりだけの、とてもシンプルな食べ物。でも、それだけに奥が深い。それもなにか藤さんと重なる気がしたんです。藤さんは映画史に残る作品に多数出演してこられた名優ですが、歳を重ねて逆に引き算というか、演技も人としての在りようもどんどん研ぎ澄まされているように感じて。

──そして今回、明るくて気立ての良い娘・春役を麻生久美子さんが演じられていて、藤さんとの父娘のシーンがどれもいいですね。

藤さんも今多くのインタビューで、娘役が麻生さんでほんとによかったとおっしゃってますが、僕も、2人のおかげでシナリオの行間がとても豊かに広がったと思っています。夜の商店街を2人が並んで帰っていくシーンなどを観れば、そのことを感じてもらえると思います。

それに2人が豆腐をつくる工房でのシーン。観た人からは、よく粘っていいカットを撮りましたねと言われるのですが、実はほとんどワンテイクなんです。2人の呼吸が初めからぴったりで、演出することなく、ただ目の前で起っている現象をフィルムに収めている、そんな感じでした。

映画『高野豆腐店の春』のワンシーン (C)2023「高野豆腐店の春」製作委員会

──麻生さんのキャスティングはどのようにして決まったのですか?

役柄に合った年代で映画を大切にしてくれる女優さんは誰か、とプロデューサーと話し合って、それは麻生さんだろうと。現場でも麻生さんと話していると、女優さんとして以上に、人間としてとても素敵な方なんです。知的で柔軟な人となりが伝わってくるんです。

映画『高野豆腐店の春』

2023年8月18日公開
監督:三原光尋 
出演:藤 竜也、麻生久美子、中村久美、ほか 
配給:東京テアトル

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