藤竜也とコンビ最終章、三原光尋監督の映画「高野豆腐店の春」

2023.8.13 06:30

1964年京都生まれ、現在は大阪芸術大学映像学科の特任教授も務める三原光尋監督

(写真6枚)

◆「ほかの俳優さんだったら、説教くさくなっちゃう」(三原監督)

──この映画にはもうひとり、重要な役柄の女性が登場します。中村久美さんが演じている、藤さんのほのかな恋の相手です。こういった役柄の女性は前の2本にはいませんでした。なぜ新たに設定されたのでしょうか。

藤さんが演じる主人公も、中村さんに演じてもらったご婦人も、これまで多くの苦労をして、懸命に真っ直ぐ生きてこられた方たち。こういう人たちにはいくつになっても素敵な出会いがあっていいんじゃないかと、そんな気持ちですね。今回、藤さんと中村さんには、10代の「きらきらデート」と同じことをしてもらいました。いくつになってもきらきらしていいんです(笑)。

辰雄(藤竜也・右)と親しくなる婦人・ふみえ(中村久美) (C)2023「高野豆腐店の春」製作委員会

──中村久美さんといえば、NHKのドラマ『夢千代日記』(1980年)での、吉永小百合演じる主人公の妹芸者役で注目されましたが、映画ファンには1984年の橋浦方人監督作品『蜜月』での鮮烈な印象があります。

中村さんも、麻生さんと同じように映画女優としての存在感があって魅力的でした。今回は、ご本人の印象とちがって少し「老け」のお芝居なんですが、とてもうまく、また上品に演じてもらいました。

──先ほどからうかがっているように、こういった役柄の女性を登場させるなど、これまでと違う藤さんの一面を出そうというのはわかるのですが、一方で、これまでと同じ藤さんを見せてくれているところもあります。

そうですね。

──頑固な職人気質あるところもそうですが、中村さん演じる女性の生きようとする意志を、身内の者が茶化すようなことを言ったときには、声を荒げて抗議するとか。そこには主人公の、前向きに生きようとする者への圧倒的な肯定があります。

藤さんのお芝居を観ていると、そういった一面をどうしても撮りたくなっちゃうんです(笑)。ほかの俳優さんだったら、下手をすると説教くさくなっちゃうと思うのですが、藤さんだとそうならずに、ほんとにそうだよなって思わせる説得力がある。これも藤さんの大きな魅力のひとつだと思います。

──藤さんはやっぱりかっこいいです。最後に作品への思いを聴かせてください。

藤さんとの3部作最終作で思い入れがあるのはもちろんですが、それとは別に、僕自身がコロナ禍で、自分が映画を作る意味ってなんだろうと自問自答しながら撮りあげた作品です。これまで出会ってきた多くの人との「ご縁」が作らせてくれたとも思っています。多くの人に観ていただいて、返ってくる声を真摯に受け止めたいと思います。

映画『高野豆腐店の春』

2023年8月18日公開
監督:三原光尋 
出演:藤 竜也、麻生久美子、中村久美、ほか 
配給:東京テアトル

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