姫路に88歳のおじいちゃんドクター、専門は「おもちゃ」の修理

2023.8.29 07:30

「姫路市立面白山児童センター」(兵庫件姫路市)で「おもちゃ病院」の院長を務める吉田清彦さん(88歳)

(写真5枚)

兵庫件・姫路市の「おもちゃ病院」(姫路市立面白山児童センター)に、18年間「おもちゃドクター」として子どもたちのおもちゃをボランティアで修理してきた吉田清彦さんがいる。これまで直したおもちゃは3920個以上。2024年3月に引退する吉田さんに、長く続けてきた活動への想いを聞いた。

■ きっかけはテレビで見た「おもちゃを直す人」

吉田さんがおもちゃ病院の院長になったのは、2005年、69歳のとき。オモチャを直す人をテレビで見て、知人に「あんなことしてみたいんや」とつぶやいたところ、同センターに孫と通っていたその知人が、当時の所長に吉田さんのことを話し、「おもちゃ病院」が開設されることになったという。

「おもちゃ病院」と吉田さん

吉田さんの記憶にある最初のおもちゃは、空襲のあとに落ちていた歯車などを拾ってつくった車で、当時は今のようにおもちゃで溢れていない時代だった。おもちゃドクターをするまでおもちゃを修理したことがなかったものの、大工の父親を持つせいか、ものづくりは好きでずっと手を動かしており、本職に就く前は、自動車部品関連の仕事をしていたそう。

■ 問診票を書いて修理スタート「その日に直るで」

最初のおもちゃ修理は2005年5月19日受付の「電車」で、問診票の症状欄には「電池を入れると動くのですが、電源OFFができません」と書かれていた。

問診票はすべて吉田さんの手書き、手前にあるのは初めて修理した「電車」

「一番最初に来たおもちゃがそれやったんや。プラスやマイナスのドライバーがあるやろ、あれにY型があるんや、(当時は)知らなんだ。大きなホームセンターに探しに行ったらあってな、買うて直した」と、一番思い出に残っていると吉田さんは振りかえる。今も作業場には、そのときに買ったY型のドライバーが並んでいる。

道具はすぐに手に取れるように手作りの棚に

最初の修理では見たことのないドライバーに驚いた吉田さんも、多くのおもちゃを修理する経験を積んだ現在では、預かった時点で修理すべき箇所が分かるそうだ。

「おもちゃを預かったら、あくる日には直して持ってくる。たいがいその日に直るで」と自信を見せる。

無い部品は作ることもあるという吉田さんに、直せないおもちゃはあるのだろうか。「直らんおもちゃは、基盤が傷んだやつや。基盤さえ直せたら・・・100%直せるかはわからんけどな。ラジオ組んだりしよったから、ある程度は電気もわかるけど、基盤だけはしゃあない」と悔しそうに話す。

■ 「おもちゃが直ったらうれしくてな」

7月5日、吉田さんの88歳の誕生日には、同センターで「感謝祭」がおこなわれた。普段おもちゃ修理の受付と返却は児童センターでおこない、吉田さんは自宅のガレージの作業場でおもちゃを修理しているため、修理を依頼した子どもたちに会う機会がなく、感謝祭で「直接ありがとうと言ってもらってうれしかった」と目を細めた。

自身の作業場でおもちゃと向き合う吉田さん

院長になってから18年、「おもちゃほどようけ種類があるものないんちゃう。おんなじおもちゃが来ることはあるけど、今でも見たことないものもようけあるわ。おもちゃが直ったらうれしくてな、ボケ防止でいいんや」と長く続けてこられた理由を回想する。

大事にしていたおもちゃが直った・・・そんな体験をした子どもたちは、ものを捨てる前に「直せないかな?」と立ち止まることが出来るかもしれない。「(おもちゃドクターを)明日辞めるかもわからんで」と笑う吉田さんは、使いやすく整えた作業場で引退までおもちゃを直し続ける予定だ。

取材・文・写真/太田浩子

おもちゃ病院

住所:姫路市立面白山児童センター(兵庫県姫路市神子岡前3-8-1)

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