奈良公園の鹿、記録的猛暑で木陰にギュッ! 水辺で涼む姿も

2023.8.20 08:00

連日猛暑下の7月、木陰で涼む奈良公園の鹿

(写真3枚)

「世界気象機関(WMO)」が「2023年7月は観測史上もっとも暑い月になる」と示した通り、連日猛暑が続いている。例年よりも過酷さを増す今夏、野生動物でありながら人の暮らしと密接な関係にある「奈良公園の鹿」が今どのような状況であるのか?

■ 過去には熱中症の鹿のニュースも…今年の状況は

奈良公園の⿅の保護育成や調査研究、⽣息環境保全活動などに携わる「奈良の鹿愛護会」から2019年夏、初めて「熱中症になった鹿を確認した」とのニュースがあった。その鹿は、人間なら意識を失って救急搬送されるほどの重症だったという。

今年の酷暑下では、さぞ熱中症の鹿が多かったのでは?と思ったが、愛護会によると意外にも現時点では熱中症にかかった鹿の報告はないとのこと。

同会の石川周さんは、「ニュースになった鹿は高齢で弱って動けなくなり、炎天下にいて熱中症になってしまったのです。本来、暑い時は自ら木陰や水辺に入って涼んでいますので、奈良の鹿が暑さで倒れることは基本的にはありません」と説明する。

■ 気持ち良く水遊び、鹿だまり…奈良の夏の風物詩

奈良の鹿愛護会の石川さんは、「鹿は泳ぎが上手なので、水辺でも大丈夫です」と説明する

記録的な猛暑であっても、野生動物として普段と変わらぬ暮らしを続ける奈良公園の鹿。灌漑用のため池が多い奈良ならではの「夏の風物詩」として、奈良公園内の東大寺大仏殿近くにある大仏池や浮見堂がある鷺池(さぎいけ)などで気持ちよさそうに泳ぐ姿が見られる。

ほかにも、奈良国立博物館前の通気口近くの芝生に多数の鹿が密集して座る姿が「鹿だまり」と呼ばれており、こちらも夏恒例の風物詩としてSNSで知られるように。はっきりとした理由は定かではないが、通気口からの冷気を求めて、集まっているといわれている。

また「鹿だまり」に限らず、大木の木陰に集団でのんびり涼んでいる姿もよく見かける光景だ。

■ 野生動物として「見守る」ことを基本に

このシーズン、愛護会には猛暑下の鹿を心配するあまり、通行人から「鹿がハアハアして夏バテしているようにみえる」「鹿にアイスを食べさせた人がいる」などの連絡が来ることも。基本的に奈良公園の鹿は、芝などを主食としており、鹿せんべい以外の食べ物を与えるとお腹を壊す原因になることもあるため、いくら暑そうに見えてもアイスやジュースを与えてはならない。

「連絡があれば、必ず様子を見に行きますが、吐いたり衰弱したりしていない限り、あくまで野生動物として対応し、必要以上に手を出さず、『見守る』ことを基本にしています」と石川さん。鹿は自身の身体に正直で、猛暑や厳冬など、どのような環境下でも、野生としてある程度自身で対処するという。

石川さんは、「むしろ、猛暑下で鹿せんべいを夢中になってあげている人間の方が熱中症になるのではと心配しています。奈良公園を訪れる際は、鹿を見守って、いろいろなことに気を付けていただけたら」と呼びかける。

取材・文・写真/いずみゆか

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