裁判のための治療と被害者への補償、京アニ事件が残した課題

2023.8.31 10:00

京アニ事件・青葉真司被告の主治医を務める上田敬博教授 (C)カンテレ

(写真2枚)

京都アニメーション放火殺人事件の青葉真司被告の主治医を務める上田敬博教授らに密着したドキュメント番組『ザ・ドキュメント 猛火の先に~京アニ事件と火を放たれた女性の29年~』(カンテレ)が9月1日に放送される。

この京アニ事件は、アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』や『けいおん!』、劇場アニメ『映画 聲の形』や『たまこラブストーリー』で知られる京都のアニメ制作会社「京都アニメーション」で発生した放火殺人事件で、青葉被告を含む70人が死傷。戦争を除いて、明治時代以降の事件において日本で最多の犠牲者を出した。

番組は、全身にやけどを負った青葉被告の主治医をつとめた鳥取大学医学部附属病院の上田敬博教授ら医療チームの4年におよぶ苦悩と道のりを追う。治療中を振りかえって、「絶命させたら遺族や被害者を落胆させてしまうと気負いがあった」と明かした上田教授は、9月5日から始まる裁判に対する思いを語る。

また、「京アニ事件は他人事ではない」と語る新全国犯罪被害者の会(新あすの会)の岡本真寿美さんにもカメラは密着。彼女は29年前、職場に乗り込んできた見知らぬ男にガソリンをかけられ放火され、全身の9割にやけどを負った。加害者は治療費を一切支払わず、岡本さんは400万円もの高額な治療費の請求に苦しんだ。「なぜ被害者が重い負担を強いられるのか・・・」と訴える。

被告を裁判に向かわせるために治療した上田教授ら医療チームと、被害者の補償制度を整えようとする岡本さんへの取材を通して、番組では加害者・被害者にまつわる日本の課題を考える。

ナレーションは、『チーム・バチスタシリーズ』で主演をつとめた俳優・伊藤淳史が担当。「人の命を救うという、『医師としてすべきこと』に全力を尽くした彼らは何も悪くないのに、今も悲しみや苦しみを抱えています。事件に関わったさまざまの立場の人の複雑な思いを心に刻んでもらえたら」と語り、「一番ケアをされるべき被害者にここまで補償がされていない現実に驚きました。被害者に対する救済が見直されればと思いました」と願う。

同番組は、9月1日・深夜1時25分から放送される(関西ローカル)。

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