【どうする家康】朗らかなキャラ・旭の心境を知りSNS感涙
松本潤主演で、徳川家康の人生を描く大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。9月3日の第34回『豊臣の花嫁』では、秀吉の妹で家康の正室となった旭が初登場。その明るさと悲しさのギャップに視聴者は魅了され、思いがけない同情と応援の言葉がSNSに相次いだ(以下、ネタバレあり)。
■ どうする家康、女は男の駆け引きの道具か?
家康を上洛させ、自分の臣下と認めさせようとする豊臣秀吉(ムロツヨシ)は、家康に今は正室がいないことに目をつけ、妹・旭(山田真歩)を夫と離縁させ、家康に嫁がせることにする。兄に似て陽気で話し上手な旭は、家康の母・於大(松嶋菜々子)や側室・於愛(広瀬アリス)ともすぐ打ち解けるが、それでも家康は上洛しようとしなかった。
ついに母・仲(高畑淳子)も人質に送ると言い出す秀吉。それは旭にとって、自分の役目を果たせなかったことを意味し、ひそかに悲嘆に暮れる。於大に、「人を思いやれるところがそなたの取り柄と思うておった。おなごは男の駆け引きの道具ではない!」と一喝された家康は、旭につらい思いをさせたことを詫び、上洛することを告げるのだった・・・。
■ 朗らかなキャラである一方、緊張と心細さも
豊臣秀吉が天下一統を目指すなかで、犠牲となった人は数多いが、そのなかでも秀吉の冷血ぶりを示すエピソードとしてよく知られるのが、妹・旭の扱いだ。家康との政略結婚のためだけに離縁させられ(ちなみに元夫は自害したとの説も)、家康に嫁いでもすぐに夭折してしまう悲劇の女性として歴史に残ることになってしまった。
さて、34回で登場した「どう家」版の旭は、まずは愛想を振りまいている兄を思わせるような、非常に朗らかでひょうきんなキャラとして登場。これにはSNSも、「旭姫、悪い人ではない。てか楽しい人じゃないの」「気品はないけどいい娘やん」「方言もかわいい」「今までの旭のなかで一番好き」など、たちどころに好意的な言葉が並んだ。
しかしこの明るさが、実は人質として送られた緊張と心細さの裏返しということを、山田真歩が巧みに演じてみせた。特に於愛から「母上が参られる」と聞かされたとき、一瞬悲壮な表情を見せて、すぐにいつもの調子に切り替えた演技。於愛や於大の方でなくても「あ、無理してんだな」と、その複雑な心境が無言で伝わったことに感心せずにいられなかった。
SNSでも、「旭さん、かか様を守るために我慢して徳川にきたのに」「今年の大河、女性のたくましさや悲哀を描いているので、旭様の状況と心情を考えると本当に辛くて! 涙ボロボロだった」「旦那さんと別れさせられたりよくわからん国に嫁がされたり兄には役立たず扱いされたり。旭さんの苦悩を思うともらい泣きするわ」という同情の声があふれた。
■ 母の叱咤でやさしい心を取り戻した家康
そんな旭を家康は、当初秀吉の対抗心から大事にすることはできず、ついには母・仲もふくめて「姥捨山」と言い出す始末。これにバシッ! と物申したのは、かつて「家のためなら妻子も捨てろ」という戦国マインドで視聴者を震撼させた於大の方だった。「おなごは道具ではない」という言い方は、先の言葉と矛盾しているようだが、相手から送られた人質は物ではなく心を持つ人なのだから、相当の思いやりを持て・・・という意味だろう。
これにはSNSも、「女性が政治の道具であることは事実だけど、せめて『意味のある道具』にしろって話よね。そこに敏感なのが道具として生きてきた於大さま」「根底にあるのはこういうやさしさなんやな。殿の母上さまや」「国と家臣のために妻子は捨てろって言ってた頃から月日は流れ、状況も人も変わったんだな」など、さまざまな意見が並んだ。
そんな母上の叱咤と、瀬名の「天下取り」の呪縛が解けたこともあり、最後は旭にやさしい言葉をかけることができた家康。SNSも、「あぁ、やさしくて思いやりの深い殿が帰ってきた」「兄・秀吉が人として扱わなかった旭を、家康が人として扱うのにぐっとくる」「虐げられている者にも思いを寄せられる。いよいよものほんの『神の子』となりつつある」「神の君リスタート!」という、喜びと励ましの言葉が相次いだ。
私の記憶にある限りだが、これまでは不幸せが豪華な着物を着て歩いているようになるか、逆にコメディリリーフ的に扱われるか、の両極というイメージがある旭。この「どう家」版の旭のように、希望のある描かれ方をするのは珍しいのではないか。この先どこまで登場するかはわからないが、願わくばこのまま徳川家を明るくするキャラクターを貫いて、生涯を終えてほしい。
『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。9月10日は放送休止で、17日放送の第35回『欲望の怪物』では、上洛した家康が秀吉から大歓迎を受けると同時に、のちに日本を真っ二つにする大戦を起こす相手・石田三成(中村七之助)との出会いも描かれる。
文/吉永美和子
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