齊藤工監督「窪田正孝さんと芦澤さん、この2人が条件だった」
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『スイート・マイホーム』の齊藤工監督(左)と映画評論家・ミルクマン斉藤
◆「蓮佛さんの表情を客席に浴びせたい」(齊藤監督)
──なるほど。
役者さんに「こういう風に演じてくれ」と、わりと解像度の高い演技を最初からオーダーしちゃうと、そこに囚われた状態の人間がただ現場にいるだけになるというか。僕が役者をする場合でもよくあるんですけど、それでよかった試しがないんですね。
なので、各部の方たちには、その職業に就いた頃の好奇心とかプロとしての挑戦を、この現場ではどうぞ遠慮なくやってください、と最初にお伝えしました。特に照明部さんはいろんな試みをしてくれましたね。やりすぎなときは話し合って、もうちょっと引き算しましょうか、とか。それはそれで健全かなと思いました。
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──いわゆるホラー的な照明は要所要所で出てくるだけで、やり過ぎない感じがすごく良かったですね。不穏な空気が漂い始めるなか、日常的な風景というか、例えば網焼きの鯵が煙り出したり、白子を引きずり出したり、そういうシーンで気味悪さを増していく。
そうですね。あれは、フルーツ・チャン監督の香港映画『三人の夫』(2019年)の冒頭にアワビが焼かれている描写があって。あれいいなと思って。原作にはないシーンなんですけど、白子をひとみ(蓮佛)が捌くっていうのは、さっきの男性性・女性性というのではないですけど、象徴になるなと。あと、焦げる。そういったところは嬉々としてやってました。
ただ、(ベテラン美術監督の)金勝浩一さんにお願いしながら、結実しなかったシーンもあって・・・。過去に人を殺めた経験のあるキャラクターの背景には、十字架を背負ってもらっているんですね。だから、最初のアパートや日本家屋も無理やり十字架にしてもらったんですけど、誰一人として伝わっていないっていう(笑)。
──私も正直、気づきませんでした(笑)。
そこはもう少しシンボリックに描いても良かったのかなぁと。映画『昼顔』(2017年)で、まさに十字架を背負うという西谷弘監督の演出があって、それを素晴らしいなと思って引用したんです。準備期間はたくさんあったので、こういうのがやりたいと金勝さんにはオーダーして。
でも、その伝え方の塩梅というのは、引きすぎても伝わらないし、露骨にしすぎてもなんか冷めてしまう、そのあたりは難しいなと思いましたね。でも、そういったロジカルなものを細やかに伝えたいというよりは、最初にお話ししたように「人の顔」を描くことで「家の顔」を描くべきというのはありました。
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──なんといっても「家」がタイトルに冠せられていますもんね。ところで奈緒さん、近年めきめきと頭角を現していますが、彼女のキャスティングはどこから?
倉持さんの劇団の主演をされてたんです。その舞台を見て、奈緒さんなら演じ切ってくださるなと。原作だと年齢がもうちょっと上ですし、舞台では学生の役だったんで、原作との整合性はなかなか合いずらかったんですけれど、そういったものをすべて超越したなにかがある。
で、存在の引き算というものが重要で、ネタバレになるので詳しくは言いませんが、その存在感の匙加減というか、別に僕がオーダーしたわけじゃないんですけども、奈緒さんの表現の塩梅みたいなものが実に見事だったなと、仕上げのときに痛感しましたね。
──このところの奈緒さんの出演作を観てると、こいつちょっとヤバいぞ、っていうのがあるじゃないですか。女性の心理的な動機を描いている映画なので。奈緒さんも然りですが、蓮佛さんもとてもいい。最後、あの表情を見せるに至るというのはなかなかです。
そうなんです。今回の映画では、「目」と「蜘蛛」と「十字架」というのが、僕のなかにキーワードとしてあったんです。あの蓮佛さんのあの表情で最後、観客と目が合うというのが重要で。名前も「ひとみ」ですしね。
『殺人の追憶』(韓国の傑作サスペンス映画)のソン・ガンホじゃないですけど、最後にカメラ目線が来るというような、異常性を意識してああいうラストにしました。観客を見つめて欲しかったんですよ。窪田さんがそのリアクションをしてくれているけど、あの蓮佛さんの表情が出てる理由を客席に浴びせたいと。それって、狙ってできることではない気もしていて。
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