詐欺師を演じた安藤サクラ「迷いなく演じられる役が稀にある」

2023.10.7 08:00

映画『BAD LANDS バッド・ランズ』の原田眞人監督(左)と主演の安藤サクラ

(写真6枚)

◆「生き生きとしたセッションができた」(安藤)

──原作の主人公は橋岡という男性ですが、ネリという役名に込められた思いを教えてください。

監督「ネリというのは、ドストエフスキーの『虐げられた人びと』に登場する少女(ネリー)の名前なんです。さらに、そのネリーを下敷きに作られたのが、黒澤明監督の『赤ひげ』(1965年)に登場する少女・おとよで、いわば不幸を背負った少女の系譜なのです。ただ、僕のネリはそうじゃない。不幸の連鎖を闘って断ち切って強く生きる、そんな女性にしたかった。これまでの薄幸な少女たちの無念を晴らす女性です。だから、現場で力強くネリを演じている安藤サクラを目の当たりにして楽しくなりましたよ」

安藤「私も迷いなくネリを演じました。こういう迷いなく演じられる役というのが、稀にあるんです。頭で考えると不安要素もあったのですが、出会った感覚を信じて演じたらまったく迷わなかったですね」

安藤サクラが演じた主人公・ネリ ©2023「BAD LANDS」製作委員会

──ジョーを演じられた山田さんとのコンビネーションはいかがでした?

安藤「初めて顔を合わせてのホン(脚本)の読みときから、『あ、めっちゃジョーだな』と思いました。彼も迷いなくジョーになっていると。それだけ、ホンがしっかりできていたと言うか、作品の土台ができあがっていたということだと思います」

監督「彼女と涼介は現場では常にネリとジョーになっていて、アドリブも関西弁で入れてくるんです(笑)。最初は2人が関西出身ではないことを心配していたんですが、才能ある俳優たちにとって、どこの出身であるかなんて問題じゃない、言葉の問題も杞憂に過ぎないというのを改めて思いましたね」

──確かに、おふたりのやりとりはごく自然で、それこそちょっと訳アリなんだけど、間違いなく姉と弟になっていました。

安藤「私たち2人だけでなく、今回は現場に来ている俳優の誰も迷っていなかったように思います。だから、とても自由にセッションさせてもらったというか。緊張感はありながらも、伸び伸びとお芝居させてもらって。参加するまで『原田組は怖い』と聞いていたんですけど(笑)、原田組って楽しいなって思いました」

「才能ある俳優たちにとって、どこの出身であるかなんて問題じゃない」

──台本があまりにきっちりしていると俳優さんたちの自由が奪われるというか、束縛しかねないのではと思っていたのですが、実は逆なんですね。

監督「台本はあくまでも共通認識を促すためのもので、現場では俳優さんたちの生理の方が断然重要です。現場では俳優さんたちによって、台本をもっともっと分厚くなるように肉付けしていってほしいんです」

安藤「今回は、その肉付けする前のベースがとても高度だったので、俳優たちの芝居も気合が入ったし、より自由で生き生きとしたセッションができましたね」

監督「2人の周りを、生瀬勝久さんや宇崎竜童さん、サリngRockさん、それに天童よしみさんと、関西にルーツをもつ人たちで固めたアンサンブルもうまく機能したと思います」

映画『BAD LANDS バッド・ランズ』

2023年9月29日公開
監督:原田眞人
出演:安藤サクラ、山田涼介、ほか
配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

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