女優デビューの元テレ東アナ・森香澄「キャラに迷走していた」

2023.10.26 08:00

ドラマ『たとえあなたを忘れても』に出演している森香澄(写真/Ayami)

(写真5枚)

アナウンサーとして在籍していたテレビ東京を2023年3月で退社し、その後、タレント活動をスタートさせた森香澄。そんな森にとって女優として初のレギュラー出演となるドラマ『たとえあなたを忘れても』(ABCテレビ・テレビ朝日系)が、10月22日よりスタートした。

ピアニストになる夢を挫折した河野美璃(堀田真由)と、記憶障害のある青木空(萩原利久)の恋愛模様を描いた同作。森は、美璃の音大時代の同期でプロのピアニスト・衛藤まりあを演じている。そんな役柄のこと、そして自身のこれまでの歩みなどについても話を訊いた(取材・文/田辺ユウキ)。

■「アナウンサーとしての経験が、自身の役柄に通じた」

──今回、演技初挑戦となる森さんですが、まりあを演じるにあたってどのようなことを考えましたか。

今まで、人がどういうものを抱えて生きているのか、あまり深く意識したことがなかったんです。でも、まりあを演じることになり、彼女はピアニストとして成功し、一般的には華々しく映り、悩みなんかないように見えるけど、「決してそうではないんだ」と、人間の感情の複雑さについて考えました。

まりあを通して、「自分とは違う人生を生きている人って、どういう風に悩みや葛藤を乗り越えるんだろう」って。ほかの人のことをどのように理解するか、その意識が今回の演技に繋がっていくと思いました。

ドラマ『たとえあなたを忘れても』で森香澄が演じる衛藤まりあ (C)ABCテレビ

──それこそ森さんも、周囲から見れば「アナウンサーとして成功するなど華々しい世界で活躍している」と思われているはずですよね。

確かに華やかな世界でお仕事をさせていただき、綺麗な衣装を用意してもらって、さまざまな芸能人の方とご一緒もしています。でもテレビ局に所属していたときは会社員でしたし、アナウンサーとしての自分の発言が局や番組の意見にもなるので、1つひとつの言葉に重みや責任を感じなければなりませんでした。自分1人の言葉ではない、という自覚を持たなければいけないので。

──華々しい世界の裏側で、そういった自覚をシビアに持つことが必要だったわけですね。

自分の言葉が、視聴者のみなさんたちにどのように伝わるのか。それは常に考えていました。そういう経験は今回のまりあにも通じています。第1話でも彼女は、美璃の苦悩を知り、仲良く接したいという気持ちもあるので、発言の1つひとつを慎重に選んでいますよね。「まりあはこういう言葉をチョイスして、美璃に伝えているんだ」と考えながら、台本も読んでいました。

アナウンサー時代を振りかえる森香澄(写真/Ayami)

──第1話では、そんなまりあの良かれと思って発した気遣いの言葉が、逆に美璃を傷つけてしまいます。

絶対にみんなが経験したことがあるような、人間関係のすれ違いが描かれています。ああいうときって、なんて声をかけたら良いんだろうって思います。すれ違いってこういうところから起きちゃうんだなと切なくなりました。人間関係のすれ違いって解決するのが難しいし、なにかきっかけがないと修復されない。話したり、会ったりするタイミングが来るのを待つしかないですよね。

──ピアノの演奏シーンもありましたね。森さんは小さいときからピアノを習っていらっしゃったそうですが。

まりあはプロのピアニストなので、演奏曲の難易度がすごく高いんです。その練習が大変でした。しかも、大きなホールで演奏し、美璃の心も動かさなきゃいけない。演技をするうえで気をつけたのは、できるだけ大きく見えるようにすること。動きではなく、まりあの存在自体が大きく見えるように意識しました。

自信に満ち溢れていて、ピアニストとして成功しているように見せる。そのためには迷いのない表情や動きをしなくちゃいけない。私がコンクールに出ていたのは学生の頃ですし、今は趣味でピアノをやっていて、人に見せる演奏をしたことはほとんどなかったので、プロの魅せ方を自分なりに勉強しました。

──まりあはピアノで自分の道を切り開いていきました。一方、美璃はそうはいかず、誰かに支えられてやっと前に進めるという感じですね。

誰もが、美璃、まりあのような側面を持ち合わせているはず。私は所属していたテレビ局を退社するときも、発表するまで誰にも言わなかったんです。

そういうところは、自分で道を切り開いているまりあタイプのように映るかもしれません。でもまったく不安がなかったわけではありません。退社することは1人で決めましたが、家族や信頼できる関係者の方にはやはり頼る部分が大きく、美璃に近いタイプでもあるんです。

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