奈良を堪能、初の「世界遺産6社寺」夜間特別参拝がスタート

2023.11.13 19:00

「古都奈良の文化財」世界遺産登録25周年を記念して、『秋夜の奈良旅2023』で初の 西ノ京エリア(薬師寺、唐招提寺)の夜間特別参拝が可能に

(写真9枚)

今年で4回目を迎える古都・奈良の秋の人気イベント『秋夜の奈良旅2023』が11月3日から25日までの間、毎週金・土曜日に開催中だ。例年とは異なり、奈良市の西部「西ノ京」エリアが大いに賑わっている。

「古都奈良の文化財」世界遺産登録25周年を記念して、『秋夜の奈良旅2023』で初の 西ノ京エリア(薬師寺、唐招提寺)の夜間特別参拝が可能に

■ 6社寺を時間内に参拝できる? 実際に体験

今年は、「古都奈良の文化財」(東大寺、興福寺、春日大社、春日山原始林、元興寺、薬師寺、唐招提寺、平城宮跡)が世界遺産登録25周年を迎えたメモリアルイヤー。それを記念して、2022年の春日大社、興福寺、元興寺の3社寺に東大寺、唐招提寺、薬師寺が新たに加わり、初の6社寺夜間特別参拝(予約不要)が可能になった。

昨年は約1万2500人もの人が訪れ、今年も開催前から注目を集めており、奈良市観光協会が同イベントにあわせて運行する「奈良若草山トワイライト・夜景観光バス」や春日大社大宮回廊内に約1000基ある釣燈籠への献灯体験はすでに全日満席状態になっている。

夕方5時30分から(東大寺と元興寺は6時)スタートし、受付終了の夜7時45分までの間に6社寺すべて特別参拝が果たして可能なのか? 地元の奈良市民である筆者が実体験してみた。

薬師寺「玄奘三蔵院伽藍」の平山郁夫画伯による『大東西域壁画』は、年に2回の特別公開時でも夜間参拝はできないので、今回の6社寺夜間特別参拝は貴重な機会。拝観料500円

まずは、本来であれば3月と10月の年に2回しか特別公開されない日本画家・平山郁夫(ひらやまいくお)による『大唐西域壁画(だいとうさいいきへきが)』が今回特別拝観できる西ノ京エリアの薬師寺「玄奘三蔵院伽藍(げんじょうさんぞういんがらん)」へ。

玄奘三蔵は、あの『西遊記』でお馴染みの三蔵法師のこと。なぜ薬師寺に三蔵法師が?と思う方もいるかもしれないが、薬師寺は、日本で一番古い宗派「法相宗(ほっそうしゅう)」の寺院で、法相宗の開祖・慈恩大師(じおんだいし)は、玄奘三蔵法師の弟子。そのため、法相宗の始祖といえる存在なのだ。

『大唐西域壁画』は、玄奘三蔵の唐からインドへのシルクロードの旅路を平山画伯が30年に及ぶ取材旅行を敢行し、4千枚を超えるスケッチを基に約20年かけて描いたという7場面・13壁面、全長49mの大迫力の超大作。親交が深かった同寺の高田好胤(たかだこういん)元管長との約束を守り、ミレニアムを迎える平成12年(2000)12月31日に奉納された。

平成3年に安置された玄奘三蔵訳経像と高田好胤元管長手による「不東」の扁額

薬師寺の安田奘基(やすだじょうき)師は、「玄奘三蔵様は夜に砂漠を旅したので、それにちなんでの夜間特別参拝です。高田元管長の手による『不東』には、三蔵様がインドに着くまでは一歩も東に帰るまいとした思いが込められているので、追体験していただければ」と語る。

5時半の開始時間から、途切れることなく、続々と多くの参拝客が訪れており、今回の夜間特別参拝のなかでも特に注目を集めているようだ。

この後に同じ西ノ京エリアの唐招提寺の金堂(国宝)の夜間特別参拝をあわせると、徒歩での移動時間を含め、同エリアの参拝には40分~1時間弱見込んだ方が良い。西ノ京から興福寺・春日大社・東大寺・元興寺がある近鉄奈良駅までは、途中の乗り換えを含めて近鉄電車で20~30分ほど(定期路線バスに加え、期間中の土曜日には世界遺産周遊バスが運行。JR・近鉄奈良駅まで約25分)。

近鉄奈良駅から興福寺中金堂→元興寺の国宝・極楽堂(本堂)→春日大社大宮・若宮→東大寺大仏殿と駆け足で周ってみたが、各社寺滞在時間が約5~10分程度でも、徒歩での移動距離が結構あるため、春日大社でタイムアップを迎えてしまった。ちなみに東大寺大仏殿の夜間特別拝観は無料なので、ぜひとも訪れたいところだ。

そのため、6社寺すべての夜間特別参拝で周るには、「金土で奈良に宿泊するのがおススメ」という、地元民としても喜ばしい結論が出た。

県庁所在地といえど、奈良市内の社寺周辺は灯りが少なく、都会暮らしだと味わえないであろう独特の暗闇と静寂を体験できる。昼間とは違う、夜間の静謐で荘厳な空気の中、社寺で心静かに神仏と向き合える貴重な機会だ。

奈良市内は近年、ホテルの開業ラッシュが続いており、新旧あわせてさまざまな宿が豊富。さらに、県内の多くの社寺で秘宝・秘仏の秋季特別公開もおこなわれているので、組み合わせて1泊旅行すると昼も夜も楽しめる充実の奈良旅ができるだろう。

取材・文・写真/いずみゆか

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