【どうする家康】秀頼の本性はどれ?家康もおそれた秀吉二世

2023.11.28 17:00

『どうする家康』第45回より、二条城に訪れるなり家康(右・松本潤)に声をかける秀頼(作間龍斗)(C)NHK

(写真5枚)

古沢良太脚本・松本潤主演で、選択だらけな徳川家康の人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。11月26日放送の第45回『2人のプリンス』では、家康が初めて豊臣秀頼と対面。家康を容赦なく振り回しに来る強キャラぶりと、あの事件の意外な発端に終始SNSが湧いた(以下、ネタバレあり)。

■ どうする家康、鐘の銘「国家安康 君臣豊楽」

成長した豊臣秀頼(作間龍斗)と、対面を果たすことになった家康。秀頼を「公家」として持ち上げることで、反発を招かないようにすることを、本多正信(松山ケンイチ)から提案されたが、秀頼は家康が自分を格下扱いしたかのように見せることに成功する。世間は一斉に家康に反発。家康は秀頼を「涼やかで様子のいい秀吉(ムロツヨシ)」とおそれを抱く。

この件以来秀頼の人気は高まるが、武力によって天下を奪還することにこだわる茶々(北川景子)は、再建中の方広寺の鐘の銘に、あえて「国家安康 君臣豊楽」という、豊臣が天下を取ることを宣言するような一文を残すことにする。それを知った家康は、戦をせずに豊臣の力を削ぐというやり方をあきらめ、再び戦を起こす覚悟を決めるのだった。

■ あえて下手に出てから報復、秀吉二世の片鱗

先週のコラムでも記したが、それこそ「頼りないプリンス」として描かれることが多かった豊臣秀頼。しかし近年は家康が恐れるほど優秀で屈強な人物であったことが有力視され、同ドラマ以外でもそういった人物造形がされるようになってきた。そしてこの45回では、ただ優秀なだけではなく、父・秀吉に通じる危うさを垣間見せたがために、戦う気のなかった家康の戦スイッチを押してしまうという、ある意味で地雷キャラ的な位置づけとなった。

『どうする家康』第45回より、上座を譲り合う家康(松本潤)と秀頼(作間龍斗)(C)NHK
『どうする家康』第45回より、上座を譲り合う家康(松本潤)と秀頼(作間龍斗)(C)NHK

まずは二条城での対面シーン。このとき秀頼が家康に上座を譲ったというのは有名だが、よく言われる臣下の礼ではなく、家康の世間の評判を落とすための罠を仕掛けたという展開に、SNSは「上座下座でこんな駆け引きする大河、見たことない」「家康がペース乱されてる。翻弄されてる。これは最強の秀頼さま」などの言葉が並んだ。

また、あえて下手に出ることで相手の反応を見て、最も効果的な方法で報復するやり方が秀吉そっくり! と思ったら、これにも「へりくだっておいて、実を取るのは、親(秀吉)譲りのやり口」「ムロ秀吉の老獪さを宿したイケメン秀頼とか強敵感が凄すぎる」「このドラマだと、秀頼は秀吉の再来=滅ぼさねばならないラスボスだよな」と同調する声があふれた。

『どうする家康』第45回より、家康(松本潤)を先に上座に座らせ、下座に落ち着く秀頼(作間龍斗)(C)NHK
『どうする家康』第45回より、家康(松本潤)を先に上座に座らせ、下座に落ち着く秀頼(作間龍斗)(C)NHK

しかし、もしこの秀頼が秀吉だったら、あえて自分から徳川を怒らせるような真似はせず、バカのふりして油断をさせて、家康が亡くなってから本性をむき出しにしていたように思える。実際にこの振る舞いゆえに、家康は再軍事化に走ることになってしまった。この秀頼の過ちは、江戸時代になっても「欲しいものは真正面から、力で奪うのが正義」という戦国時代マインドがまったく抜けない、茶々の教えに染まってしまったからだろうか。

SNSでも「茶々は柿が落ちてくるのをただ待ったりはしない。何せ彼女は、ホトトギスをも殺す信長の血筋」「待ってればよかったのにねぇ」「茶々は無意識のうちに、戦の象徴の全てを引き取り、滅びる運命を選択してしまっているのかも」と不安視する声が多数上がった。

■ 男版茶々&やさしい姿、どちらが秀頼の本性?

そうやって戦のレールが着々と作られるなか、ついに起爆剤として発動したのが「方広寺の鐘銘」事件だ。これは長年、大坂方を怒らせるために徳川の方からいちゃもんを付けたと言われてきたが、逆に豊臣の方からケンカを売ったのでは? という説も浮上。今回は後者が採用されたわけだが、この常に好戦的な姿勢の茶々&豊臣家臣団ならば不自然ではないというか、むしろ「そうだよねー、やるよね君たちなら」と腑に落ちた。

SNSでも「ただの偶然と言われてたけど、わざとやったことにしたのか~!」「豊臣側が家康を戦場に引き摺り出すために仕掛けた罠みたいになってて、なかなか斬新」「本作の茶々ならそうなるわなと。こうしなければ、家康本人への復讐を遂げることはできない」と、大河としては前代未聞の展開にも、納得するコメントが多数上がった。

『どうする家康』第45回より、方広寺の鐘の銘にあえて「国家安康 君臣豊楽」を選ぶ茶々(北川景子)(C)NHK
『どうする家康』第45回より、方広寺の鐘の銘にあえて「国家安康 君臣豊楽」を選ぶ茶々(北川景子)(C)NHK

茶々が初登場した時点で、最強(凶)のラスボスになるのは確実視されていたが、まさか秀頼までもが「男版茶々」とでも言いたくなるような存在となり、2倍の勢力となって家康に対抗してくるとは・・・。しかし一方で、家康の孫である千姫(原菜乃華)や猫にやさしさを見せる描写もあり、「茶々や家臣らが望む役割を演じているだけでは」という意見もあった。どちらが秀頼の本性かは最後までわからないが、どちらにせよ大河史上もっともしんどい気持ちになる『大坂の陣』となりそうだ。

なお問題の方広寺の鐘は、最後の紀行でも紹介された通り、現在も残っていて見学も自由。問題となった鐘銘もわかりやすくマーキングされているので、今の時分であれば、紅葉見物も兼ねて見に行ってみてはいかがだろうか。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。12月3日放送の第46回『大坂の陣』では、家康が豊臣家に出した要求を、茶々や大野治長(玉山鉄二)らが拒否。ついには14年ぶりの大戦『大坂の陣』への突入が描かれる。

文/吉永美和子

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