「僕らはテセウスの船」ジャンルレスバンド・odolの個性を探る

2024.1.27 13:00

odol(左から森山公稀、ミゾベリョウ/大阪市内にて)

(写真5枚)

歌詞を手がけるミゾベリョウ(Vo)、作曲を担当する森山公稀(Pf&Syn)を中心に2014年に結成された、福岡出身のジャンルレスバンド・odol(読み:オドル)。近年はradiko、森永乳業のCMソングを書き下ろすなど、精力的に活動している。

そして、2023年11月15日には約2年5カ月ぶりとなるニューアルバム『DISTANCES(ディスタンスィズ)』をリリース。JR東海「会うって、特別だったんだ。」のCMソング『望み』など、さまざまな角度から捉えた「距離」について描いた1枚となっている。

今回はミゾベと森山に、最新アルバムとodolの持つアイデンティティについてインタビュー。そこで分かったのは、サポートを入れることで新しいodolの美学を手に入れたこと。常に変化することに躊躇せず、今を楽しむという姿勢であった。

取材・文/マーガレット安井

■「サポートのおかげでアイデンティティを作り直すことができた」

──2021年にメンバーが卒業して3人体制となりましたが、そこから半年も経たずにEP作品である『pre』がリリース。「このペースなら早く、アルバムがリリースされるのかな」とも思っていましたが、『DISTANCES』はそこから2年かかりました。なぜここまで時間がかかったのでしょうか?

森山:『pre』をリリースしたときにはメンバーの卒業もあり、ネガティブに見えないよう、「大丈夫だよ。続けていくよ」という意思表示を形として出したかったから、最速でリリースしたんです。しかし体制が変わったことで、odolのアイデンティティみたいなものを若干見失っていて。

ミゾベ:うん。

森山:それまでは固定メンバーでバンドをやること自体がアイデンティティだった。しかし3人になり、「odolのコアな部分ってなんだろう?」と考えて。本作を制作して、メンバーが変わってもコアな部分は失われないと確信ができました。

──そうだったんですね。

森山:テセウスの船ってあるじゃないですか。全部の部品が置き換えられても、その船が同じものだと言えるのかというパラドックス。僕なりの結論は、同じであるために部品を変えてきたのなら同じ船だと考えていて、「odolもテセウスの船だな」と思っています。

──本作では多くのサポートメンバーを起用していますね。その方々が今のodolに与えた影響も大きかったと? 

森山:そうです。外部のミュージシャンたちと関わったことが、アイデンティティを見直すヒントとなりました。3人で自分たちの独自性を見つけようとしたが、らちが明かなかった。だけど、曲を作らざるを得ない状況で、サポートの方々の力が必要になった。

──なるほど。

森山:とは言え、メンバーと同じように、フルコミットで話し合うみたいなことをサポートミュージシャンには求められない。だから制作のなかで諦めざるを得ない部分も出てきて。僕のなかでodolのそれまでの美学を一度壊さなければならない状況に置かれた。だけど、それでバンドとして一度フラットな状態になり、一から自身の個性を作り直すことができたという感じです。

──10年やってきて、初めての試みでしたからね。サポートを入れてスタートしたときは、思うように進まなかったのではないですか?

森山:最初はめちゃくちゃ手間取りました。自分のやり方が通用しないし、それが普通であると気づかされました。例えば楽曲制作だと、今までならメンバーに「あとは自由にフレーズを考えて」と気軽に言えましたが、サポートの方にそれをお願いするのは難しい。だから譜面を書きました。odolの音楽をわかって欲しいと思い、細かく譜面に指示とかも記して。

「外部のミュージシャンたちと関わったことが、アイデンティティを作り直すヒントとなった」と話す森山

──でも、バンドマンのなかには譜面を読めない人もいますよね?

森山:そうなんですよ(笑)。レコーディングで「あれ、譜面を渡していたんだけど・・・」みたいになりました。そこから「odolの楽曲にそれぞれのサポートミュージシャンのお力を最大限貸してもらうにはどうしたらいいか?」ということをずっと考えていました。

──それはライブでも?

森山:今まではライブ前のゲネプロでたとえば1曲を10時間くらい、ひたすらやっていた。良くない部分があると、それが許せなかったし、修正しないと次に進めないと感じていた。でもサポートの方にはそれを求められない。ならばトータルで良い方を優先しようという考えになったんです。例えば長時間練習をしなければ解決できない部分も、アレンジを変えればそれで良くなることもある。それに場の空気感を悪くしないし、チームのムードを壊さなくても済む。当たり前のことですが、ようやくそういうことに気づきました。

ミゾベ:根底には問題をクリアしないと次に進めない考え方があるけど、どうしようもない状況みたいなのが増えた。それがodolにとってプラスに働いたのかなと思います。

odol ONE-MAN LIVE 2024 "DISTANCES"

日時:2024年3月31日(日)・18:00〜
会場:心斎橋LIVEHOUSE ANIMA(大阪市中央区西心斎橋2-10-21 スパジオビル B1F)
料金:前売5500円、学割4500円(ドリンク代別)

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