戦争の悲しみから歌で再起、茨田りつ子のフル熱唱の舞台裏

2024.1.10 12:30

慰問先の特攻隊に思いを馳せ、『別れのブルース』を唄うりつ子(菊池凛子)(C)NHK

(写真2枚)

1月10日放送の『ブギウギ』(NHK総合)第69話では、終戦後初めて日帝劇場で公演が開かれ、茨田りつ子(菊地凛子)が『別れのブルース』をフルコーラスで披露した。ステージ本番前、久しぶりにスズ子(趣里)と楽屋で再会したりつ子は、慰問先から戻ったら空襲で家が丸焼けになっていたと打ち明けた。

66話(1月5日放送)で、特攻隊の隊員の前でも『別れのブルース』を歌ったりつ子は、自分の歌が「死に征く」特攻隊員の突撃の後押しをしてしまうのだと悟り、泣き崩れていた。だからこそ69話のステージでの挨拶「このような日々が、どこまでも続いていきますように」が胸に迫る。この舞台シーンの撮影秘話を、制作統括の福岡利武さんに聞いた。

■「りつ子の思いを遂げるには、フルで歌わないと行きつかない」

福岡さんは、りつ子が特攻隊員の前で歌った66話の流れからの、69話のフル尺歌唱について、「戦争は終わったけれど、いろんな思いを引きずるりつ子、そして歌いながら新たに力をもらって立ち上がるりつ子を、脚本の櫻井剛さんにしっかりと書いていただきました。演出の盆子原(※編註 今週の演出担当・盆子原誠さん)の、『りつ子の思いをしっかりと遂げるには、フルコーラスで歌わないと、行きつかない』という考えがあり、この演出になりました。僕もまさにそうだな、と思います」とコメント。

「『別れのブルース』の歌詞は、男女の別れの話なんですが、いろんな別れに置き換えられますよね。69話での歌唱ではりつ子の『再出発への思い』まで持っていければいいな、と願って作りました」と、このシーンの狙いを明かした。

撮影中の様子については、「りつ子の万感の思いをこめた語りから曲が始まるので、なおさら感じ入るものがありました。観客役のエキストラさんも、撮影スタッフも、深く染み入って聴いていたのがとても印象的でした」と福岡さん。

日帝劇場の楽屋にて、りつ子(写真右、菊地凛子)と話すスズ子(左、趣里)(C)NHK

また、りつ子を演じる菊地凛子については、「本当にいい表情で歌い上げてくださって。特攻隊の前で歌うのと、戦後に日帝劇場で歌うのでは、同じ曲なのにまったく違って聴こえました。菊地さんご自身も、それぞれの舞台での思いの違いをしっかり感じてくださって、『ここに来ての、新たな出発への思い』がとても熱くて。日帝劇場のシーンでは2番になったらマイクをグッと握って、気持ちを込めて歌うなど、いろんなアイデアを持ってきてくださいました。本当にいいシーンになったと思います」と絶賛。

さらに、舞台袖でりつ子の歌を聴いていたスズ子が「むちゃくちゃよかったです!」と声をかけるシーンについて、「菊地さんが演じるりつ子の歌を聴いて、趣里さんが本当に台詞どおりの気持ちになられたようで、とても実感のこもった言葉になったのではないかと思います」と、撮影の裏側を明かした。

ドラマでは今後、スズ子、りつ子、そして『ブギウギ』の世界で生きる人々の、戦争の痛みから力強く立ち上がる姿が描かれる。

取材・文/佐野華英

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