今もっともチケットを取れない落語家のひとり、桂二葉の挑戦

落語家・桂二葉
『令和3年度NHK新人落語大賞』での大賞受賞をきっかけに、今や上方落語を代表する存在となった落語家・桂二葉。2023年には大阪・東京と2拠点での活動が始まり、『ぽかぽか』(フジテレビ・水曜レギュラー)や『探偵!ナイトスクープ』(ABCテレビ)などテレビでの活躍や、2023年7月には初の書籍『桂二葉本』を発売するなど、独演会のチケットが取れない演芸界屈指のニュースターに。そんな二葉に、2023年を振り返ってもらいつつ、2024年の新たな挑戦について訊いた。
取材・文/村田恵里佳 写真/高橋正男
◾️あのヒリヒリ感を一度味わってしまったら・・・
──2023年を振り返ってみて、現在の心境はいかがですか?
なんせ、「らくだ」をネタおろししたとき(2023年2月/『ABCラジオ 上方落語をきく会』@大阪「国立文楽劇場」)のヒリヒリ感以上のものがないから。それが困ってます。緊張感というか、こぅ、ギューッて(全力をふりしぼって)やらなあかん!みたいなことがあんまりない。ほんまは全部そのテンションに持っていかなあかんのですけど、なかなかできひんのが、あかんなぁ・・・と思ってます。

──「らくだ」は一席約50分もある古典落語屈指の大ネタ。あの日の「らくだ」は特別でした。700名以上いる観客が二葉さん演じる「らくだ」の世界にみるみる吸い込まれていくような、不思議な感覚がありました。
ネタおろしですし、聴く方も力がいる感じがしますよね。私自身はとにかく必死やったから。
──あれほど緊張感のある舞台はご自身にとっても稀なんですね。
だから、ほんま麻薬なんです。あのヒリヒリ感を一度味わってしまったら、独演会であっても自分ではなんか頼んない。ウケててもウケてない感じがする。
──でも、昨年末に出演された東京「新宿末廣亭」は刺激的だったと。
そうなんです。神田伯山先生の芝居。伯山ティービィー(講談師・神田伯山さんによるYouTubeチャンネル『神田伯山ティービィー』)にも上がってましたけど、あのときはめちゃくちゃ緊張して。こぅ、失敗できない怖さに緊張するっていうか。たまらなかったですね。心がすごく健康になりました。スリリングな感じが楽しかったです。
◾️「生の落語」を大切にする気持ちは変わらない
──2023年はテレビのレギュラー番組2本が始まった年でもありました。これまで二葉さんは「生の落語」に何より重きを置いてこられたと思いますが、今後、落語とテレビのお仕事でバランスの変化がありそうですか?
やっぱり、落語をすることが一番や思てます。
──心変わりすることもあると思うのですが。
いや、それは絶対に変わらへん。ほんま。とにかく、いい落語をするために。そのことはやっぱり一番に考えます。テレビを見て、「初めて落語会に来ました」って言うてくれるお客さんが結構いてくれはるんですよね。特に若い女の子が多いんですけど。

こないだも「ばばん場」っていう高田馬場にあるちっちゃい小屋(演芸場)で落語会があって。終演後、急いでたからタクシーに乗って駅まで行こうと思ったら出待ちしてくれてるお客さんがいたんですね。で、「JR高田馬場駅まで行くんですけど、良かったら乗りません?」ってお誘いして。あと3人乗れるから。一緒に乗ったんはみんな女の子で、ひとりの25歳の女の子は「『ぽかぽか』見て来ました」って。変わってるなぁ、って言うときました(笑)。
──落語好きの方ではなく?
全ッ然! でも最近もどかしいのは、そうやってテレビ見て来てくれはる場合に、独演会じゃないパターンがある。たとえば演者が数名いる落語会やと、私は1席しかできへん。そうなると掴みきれへんのです。一番手がギャーン! と派手にやった後は、ちょっとおとなしいネタがいいかな? とか、全体的なバランスを考えるから。お客さんの心を掴み取るのが難しくて、力不足ですごい悔しい。私、戦国武将なんで。
──(笑)。二葉さんは観客の心をすべてかっさらいたい人。できれば心臓を鷲掴みにしたい。
そうなんです(笑)。だから、すっごい悔しいんです。独演会で3席やる方がよっぽど気持ちが楽というか。基本的に、いつも100%私を好きになって欲しい! という気持ちでやっているので。1席だけとか、ほんまは苦手。でも、落語を広く知っていただくためには、「こんな噺家もおんねんや!」とか「こないだ別の噺家が演じる同じ演目を聴いたけど印象が違うな」とか、いろんな演者や落語を観ていただく面白さもある。だから、難しいところなんですけど。
◾️「天満天神繁昌亭」で深夜寄席はじまる!?
──今年、新たに挑戦されることはありますか?
蓮二さんの会(演芸写真家・橘蓮二さんプロデュースの落語会シリーズ『桂二葉 チャレンジ!シーズン2』)で4席ネタおろしをする、っていうのが今年の大きなチャレンジやと思うんですけど。そこで「たちぎれ線香」をやる。

──「たちぎれ線香」は上方落語のなかでもとりわけ偶像視されてきた、と桂米朝師匠がおっしゃったほどの大ネタであり、人情噺ですよね。
私にとっては、どこも共感できない噺(笑)。噺家になって12年間、「たちぎれ線香」の文句ばっかり言ってきましたけど、やらずに文句言うのは卑怯やなと思ったんで。行ってないお店をやいやい言うてんのと一緒で。「×××」なんて、おいしくないやろ! って、行ってもないのに言うのは本当に失礼な話やと思うから、まずは行ってみる。行ってから文句言う。そういうことと一緒で(笑)。
「たちぎれ」も、やっぱりやらないと。でも私の場合、(登場人物の心情に)どこか共感できないと演じることが難しい。どこかに寄り添えるところがないとあかんなって思うから、なんとか見つけ出したい。どんな感じでできるか?それが楽しみですね。
──最近は東京でのお仕事が活発になり、関西のファンとしてはやや寂しい気持ちです。上方で定期的に二葉さんの落語を観られる機会がないなぁ・・・と。
それは私もめちゃくちゃ気にしていて・・・。だから今年は、「繁昌亭」(「天満天神繁昌亭」)で(自主企画の)落語会をやれたらなって。たとえば、深夜寄席とか。夜席の後、夜9時半頃から始まる1時間ちょいの、寄席形式の落語会。
──いいですね! 夜ごはんを食べてから観に行けるのもうれしいです。二葉さんとしては、関西で落語をもっとやりたい気持ちがありますか?
もちろん! ほんまは、繁昌亭の昼席にもっと出られるようになればうれしいです。
──ほかにもご自身でやりたい企画はありますか?
京都「南座」で独演会をやりたいです。あとは『じゃりン子チエ』の作者、はるき悦巳先生とコラボしたいなぁ、とずっと思っていて。できれば、公演ポスターを描いていただいて。私をチエちゃんテイストで(照笑)。で、チエちゃんのどこかのエピソードを落語でやる、とか。原作そのままを落語にできたらなぁって。やるなら「繁昌亭」で。入口でホルモン焼いてる匂いを流すとかもいいなぁ。で、「チエちゃん」って書いた暖簾も入口に(笑)。

『桂二葉本』
生い立ちから現在までを振りかえったロングインタビューをはじめ、小佐田定雄、土井善晴、天才ピアニストとの対談、演芸写真家橘蓮ニによる高座写真など読み応え、見応えたっぷりな内容。弊社WEBストアからの購入で先着で特製缶バッジとステッカー付き。
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