【光る君へ】許せなかったのは自分、支えるのは道長か直秀か

2024.2.6 17:00

『光る君へ』第5回より、泣くまひろ(吉高由里子)を抱きしめようと寄り添う道長(柄本佑) (C)NHK

(写真6枚)

平安時代の長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を、吉高由里子主演で描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。2月4日放送の第5回『告白』では、三郎の正体が道長だと知ったまひろが、ついに6年間抱え続けた憎しみとトラウマを激白。まひろの心境と道長の行動、そして2人をつないだ影のヒーローにさまざまな声が集まった(以下、ネタバレあり)。

■ 第5回あらすじ「告白」

『五節の舞』の最中に、心を通わせていた三郎(柄本佑)が藤原道長であることと、母を殺した道兼(玉置玲央)が彼の兄であることを知って気絶したまひろ。父・藤原為時(岸谷五朗)からは、弟・惟規(高杉真宙)の出世のために、道兼の件は忘れるよう懇願される。一方、まひろが倒れたことを知った道長が家を訪問すると手紙を送るも、まひろは父のいないところで会えるよう、散楽師の直秀(毎熊克哉)に手はずを整えてもらった。

『光る君へ』第5回より、父・為時(岸谷五朗)の胸で泣き崩れるまひろ(吉高由里子) (C)NHK
『光る君へ』第5回より、父・為時(岸谷五朗)の胸で泣き崩れるまひろ(吉高由里子) (C)NHK

廃屋で道長と2人きりになったまひろは、自分が倒れたのは道長の正体を知ったからではなく、道兼を見たからだと説明。そして6年前に道兼に母を殺害されたことと、三郎と逢うために自分が道を急いだのがその原因だったのだと、涙ながらに告白する。それを聞いた道長は、一族の罪を詫びるとともに「まひろの言うことを信じる」と断言。道長と別れ、家に戻ったまひろは、父の胸で子どものように泣きじゃくるのだった・・・。

■ 実は、一番許せなかったのは自分自身

自分より身分が下と思い込んでいた三郎が、実ははるか雲の上の存在だったのがわかっただけでもショックなのに、自分が憎んだ男の実の弟だなんて! わずか5回にして、早くも2人のクライマックス到来を予感させた週だったが、ある意味ではまひろにとっては、救いのようなストーリーでもあった。

まずは三郎・・・いや道長に、6年前に何があったのかを「告白」するシーン。忘れようにも忘れられなかった「ミチカネ」への恨みだけではなく「自分がこうしなければ、ああはならなかった」という、自責の念をようやく吐き出す機会となった。実はまひろが一番許せなかったのは、この期におよんでも「弟のため」を盾に事件を隠蔽しようとする父よりも、自分自身だった。この痛みをひとりきりで抱えるのは、さぞ辛かっただろう。

『光る君へ』第5回より、まひろの告白を受け、「まひろの言うことを信じる」と話す道長(柄本佑) (C)NHK
『光る君へ』第5回より、まひろの告白を受け、「まひろの言うことを信じる」と話す道長(柄本佑) (C)NHK

SNSでも「せつないよ、、走らなければ、、会いたいと思わなければって辛いよ」「仇の道兼やそれを隠した父も憎んでいたけど、ずっとずっと自分を責め続けていたのだろうな、こうやって。一番憎かったのは自分だった」という同情のコメントがあふれた。

またそれに対して、兄の犯行を疑いもせず、まひろに詫びを入れる道長にも「道長ショックすぎるだろうこれ。『告白』が色んな方面にかかってる」「この2人は恋仲とかそういうのじゃなくて、道兼という男に対して良からぬ感情を持つ運命共同体なんだな」という共感の声があった。

■ 少女マンガ好きに嫌いな人はいない直秀

そして今回もMVP級に良い仕事をしたのが、今や完全に「ヒロインに好感をいだきながらも、彼女の恋が成就するように滅私奉公で立ち回る」という、すべての少女漫画好きに嫌いな人いないだろ? ってスタンスを確立した直秀だ。今回も「道長と2人きりで会いたい」というまひろの無茶振りを叶えたり、道長と会うためにパルクールのような技を使ったりで、そのたびにSNSでは大きな反応が。

『光る君へ』第5回より、道長(柄本佑)が乗る馬に飛び乗る直秀(毎熊克哉) (C)NHK
『光る君へ』第5回より、道長(柄本佑)が乗る馬に飛び乗る直秀(毎熊克哉) (C)NHK

「『断る』とか『あの男はやめておけ』とか言ってるのに、なんやかんやまひろのために動いてくれる直秀イケメン」「『めんどくせえ奴だな。俺は知らねえぞ』とか言いながらヒロインに手を貸しちゃう、悪ぶってる不良みたい」などの声が。

しかし視聴者の共感がマックスになったのは、一瞬まひろを抱きしめそうになりながらも、我に返って直秀にまひろをたくして帰っていった道長に向かってボソッとつぶやいた「帰るのかよ・・・」の一言だろう。直秀だって気を利かせて席を外そうとしたのに、そのまま帰っちゃう道長くん、人間としては真っ当だけどちょっとドラマの空気を読んでほしかった。

SNSでも、「私の心の声かと思った」「『帰るのかよ』の一言でみなさんの心を鷲掴みにした直秀さん。きっとあの後、夜道をふらふらと徒歩で(!)帰るまひろを守ってくれた」という、溜飲が下がったと言わんばかりのコメントが並んだ。

『光る君へ』第5回より、道長に「帰るのかよ」とつぶやく直秀(毎熊克哉) (C)NHK
『光る君へ』第5回より、道長に「帰るのかよ」とつぶやく直秀(毎熊克哉) (C)NHK

「2人だけが知る秘密」「2人の共通の敵」を持つのは、人間関係を急激に近づける妙薬(ときに劇薬)だ。まひろと道長は「誰にも言えなかった道兼の罪」を吐露して、そして共有したことで、身分など軽く吹っ飛ばす特殊な関係性を、今回で築き上げることになった。そしてここから、どのように発展していくのか? 直秀はまた上手く立ち回ってくれるのか? そして視聴者の総意はおそらく「次は帰るなよ、道長!」であるに違いない。

『光る君へ』はNHK総合では毎週日曜・夜8時から、NHKBSでは夜6時から、BSP4Kは昼12時15分の放送。2月11日放送の第6回『二人の才女』では、道長と距離を置こうとするまひろが、道長の兄・道隆(井浦新)が主催した漢詩の会で、のちに「清少納言」となるききょう(ファーストサマーウイカ)と出会うところが描かれる。

文/吉永美和子

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